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今年読んだ本・ベスト10


毎年一年間に読んだ本のランクをつけているのですが、ここ数年は本当に読書量も落ちてきて、5作品選ぶのが精いっぱいになってきてます。
今年も読書量はそれほどなかったのですが、5つ選ぶのが難しくて結局10作品選んでしまいました。

第10位:『黒いチューリップ』アレクサンドル・デュマ

アレクサンドル・デュマ・ペールの歴史小説です。
ーーフランスの太陽王ルイ14世がオランダを支配下に治めようと画策していた頃、フランスと関係の深い政治家が数人処刑されます。主人公のコルネリウスはチューリップを作ることしか興味のない若者なのだが名付け親で処刑された元政治家のコルネイユ・ウィットの手紙を持っていたため無実の罪で牢獄されてしまう。彼は隠し持っていた黒いチューリップを咲かせようと監獄の娘ローザに協力してもらい黒いチューリップを咲かせる。ーー

これはずいぶん前に買ったフランス語教材のオーディオブックを今年ちょっと勉強してみたらストーリーが面白かったので文庫本で読んだ次第です。デュマ・ペールは文学という感じではなくあくまでも大衆的だけど、とにかくストーリーテリングの上手い作家だと思います。

第9位:『天下を買った女』伊藤潤

今年日本三大悪女を読むという自分お一人様企画で読んだ本です。日野富子についての歴史小説ですが、彼女の経済人としての業績にスポットを当てていたところが良かったです。この作家の本は初めて読んだのですが、室町や戦国を扱ったものが多いようで北条早雲など読んでみたいと思います。

↑ちなみにレビューはこちら↑
三大悪女のうち淀殿と北条政子は悪女とは言えない気がするけれど、この人はある面悪女だなと思える。ただ3人の中で一番頭がいいというか実践力があった女だと思う。素直に評価したい。

第8位:『淀どの日記』井上靖

井上靖は十代の頃、天平の甍、敦煌、蒼き狼、額田女王など読んでいたけど、大人になってから何故か手が伸びなかった。久方ぶりに読んでみると、登場人物がなんかクール、この人の手にかかると不思議とかっこよくなってしまう。
これはご存じ淀殿の伝記ではあるけれど、一般的に思われている野望がギラギラしている淀殿とはどこか違って、自分の運命をすっと受け入れているように感じられる。歴史小説は書き手によって彩が添えられるのが面白い。

第7位:『シラノ・ド・ベルジュラック』エドモン・ロスタン

シラノ・ド・ベルジュラックは実在の軍人で、一度に100人相手に喧嘩できるほど強く、科学の知識もあり、芸術のセンスも優れていたそうです。しかし悲しいかなひどい醜男で鼻が異常に大きかったそうです。この小説は実在のシラノをモデルに彼の悲恋を描いたロスタンのフィクションです。

ーーシラノは従妹のロクサーヌに密かに思いを寄せていた。ところがある日彼女からシラノの同僚のクリスチャンが好きだと打ち明けられる。クリスチャンもロクサーヌの美しさに一目惚れしていた。彼は美男だったが気の利いた手紙を書くことができない。そこでシラノが代わりに恋文を書いてあげ二人は結ばれるのだが…ーー

ロマンチックな話なのだが、シラノの表向きの姿があまりにもワイルドで個人的には好きになれない。ただ、美男と美女のコイバナよりも美女と醜男のコイバナに人々の関心が向かうのは不思議に思える。

第6位:『猫をすてる』村上春樹

猫を捨てに行く話から始まり、多くはおとうさんの戦争体験が書かれている。戦争の話は基本的に気が滅入るものだけど、ハルキさんの手にかかると戦争もやんわりハルキワールドになってアクが薄くなる。

第5位:『作家の秘められた人生』ギョーム・ミュッソ

ーー人気作家のファウルズは20年前に突然筆を置き、寂れた島で一人隠遁生活を送っていた。しかし、ある夏、彼は他人と関わらざるを得ない状況に陥った。一人は作家志望の青年ラファエル、強引に押しかけて自分の原稿を置いて行った。もう一人はスイス人のジャーナリスト、マティルド。行方不明になったファウルズの犬を連れて、やはり強引に家に上がり込んだ。しかもその夏、島のはずれで女性の他殺死体が発見された。ーー

最近よく手にしているミュッソの作品。この作家は最初にドカンっと大きな謎を提示して読まざるを得ない雰囲気にさせられる。しかもどんでん返しに次ぐどんでん返し。多少ひっくり返し過ぎのキライはあるけど予想を裏切った展開はわくわくさせられる。

