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密士失比赤耳亀


密士失比赤耳亀
(ミシシッピアカミミガメ)

淀川の河川敷をオフの時には自転車で走る。
私の住む十三から高槻、対岸が枚方まで走り
年に数回は京都嵐山迄も走る。この長距離を
走る中で、植物の勢力図が地域ごとに変わる
のを楽しめるというメリットもある。


この淀川とは、滋賀、京都の河川が集まった
一級河川となる。河川周辺の植物に生物など
色んな生態系に恵まれた場所である。


ある日、いつもの様に河川敷の舗装された道
を自転車で走っていると、前方に見えるのは
亀である。なんとデカイ。見事にデカイな。
自転車を停めて、スタスタとそれに近寄る。


その大きさたるや漬物石並みの大きさであり
持ち上げるとそれなりには重いのだがやはり
漬物石にするには軽過ぎるのでダメである。
もっともそれ以前に、動く性質から漬物石に
採用される資質は微塵もない。さらに言うと
私は漬物などを自分で漬けた事はなかった。


さてさて、漬物石にはならないが、ここの
舗装された道路は河川敷管理パトロールやら
工事関連の車両等が走る道となっている。
このままでは亀にも良くはないし、河川より
も結構な内陸側に入ってる為に、亀に必要な
水分補給もままならない。


そこで、この亀を持って河川の水際まで運び
逃がしてやろうという事にした。持ち上げて
みると甲羅からビシャビシャと水分が滴って
咄嗟に身体を避けて、その液体がズボンや靴
に掛かるという最悪の事態は避けた。自転車
籠の中に入れようにも荷物がいっぱいなので
片手で甲羅を掴み、ガッチリホールディング
して水際までこの大亀を輸送移動する。


この亀は私が持ち運び始めた時から、甲羅の
中から、精一杯に四肢を伸ばしてくる。その
四肢に備わった爪は結構鋭く頑丈でガリガリ
と手を引っ掻かれれば、私の手の皮膚などは
簡単に傷つく。なので、四肢が届かぬ位置で
甲羅の側面を掴んでやる。片手で亀を掴んで
自転車を漕ぎながら、亀の重さで手がだるッ
と思いながら、出来るだけ最短でこれを放す
河川敷のスポットを考え、ガタガタしない道
をつき進む。


河川につき、亀を置いて川に帰える姿を撮る
つもりだったが、地面に置きスマホを構える
前にはザボンとニトロスタート並みの素早さ
で河川に飛び込み、一瞬でその痕跡すら視認
出来ないほどの速さであった。一歩、遅れで
スマホを構えただ茫然と何もない川の風景前
で佇む私である。


このミシシッピアカミミガメは、外来種とし
駆除対象となる生物なのは知っている。池の
水を抜いて外来種を駆除しようという番組も
私は知っている。だが、かつては縁日に並び
そこで捕まえて飼ったことのある亀でもある。
目の前の命をほってはおけなかった。


彼(もしくは、彼女)には全く何の罪もない。
だから敢えて私は救ったのだ。ミシシッピと
いう遠方より遥々海を超えやってきた可愛い
亀は、人の都合で勝手に連れてこられた。


川に潜ってもう見えなくなった亀には達者で
の言葉も伝えられずだった。






ミシシッピ (MISSISSIPPI)
アメリカ合衆国の中の南部に位置する州で
州都は同州の最大都市であるジャクソン市。
ミシシッピといえば、村上春樹氏の短編にて
結婚式に呼ばれた夫婦が眠気覚ましの会話に
ミシシッピのアルファベットの綴りについて
やり取りするシーンがなんでだか妙に頭の中
に残っていてSが2個、Sが2個、Pも2個
なんて事が頭に残っている。


ミシシッピとは、インディアンのオジブワ族
の言葉で『大きな川』を意味するものであり
温暖湿潤な気候と豊かな水の恵みの中に生息
する生物も多種多様となっている。


その中で有名なのはミシシッピアリゲーター。
アメリカの中で人の被害の多いとされるワニ、
これの恐ろしさはネイチャー系ホラー映画で
でB級の作品が何本も出ているので暇な時に
時間潰し程度のチェックをしてみよう。凄く
オススメする訳ではないが、たまには毛色の
違う作品も見て、コワニが街中を走り回って
暴れ回るのを楽しもう。


このミシシッピにはヘラチョウザメも生息、
チョウザメといえばキャビア、キャビアと
いえばチョウザメと言われる様にこの卵に
だけ価値がある。日本でいうボラが不味くて
商品価値ないのに卵のカラスミだけは価値が
あるのと同じである。これらへらチョウザメ
は捕獲され、加工されたキャビアは、ロシア
セブリューガキャビア同様に高い評価を得て
この地域の名産食品となる。


そして、今回主役のミシシッピアカミミガメ
は日本国内では、縁日の金魚掬いに次いでの
人気の出店に必ずと言っていい程のキャッチ
系アトラクションで登場したもの。私も妹と
これを楽しみ、ミシシッピアカミミガメ一匹
を持ち帰って水槽で飼うも、脱走され数年後
の引越しの時にミイラ化したそれが冷蔵庫の
下から発見されて手厚く埋葬された。


欲張って亀の住空間の水槽の中に色んなもの
を入れすぎた結果、脱走の良い足場となって
しまったのが、この失敗の教訓となった。

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