折橋弥生

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暗愚なる一家/20首連作

墓守の兄に毎日花を届けるのが弟の仕事である。 姉が魚を食して吐く黒い鱗は妹の手により焼かれる 兄のスプーンはもっぱら花の頭をぶつために保持されている。 林檎をつかむ妹の手が煤まみれであると、あなたは気がつく 海に面した中庭で犬はトリュフをむさぼって腹いっぱい 表通りではピンクの鼠らがビンゴゲームに興じてるらし 犬はたまに兄から鋏で切った小さな花を土産にもらう 父の作るお菓子はきょうだいたちのかわいい靴下へとしまわれる 妹はアップルティーを飲み黄色のスカーフを手

    • 名刺代わりの

      #名刺代わりの小説10選 彩瀬まる『あのひとは蜘蛛を潰せない』 彩瀬まる『神様のケーキを頬張るまで』 江國香織『冷静と情熱のあいだ RED』 江國香織『泳ぐのに安全でも適切でもありません』 中山可穂『猫背の王子』 中山可穂『白い薔薇の淵まで』 二階堂奥歯『八本脚の蝶』 テッド・チャン『あなたの人生の物語』 ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引書』 ルシア・ベルリン『すべての月、すべての年』 ばらばらの作家にすべきかとも考えたけど、やっぱり彩瀬まる、江國香織、中山可穂の影響が

      • 2023年6月15日

        二階堂奥歯『八本脚の蝶』があまりにも良過ぎて初めから読み返してる。 2020年に文庫版が出版されたとき、憧れてた(る)字書きさんやその周囲の人達が口々に話題にしてたので買ったものの、数頁読んでぴんとこずに3年も放置していたのが嘘のよう。 この本専用の栞とブックカバーを買おうと思っています。普段はそういったものにまったくといっていいほどこだわりがなく、コンビニのレシートなんかを栞代わりにし、本屋のシンプルなブックカバーを気分でつけっぱなしにしたり又ははがして表紙が傷つくのを気に