アベプラ「子育て」特集。産後うつに悩んだ妻が生放送で語りきれなかったこと
4月9日夜に放送の「AbemaPrime(アベマプライム)」で、筆者夫妻がVTR出演しました。テーマは「子育て問題」。
(16日午後9時までは無料で視聴できます)
今年2月に放送された映画『ママをやめてもいいですか!?』(通称、ママやめ)では、ワンオペ育児や産後うつなどに悩んだ女性たちの現状が取り上げられています。同映画を引き合いに、現代の育児が抱える課題や解決策についてゲストともに番組内で話し合う、という内容でした。
番組の司会進行は平石直之アナウンサー、出演者はお笑いコンビEXITの兼近さん・りんたろーさん、フリーアナウンサーの柴田阿弥さん、袴田彩会さん、週刊東洋経済編集長の山田俊浩さん、ジャーナリストの丸山ゴンザレスさん。ゲストは、株式会社ワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さん、僕の妻でした。
スタジオと中継でつながっている妻を応援しながら、僕はスマホ経由で番組を視聴しました。
自分たちの体験を役立ててほしい
番組制作ご担当者からそのべ夫婦に取材依頼をいただいたのは、3月下旬のこと。産後うつに苦しみ、そこから回復してきた経験を持つ私たちを取り上げたいとのリクエストをいただき、快諾しました。
元気いっぱいの2歳児のお世話は大変なものの、今は夫婦で子育てを楽しんでいます。でも子どもが誕生後に妻が産後うつになり、妻は一時期「死にたい」「子どもが可愛くない」と言い続けていたのです。当時の様子はこのnoteに赤裸々に綴っています。
僕は「育児はきついものだと思うし、自分は稼ぐために仕事をする」と思い込み、産後に妻へ十分なサポートができなかった。妻もまた「育児は妻である自分の仕事」だと決めつけて、ひとりで抱え込んでしまったのです。
そこから夫婦で育児のあり方を見つめ直し、自分たちに適したやり方を探り続けることで今の状態をつくることができました。自分たちの失敗をアベプラで発信することで、産後早い段階に「こんなアプローチや考え方があるんだ」というふうに選択肢を広げてほしい。そんな気持ちで取材をお受けしました。
新型コロナウイルスによる不要不急の外出自粛の呼びかけもあり、取材はオンラインで実施。産後の様子や産後うつの症状や考えられる原因、どうやって回復してきたのかについて1時間以上にわたってお話しました。
ママを辞めたいと思ったことはない。でもママに求められる役割は重くてプレッシャー
もちろん放送時間には限りがあるので、取材の全てが流れるわけではありません。妻の「産後に子育てを自分がやらないと思い抱え込んだこと」「その結果追い詰められて、虐待をするか自分が命を断つかしかないこと」と語ったVTRが流れました。
一方で筆者は、「育児がつらいのは当然で、妻がするもの」と思いこみ、仕事にフォーカスして妻のサポートができなかった反省点について語っている様子が流されました。自分たちの名前やインタビュー画像が放送されて、緊張しました。
妻は中継で生放送に参加し、自分の気持ちを次のように発言していました。
ーーママを辞めたいと思ったことはありますか?
「思ったことはないけど、理想の母親像を持ってたくさんのママが苦しんでいると思う。育児も家事も仕事もちゃんとする。それがママに求められる役割だとしたら、辞めたいと思うかもしれない」
ーー薗部さんは家事代行などをつかっていますか?
「家事代行とベビーシッターサービスを利用しています。使い勝手がいいし、頼れる人がいない状態のときは外部のサービスが助けになる。他の人も協力してくれている、一人じゃない、社会って優しいんだなと思えるんです。子どもを産んで歓迎されている気がします」
ーー(小室さんが政策について語った後)薗部さんはどう思われますか?
