【毎週ショートショートnote】お題:「ジンジャークッキーイブ」①
街の広場は、ジンジャークッキーコンテストの熱気に包まれていた。
周りのクッキーはドリアン、フォアグラを添えたもの、塔の型を模したもの等、どれも職人技が光っていた。
その中でユウの作品はひっそりと置かれていた。
<コンテストの審査が発表された>
「最優秀賞はユウさんの作品です!」
会場がどよめいた。
今回のクッキーはおじいちゃんと一緒に作ったものだ。歪な形、少し焦げ付いた手足、砂糖の簡素な顔。他の作品と比べると、見劣りするのは明らかだった。
<審査員の美食家が選評を行った>
今回は素晴らしい作品が多かったが、ユウさんの作品は秀逸であった。シンプルで力強く、誰もが一目でわかる「ジンジャークッキー」であったこと
更に、ホットプレートに載せており、できたてのいい匂いがしたこと、家庭料理で誰にでも「作れる」「継承されている」作品であったこと
そして、一番の魅力は「かじりかけ」があったことです。観客がどうしても我慢できずに食べてしまったのでしょう。東洋のワビ・サビに通じる趣があります。
この作品は、生きているのです!
この作品は”何のために誰が食べる料理”を表現した「ジンジャークッキー」の究極の形であります!
会場は歓喜に包まれた。ユウはわけがわからなかったが、周りの笑顔を見て、つられて笑った。
実は、我慢できず自分が少しかじったことは内緒だけどね