短歌ネプリ「月九」第12回感想
あっという間に最終回ですよ!
一年はほんと早い!!
まだ配信期間中だけど、最後だし宣伝兼ねて伏せずに引用します。
今回の主演(テーマを決める人)は御殿山みなみさん、テーマは「休」です。
10回目以降は歌会で主演を決めてるんですが、発起人が最終回で主演を射止めるっていう美しい流れになりました。
2回目の主演をもちろん私も狙ってたんですが、力及ばず…!
悔しいけど、グッジョブ!!(アツい握手からのハグ)っていうスポーツドラマ的な裏物語がありました。
まだ配信中なので、よろしくどうぞー!
意外にも席の時間は言われずにふたりでばかを休み休み言った/御殿山みなみさん
居酒屋で「2時間でお願いします」って言われても意外とそのまま居ても大丈夫なときありますよね。で、次の店に行くほどではないけど、なんとなしに帰りたくなくてレモンサワー追加しちゃったりする。具体的に想像できて「あーあるある!」ってなりました。
ずーっと喋り続けてたけど、終盤だからポツポツくらいしか喋ることがない感じが「ばかを休み休み」言うところに出てて、やっぱり「あるある!!」ってなります。
このひとたちの間に流れる親密さがいい。空間を埋めるように無駄に話さなくてよくて、思いつきでしょうもないことを言っても最短でちゃんと伝わる関係なんだろうなぁ友達っていいよねと思います。
何もしなくても愛される場所を発つ受け取るばかりの冬休みが終わる/池田明日香さん
実家っていいですよね。なんとなく一人暮らししてる学生っぽい感じを受けるのは、冬休みって単語のチョイスからかもしれません。
私は高校卒業とともに家を出て暮らしてるのですが、帰省するたびにのんべんだらりとソファーでのびてます。大人になってもまだまだ受け取るばかりです。
主体は大事にされてることを過不足なく自覚してて、もしかしたらちょっと厳しいこともあるかもしれない場所へ背筋を伸ばして戻っていったんだろうと思うのですが、なにかあっても帰る場所があるというのは力になるものなので、「この子は大丈夫」と小さくなっていく背中を見送りたいと思います。
白紙へと戻る予定に置き去りの口はまだ煮干しラーメンの口/近江瞬さん
〇〇の口って言い方は最近のもののように思うのだけれど、もう体がそっちの方向にむけて準備してるって感じがすごくわかりやすい表現だ。煮干しラーメンの口はなかなか他の方向に調整しにくそう。
おいしいラーメン屋さんなんだろうなぁ。食べれなくて残念だったね、と肩を叩きたい。
軽やかに進む調子からするとこのまま機嫌良く次の候補の店に行って、その頃にはすっかり煮干しラーメン以外の口になってそう。
日常のささやかな、嫌な意味ではない理性に気持ちがついてこない感じがサラッと切り取られてて、軽やかでいいなぁと思う。
夏休み明けの世界に馴染むには時間がかかるけど大丈夫/シリウスさん
長期休み明け特有の、友だちとの距離感とかが掴めないうっすらとした不安感を思い出しました。私は休み中に友だちと遊びに行くタイプではなかったので、余計になんとなーく不安だったんだよなぁ。始まってさえしまえば別になんてことなかったんだけど。
「大丈夫」ってハッキリ断言してあげてるのは、シリウスくんのやさしさだ。夏休み明けを経験済みの先輩としての。シリウスくんは高校時代に留まろうとしてるのに、たまにチラッと先輩っぽくて、そういうアンバランスなとこも含めていいねって思います。後ろに続く子たちのために歌集レーベルを立ち上げてるとことか、めちゃ良い先輩ですごいので、がんばってほしい。
えいえんに終わりつづける夏休み手を振るのもうやめてばあちゃん/西村曜さん
祖父母、たしかに見えなくなるギリギリまで手を振ってくれますね!だからえいえんに夏休みが終わり続けてたら、ばあちゃんもずっと手を振り続けてなきゃいけない。やー、それはすごく疲れちゃいますね!?もうやめてばあちゃん!大丈夫だから!!っていうコントっぽさがめっちゃ好き。
でも孫と離れがたいばあちゃんの愛が、時間が進まないエアポケットを創り出した…!っていう万が一のSFな可能性も妄想できたりして、たのしいお歌でした。
そんなことあるはずないやんって事態をコミカルに、くすっとくる表現で歌にするのが西村さんは本当に上手で、すきだなー!!って思います。
年末は飛行機代が高いからどこにも行かなさで得できる/平出奔さん
わかりみが深い!!なぜなら北海道の実家へ帰るとき、ちょっとした海外旅行なら行けますね…っていう金額を払ってるから。チケット代が倍なのはさすがにやりすぎじゃない?っていつも思う。
「どこにも行かなさで得できる」って発想、ちょいひねり具合がいいですよね。どこにも行かないことを逆にポジティブに数えて、その分でなんかたのしいことしてそう。
タランテラみたいな日々で睡眠も八分休符を奏でるように/若枝あらうさん
タランテラを知らなくて調べたんですが、イタリアの舞曲のことでした。そんな日々なら睡眠も細切れになるくらい忙しいに違いない。でも曲聴いてみたら明るかったんですよ!つまり嫌な感じの忙しさではなくて、充実してる良い感じの忙しさ!ちゃんと寝たほうが絶対いいけど、アドレナリン出ててゾーン入ってるのもわかる。追い込まれてるのとは全然違う充実感。いいなー。私も楽しく仕事したい。仕事だけが充実感を得る全てではないってわかってはいるんだけど、やっぱり日常の比率を占めてる割合が高いせいで仕事のほうに意識がいっちゃうな。
「休みたい」と「休めない」境目はどこ 息を吸うのが下手すぎて/若紫音佳さん
実は私、ちょっとだけ吹奏楽部だったんですよ。辞めた理由が人間関係と休みのなさでした。体育館とかグランドを使う部活は休みあるのに、なんで吹奏楽部は毎日なん!?って思って。もちろん毎日練習しないと下手になるからなんですが!
やりきってれば一体感とか継続する努力とかの成功体験を得れてすごく良かったと思います。どっちも未だに私に足りてないものなので。。
連作通して読むと、あの頃の同調圧力が強い息苦しさがリアルに迫ってきて「うおぉ…」って呻きそうになりました。追い込みの再現力がすごい。
以上、これで終わりです。
最後になりますが、ネプリを出力してくださった皆様、本当にありがとうございました!!