夢：電車

夕暮れ。電車に乗っていた。

扉の傍に立って、薄闇の空の手前に並んで走る青い帯の電車をぼうっと見ていた。ほとんど同じ速度で走っていて、鏡写しのようだった。

蛍光灯に薄く照らされた向こうの車内、まばらに座る人々の中に、彼が居た。目が合った。彼は目を逸らした。どこか遠くへ行ってしまいそうな予感がした。

私は彼のことを見つめつづけた。目を離したくなくて。飛び移れるならそうしたい、と思ったそのとき、それぞれの線路は枝分かれするように離れはじめた。俯く彼を乗せた電車は、やや外へ傾きつつ、ゆっくりとカーブを描きながら遠ざかっていく。行かないでほしいと心の中で思うのに、それとは反対の気持ちがあるかのように、彼が私から離れていくような気がした。
悲しかった。さっきの予感は、その通りになった。離れていく電車の行先には、深く暗い入道雲が待っていた。

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平坦な田舎道をバンの助手席から眺めていた。
その日も深い黒灰色をした雲が一面を覆い、しとしと降り始めた雨が窓に滴を連ねて流れた。
少し離れたところに衣服店の兎の看板が見えて、何故だか寄りたかったので、広い駐車場に車を停めてもらった。私達のほかに車は無かった。
店内には客が数人いた。彼がいた。
私はすぐに彼に駆け寄り、抱きしめた。それから彼の両肩を持ち、会えなかった怒りと、悲しみと、会えた喜びが一緒くたになって泣いた。涙で歪んではねる視界に蛍光灯と彼の目がこちらを見つめていた。しかし、彼は、やはり私に会うことを嬉しく思っていないような顔をしていた。

夕暮れ。帰り道は真っ暗だった。