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波々久利


波々久利 (ハハクリ)


つい最近、植物の種に関する図鑑を紹介した
のだが、それぞれが置かれている環境や風土
に即した形で、大切な種を絶やさぬ為の戦略
がその実や種に現れている事をそこに示した。


それらは図鑑にあるものだけではなく、身近
な植物も観察してやると独自の形状の面白さ
を見つけることが出来るもので、そんな例を
ひとつ、ここに紹介したいと思う。

波々久利(ハハクリ)とは、歴史的な文献に
登場する言葉であり、姥百合(ウバユリ)を
表す古名となっている。この植物の成熟した
外観から示されるは『波々』(ハハ)であり
『母』の立ち姿を表したものを表現しており
『久利』(クリ)はすなわち、『栗』を表し
食用とされる植物の根や実を表した言葉から
きたものである。


ユリ目、ユリ科、ウバユリ属の多年生植物で
日本では関東より西部に自生する植物である。

このウバユリについては、以前に蕾と花とを
紹介したが、今回はその種についてである。


ウバユリの開花時期は7月の下旬頃に咲いて
その後に結実し、晩秋の時期になるとその実
が裂け、中の種が顔を覗かせる様になる。


この種子には、薄い皮膜状の翼がついており
『強風』が吹くと遠くへ飛ばされていく仕組
となっている。


この植物の種が拡散するのに重要なものこそ
『強風』というものが必要不可欠となる。


成熟して裂開した、この実を観察してみると
その割れた隙間の部分に、無数のブラインド
が形成されていて、簡単には種が落ちない様
な構造になっているのが見える。


開いた後、その種の翼を乾かす為の通気性の
良さをここで確保するのと同時に、この種を
出来るだけ遠くへと拡散させる為に強風以外
の風では落ちない様になっている。台風など
大きな風が吹くと、ブラインドゲートが裂け
そこから強風に煽られて、ウイング付の種は
遠くまで飛ばされていって、新たな地に範囲
拡大を繰り広げるのである。


山の中で、もしウバユリの実を見つけたなら
じっくりと観察してみよう。自然の作り出す
造形の美を楽しもう。




和名 姥百合(ウバユリ)
   藪百合 (ヤブユリ)
   鼠百合 (ネズミユリ)
   波々久利 (ハハクリ)
洋名 ハートリーフ リリィ
   (HEARTLEAF LILY)
学名 カルディオリナム コルダタム)
   (CARDIOCRINUM CORDATUM)
分類 ユリ目、ユリ科、ウバユリ属、
   ウバユリ種、
種類 多年生草本
草丈 1m
開花 7〜8月
花色 淡緑
花径 3〜6cm
原産 日本(本州は関東以西〜九州)
言葉 威厳
   無垢
撮影 六甲高山植物園

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