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ヤツデ 寒い季節に咲く花の秘密
八手 (ヤツデ)
セリ目、ウコギ科、ヤツデ属の多年生低木。
分厚いその葉は深裂するものでその形状から八手
(ヤツデ)の名が付いている。実際にこの分列した
葉先の数を数えてみるとその数は奇数となる為に
八つのものなどはなく、九つや七つ、五つとなり
特に九つのものが多いのが分かる。ヤツデの名称
は学術的なものでなく、末広がりとなる八の数字
の縁起担ぎからの命名によるものなのである。
ヤツデの独特な葉姿は、多くの人にも知られる通り
のもので、日本の妖怪として知られる天狗がこれの
葉を用いて大風を巻き起こす呪具として扱う事から
『天狗ノ羽団扇』(テングノハウチワ)の名もつく。
そんな妖怪が扱う呪具や武具とされるこの八手の葉
は、とても肉厚かつ頑丈に出来ているものでもあり
台風を含め、相当に強い風ですら受け流して仕舞う
のが深裂する葉構造によるのと、極太の葉脈自体が
頑丈な芯材としての役割を担っていて、へこたれぬ
強さに繋がっているのである。
もうひとつ、この植物の持つ強さには、その全草に
有毒成分のヤツデサポニンが含まれており、これは
アルファアファトシン、ベータアファトシンという
サポニン成分となり、虫を始め草食性動物たちが
この葉を食害しない理由となっている。
日本に昔から家の離れにあったのが厠(カワヤ)で
ここの裏側には普通に、ヤツデの木を植えていた。
汲み取り式のこの古風なトイレに蠅(ハエ)の幼虫
である蛆(ウジ)を発生させない為に、ヤツデの葉
をそのまんま、厠の中へと放り込むとその毒により
ウジが湧かない事が知られていたからである。今も
古い家屋に行くとトイレの近くにはヤツデが植栽を
されているのは、そんな名残として残っているのと
この植物が耐陰性にも優れている事の証である。
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タイトルにした花に隠された秘密へ迫るとしよう。
ヤツデの花は冬の時期の11〜12月に花が咲く。
球形の散形花序を円錐状につけるのが花の外観上の
特徴となるが、もうひとつの特徴としてはこの花が
両性花であること。
両性花のヤツデの花は、先行して雄花(オバナ)が
先ずは咲く。この雄性花の時期には5枚の花弁姿に
加えて、5本の雄蕊が大きく広がって華やかな印象
を与えてくれるものとなる。
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コレが雌性花へと変わる時には花弁も雄蕊も落ちて
仕舞い、花の中央の雌蕊のシンプルな姿へと変わる。
これはこれでシンプルで可愛いものである。
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この両性花が咲くのは冬の寒い11〜12月で
集まるのは、蠅(ハエ)や虻(アブ)など、成虫の
ままで越冬する能力をもった虫だけである。冬の
食料の少ないこの時期に、これらの虫達にとって
の命の糧となるのがこのヤツデの花の蜜である。
特にハエの口の構造は、舐める構造であり、一般の
花の様に奥まった箇所に蜜がある構造だとその蜜に
ありつけないのだが、ヤツデの花はそのドーム状の
表面に沢山の蜜が滲み出る構造をしている。この為
ハエもこの蜜にありつけるのである。
その葉の毒成分は、厠の中のハエの幼虫を殺すのに
利用されながら、冬にはハエの成虫の命を救いの手
を差し伸べるという二面性を持つのが興味深い。
花言葉には『巨万の富』や『千客万来』などの言葉が
並んで、これは掌状のその葉が客を招く姿に見える
事に由来するもの。
ヤツデを厠(カワヤ)のイメージがあるものだとの
認識から敬遠する御仁も居られる一方で、風水的な
解釈からは『邪気払い』『魔除け』など悪霊退散の
効果もあるものとされ、また前述の『千客万来』や
『巨万の富』など、その掌型の葉が人脈や大金をも
集めるものと縁起のよい植物との解釈もあり面白い。
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和名 八手 (ヤツデ)
天狗ノ羽団扇 (テングノハウチワ)
龍ノ歯 (リュウノハ)
洋名 ペーパープラント (PAPER PLANT)
ファトシア (FATSIA)
学名 ファトシア ジャポニカ
(FATSIA JAPONICA)
分類 セリ目、ウコギ科、ヤツデ属
種類 多年生常緑低木
草丈 1〜5m
開花 11〜12月
花色 白
花径 5mm
花弁 5枚
雄蕊 5本
原産 日本
言葉 巨万の富
千客万来
健康
親しみ
分別
撮影 京都府向日市
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