「政策は大切だと思います。でも助けを求めているときから政策が具現化されるまでには、タイムラグが生じてしまう。今苦しくても救われないんです。手に負えなくなるまで我慢してしまう前に、個人でどうにかしていきたい。子育てをプロジェクトととらえて、周りを巻き込んで一緒に子育てに向かっていく。個人レベルの意識改革が必要なのかな」
兼近さん「10家族あれば、10の色がある」
放送ではワンオペ育児がなぜつらいのかをまとめたフリップや、夫の家事育児時間が長いほど第二子が生まれる可能性があることを示したデータが出て、参加者がさまざまな議論を繰り広げます。
印象的だったのが、兼近さんの発言です。
「10家族あれば、10の色があると思うんです。SNSで誰かが発信した育児の楽しい面を見て、それを自分の現状と比べて落ち込んでしまう。そんな可能性があると思う」
子育てのやり方は、ひとつではないはずなんです。家族だけでやらなくていい。親だからって、ずっと子どもに向き合わなくてもいい。自分たちに合ったアプローチを採用すればいいだけなんです。家事代行のような第三者を頼ることについても兼近さんは理解を示していて、考えが柔軟だなと見ていて感動しました。
「(奥さんが家事代行のようなサービスを)使おうと思っても、夫の両親に気をつかってしまうケースはあるかもしれない。誰もが普通に利用できるようになるといいと思う」
小室さんは、産後うつになりやすい時期を産後2週間〜1ヶ月というデータを示し、男性が1ヶ月間の育休を取ることの必要性を訴えます。同時に、個人や企業任せにするのではなく、少子化対策として国が男性の育休を取りやすい風土を作ってほしいとコメントされていました。
子育てには明るい面もある!
生放送で妻は発言をしましたが、時間に制限があるため伝えたいことをすべて発信できたわけではありません。収録終了後に妻は、
「子育てのつらさばかり話してしまった。そんな時期はあったけど、今は子どもが可愛いし、もっと子どもが欲しいと思っていることは伝わらなかったかな」
と心配していました。
番組のテーマがワンオペ育児や産後うつなので、育児のネガティブな面が強調されるのは仕方がありません。子育てが大変なことは事実ですし、筆者夫婦も相当に苦しんだわけですから。
でも暗い面と同時に明るい面も存在することを、このnoteで強調したいです。つらいと感じたこと以上にそれを上回る楽しさや幸せもあります。僕ら夫婦が産後にきつかったのは、「夫は、妻はこうあるべき」と性別によって役割を決め付けたことや、自分たちだけでどうにかしようと無理をしたことなんです。
子育てのアプローチを変えたら、子どもが可愛くて仕方なくなった
そうならないために僕らがやったことが、番組で妻が話した「個人レベルで周りを巻き込んでいく」ことでした。そのことについてこの記事を通じて補足したいです。
妻の心身のバランスが崩れた後、僕は在宅メインの働き方に変えました。こうすることで妻のワンオペ一馬力から僕が加わって、二馬力での育児がスタートしました。一人よりは楽ですが、夫婦共働きで育児を続けるのは二馬力でもハードでした。時間的にも精神的にもゆとりは生まれませんでした。
ではどうしたかというと、ご近所のつながりをつくったのです。独身時代はご近所づきあいを全く意識しなったですし、うっとうしいものとしか思えなかった。でも子育てをしてみると、家族以外に助けてくれる人が近くにいることの安心感ってとてつもなく大きいことを体感したのです。
いまは仲良くしている2つの家族があり、家事のお手伝いや子どものお世話を不定期でお願いしています。夫婦間だと、結局はどちらかが子育てや家事をしなければなりません。これだと、「自分の方が負担が大きい」というふうに不満に感じてしまうかもしれませんよね。
でも自分たちがやらないという選択肢をとったことで、僕らの心にはゆとりが生まれました。頑張らなくてもいい、誰かに任せられるという事実が僕らを救ってくれています。
その結果、妻は今では「子どもは可愛いし、育児が前よりも楽しくなった」と話します。そしていま妻のお腹には新しい命が宿っています。産後はつらかったし、子どもはもう欲しくないと思っていた妻でしたが、夫婦の働き方を変えたり、ご近所のつながりをえたりして子育てのアプローチを変化させたことで、子どもをもっと育てたいと願うようになりました。
アベプラでは柴田阿弥さんが「子育ての大変さを聞くと、自分が子どもを持つのが怖くなる」と発言されていました。ほんと、そうだと思います。僕がもし独身だったら、きっと同じことを思います。
暗い面だけじゃない。育児のあるべき像から離れ、自分たちに適したやり方を実践することで、子育ては今よりもずっと面白いものになる。僕はそう強く信じています。
最後になりましたが、アベプラ 制作スタッフの方、当日に妻をサポートしてくださった参加者の方にお礼をいたします。ありがとうございました!
ご支援をありがとうございます!いただいたサポートは、子育てをテーマにした企画や取材費に充てさせていただきます。