【お話】アンは泣いていた
『アンは泣いていた』
アンはとてもしっかりした子なのに
1人で泣いていた
いつもアンに優しいグレンと
何かあったのかも知れない
声を掛けた方がいい?
そっとしておいた方がいい?
決まらないまま
靴が勝手に、階段をカツコツ上がり始める
アンは俺よりしっかり者なのに
俺はアンに何が出来るだろう?
階段を登り切って
屋上に出るドアを開けたら
暗くなる寸前の空がまるで海みたいに広がって
熱帯魚になった雲が心配そうにチラチラ、チラチラ、アンを見ながら、泳いで夜へ帰るところだった
アンは大好きな空にも海にも熱帯魚にも
目もくれないで
屋上の端っこに座って俯いていた
元気がない……
心配すぎて、なんにも考えずに声を掛けた
「アン。そっとしておいて欲しいのかい?」
「……わざわざここまで来てくれて、そっとしておいて欲しいのかいって聞くのか。まっすぐだな……」
「うん。だって俺、分からないんだ。俺にはそっとしておいて欲しい時なんかないのに、俺以外にはそっとしておいて欲しい時があるらしい。でも俺みたいにそっとしておいて欲しくない人もいるみたいで、だから俺はもう1人1人に確かめるしかないと思うんだけど、それで今思いついたけど、ひょっとしたら1人が2つの可能性を持つ場合もあるかも知れない。人に聞かれた時の答えと、実際の今にして欲しい事は違うかも知れない。
そうだ!
丁度、サッカーと野球と両方好きな人がいたり、観戦はサッカーが好きだけど、自分でやるなら野球が好きって人がいたりするみたいに……何の話をしていたんだっけ?」
「今日はムーミン谷から来たのか?」
「ううん。エスニック雑貨屋さんでマンダラを見て悟って来たんだ。アンのために」
「…………そうか。ありがとうな。俺のために」
「うん!! アンのために!!」
「聞いたところで俺に分かるかどうか……だが教えて欲しいんだが、一体何を悟って来たんだ? エスニック雑貨屋さんで」
「何だったっけ? 忘れた」
「忘れたのか。きっと元から悟っているから、1回1回の悟りがそう重要じゃないんだろうな」
「悟りは何だっけ? アン」
「なるほどな……。こうやって高僧は、修行僧を悟りへ導くのかもな。うーーん。悟りとは……? あ」
俯いていたアンが、悟りとは……? と呟きながら
座って曲げていた脚を伸ばして
膝に乗せていた手も空へ伸ばして
やっとアンの大好きな空を見て
あ、と少し驚いた声を上げた
熱帯魚になった雲で、アンを心配してウロチョロしていた1匹もホッとして
大急ぎで、夜へ帰る魚たちの群の中に泳いで行った
「アンが見てくれて良かった。アンが空を見ないとすごく心配だよ。だってアンは空が好きで、いつもすぐ空へ手を伸ばすんだから。
もしかして、グレンが不倫でもしたのかい? それともグレンに殺害予告が届いた? もう殺した? グレンを?」
「グレンはまだ生かしてある。今はまだな。……と言うのは冗談だ。あんなに良い奴は他にいない」
「じゃあ全部解決したね! 帰ろう!」
「……そうだな。全部解決した。帰るか。空を見ながらな」
アンは屋上の端っこで立ち上がりながら喋った
心配になって、アンの肩を掴んだ
いくらアンがしっかり者でも
柵のない屋上の端っこで立ち上がりながら喋って少しバランスを崩した瞬間に
ハリケーンが直撃したらひとたまりもない
「……なあ? いつも……ありがとうな」
「何がありがとう? アン?」
「……そこに疑問を持たれるとムカつくが、言えば伝わるからな……
いつも俺の事をさらに知ろうとしてくれて、手本となる生き方を見せてくれてありがとう」
「手本? 俺が? アンの? アンは俺よりしっかり者なのに、俺がアンのお手本になる事があるのかい?」
「おい。ムーミントロール。今、知ろうとしてくれてありがとうと言っただろ……! 俺もそうしたい……そう言う事だ」
「いくらでも真似して良いよ! 著作権フリー! だって俺は!!! アンの!!!!!!!」
「叫ぶな! いつも言ってるだろ。鼓膜が破れる!」
「分かった!!!! 俺〜の海は〜♫ アンの海〜♫」
「アンの海……? もう良い。帰ろう」
「うん! アンが元気になって良かったよ。嬉しいよ」
本当にアンが元気になって良かった
アンの肩を掴んだまま、笑い掛けた
アンは思いっきり八の字眉毛になって
肩に置いた俺の手を振り払って
階段に戻るドアへ、さっと歩いて行った
すぐにガチャン! と勢い良くドアを開けたのに
全然ドアをくぐらないで
ぎゅっとドアノブを握って俯いたから
俺も胸がぎゅっとなるぐらい心配になって、アンへ駆け寄った
「アン!」
「…………産みの親でもないのに、ここまで……女らしくない俺を分かろうとしてくれてありがとうって言ってるんだ。
本当に……ありがとうな。父さん」
アンは当たり前の事をボソボソ言って
すごい勢いでドアを潜って
ガンガンガンガン! と靴音を響かせて逃げて行った
俺は物分かりの良い、立派な父さんとは違うから
勿論すぐに階段を駆け降りて
アンの腕を捕まえて
「どうしてそんな当たり前の事がありがとうなの?」
とアンに尋ねた
アンはものすごく小さい声で、当たり前じゃないだろ……と呟いて、
俺は初めてアンからハグされた
お話書いたのは
空也🐳♠️……アンは長女(養子)
🐳♠️
「空也です。
妹のサクヤ🐳💐が花うさぎさんの絵が大好きで、
サクヤから、花うさぎさんがマガジンで花うさぎさんのイラスト使った物語と詩まとめているだから空也も書いて!! と言われて
俺が大事な思い出と似ている絵を選んで、俺の大事な話を書いてみた。
ここまで読んでくれてありがとう。またね!」
🐳💐🎨
「サクヤです✨ アン描いた✨
空也お話書いてくれてありがとう✨
花うさぎさん初めまして✨ サクヤと言います🍒
花うさぎさんのイラストからお話と絵にしました✨
気に入ってもらえたらうれしいです✨✨
いつもすてきなイラストありがとうございます✨🖼️✨」
サクヤは画家さん🐳💐🎨 画家さん続けられる応援とってもお願いします🍒✨