第4位:『人生は小説』ギョーム・ミュッソ

ーーニューヨークに住む人気作家フローラ・コンウェイの3歳の娘、キャリーがある日突然行方不明になった。フローラの玄関前にある監視カメラにはコンウェイ母子が入った姿のあとは誰も出入りしていない。ということはキャリーは家の中にいるはずなのだが…どこにもいない。ーー

この話は作家が描いた小説の中と作家の現実の生活が入れ子式になっている。しかも単純な入れ子ではないので、人によってはズルいと言う意見もある。確かにちょっとズルいけど、私的には結構面白かった。

第3位:『歯車』芥川龍之介

中学生の時、私は何故か芥川に物凄く尊敬の念を感じていた。小説は非現実が書かれているはずなのに、読んでいると作者の自我とか自意識など、言い換えれば人となりが見え隠れする。太宰治などはその最たるもので、フィクションを通してぐいぐい自己主張してくる。ところが芥川の小説を読んでも作者の姿があまり見えない…と中学生の私は思えた。私自身がとっても自意識が強かったので、『フラニーとゾーイ』のフラニーのように他人の自意識に敏感だったかもしれない。

本書は自伝的作品なだけにめちゃめちゃ作者の人となり、自意識が露見されている。龍さまもやっぱり人の子なんだと改めて思った。しかも死を意識した頃の神経がピリピリしている様子がうかがえて痛々しい。具体的には今読んでいる『河童』と一緒に別の記事に書きたいと思う。

第2位:『復讐の協奏曲』中山七里

ーー「この国のジャスティス」と名乗るブロガーに踊らされて多くのネットユーザーが御子柴へ弁護士会を通して800通を超える懲戒請求を送りつけた。事務員の洋子はその処理に追われていた。そんな折、洋子は知人男性から高級レストランでディナーをご馳走になる。翌日、その男性が死体で発見され、凶器についた指紋から洋子は逮捕されてしまう。ーー

中山七里さんはいろんなシリーズものを書かれていますが、私はダントツでこの御子柴シリーズが好きです。御子柴は少年時代殺人を犯して少年院に入っていた。改心して弁護士になるも勝つためなら卑怯な手も使い、暴力団とも関わる悪徳弁護士。やがて自身の過去が明るみに出て窮地に追い込まれるも何やかやとうまくすり抜けていく。

今回は事務所のたった一人の事務員、日下部洋子を救うために奮闘する。調査を続けるうちに彼女の驚くべき過去が暴かれる。そしてこれまでは単純に上司と部下だった二人がこの先どうなるのか?とっても気になる。以前やっていたテレビドラマでは御子柴を要潤、洋子をベッキーがやっていたけど、どちらも私のイメージからは遠い。

第1位:『ダルタニャン物語』アレクサンドル・デュマ

今年はやっぱりこれです。全11巻のすべてを今年読んだわけではないけれど、今年読み終えたので今年読んだ本に上げさせていただきました。長いのであらすじを全部わかるように書くのは難しいのですが、この作品は大きく3つに分かれています。

1.三銃士
ガスコーニュからパリに出てきたばかりのダルタニャンは血気盛んで、その日のうちに3人の男と決闘することになった。
結局その3人、アラミス、アトス、ポルトスとは気が合ってしまいワンチームができる。この物語ではルイ13世の王妃アンヌ・ドートリッシュが浮気相手の英国貴族に渡した首飾りを4人が取り返しに行く。しかし、アンチ王妃派が4人の命を狙ってくる。

2.二十年後
文字通り前作から20年経った頃、アトスとポルトスは自分の領地に引っ込み、アラミスは聖職者になり、ダルタニャンだけが相変わらず銃士隊の副隊長になっていた。フロンドの乱が起こり、時の宰相マザランの下ダルタニャンとポルトスは王軍、アラミスとポルトスは反乱軍に別れて敵対する。

3.ブラジュロンヌ子爵
この物語は前作から2年後、アトスの息子ブラジュロンヌ子爵がもう1人の主役に加わる。マザラン亡き後のコルネイユとニコラ・フーケの対立、国王ルイ14世と数々の女性達との恋路が中心に描かれ、政権の乗っ取りを狙うある男の野望を具体化した『仮面の男』のエピソードなども盛られている。

デュマは文章もわかりやすくストーリー展開もわくわくさせられて面白いので、長さを怖がらず是非多くの人に読んでほしいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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