ガーシーの逮捕状への違和感
先日、宗教2世についての記事を書いたが、それを吹き飛ばす勢いなのが「ガーシー」への逮捕状請求の報道。今はこれが「売れる記事」なのだろう。
議会に出るどころか日本に帰国しないガーシーに対し、逮捕状が請求された。私は前から帰国するはずがないと思っていたので、まあこうなるだろうなというのは予測していた。
彼の動画を見たことがあるが口は悪いし、脅迫めいたことをやっているから報道で言われているような罪状がなかったとは言えない。彼の著書のタイトルである「死なばもろとも」にもそれが現れているだろう。ただまあ、ガーシーが言うように「寝ている国会議員が云々」というのも理解できる。ということでこの件について私の感想は「いい年した大人の団栗の背比べ、五十歩百歩」である。
ただ、除名処分から逮捕状請求までの速さがかなり早かったことや、国際手配するほどの罪状なのかどうかといった点には疑問というか違和感も感じる。まあ、権力の世界というのは正しいか間違ってるかで動くような理論の世界ではないから、何が起こっているか想像くらいはできるのだが。
個人的にガーシー当選というのは「政治界のバグ」のようなものだと思っている。そもそも除名処分なんてものが殆ど初めてのようなもの(前例は70年前なので参考にならない)。外国にいながら出馬して当選してしまうなんていう芸当は政治家を志すものが数多いるとしても思いつかない盲点だったのではないか。
それに対して権力が「もみ消し」を謀ろうとするのは、別に驚くようなことではない。
ただ、彼に投票した人がいるのも事実。
その人たちを馬鹿にするのもどうかと思う。選挙に行かなかったら行かなかったで投票率が低いというくせに、行ってガーシーに投票したらしたで「あんなのに投票する奴は馬鹿」と言われる。まるで「選挙には行ってほしいけど変なのではなくて無害そうな人に一票を入れてくれ」みたいな、そんな暗黙のメッセージがあるとまで考えてしまうのはひねくれ過ぎだろうか。
私は昔からこういう日本の「空気」という文化が苦手で仕方ない。
別に私が彼に投票したわけではないんだけどね。
要するに「あんなのに投票する奴は馬鹿」という人は、「誰に投票したら賢いか」を知っているはずだから、それを教えてほしいものだと思う。
これは、陰謀論をやみくもに否定する人に私が使う論理に似ている。
陰謀を暴けば世界がよくなると信じてる人は確かに頭が弱いかもしれないが、否定する人はどうすれば社会がよくなるのかを考えてるわけではない(否定する人が代わりのアイデアを出しているところを私は見たことがない)。
だったら、「お前らバカだけど俺についてこい」っていうような親分肌のガーシーについて行きたいと思う人が続出するのも、私は十二分に理解できる。
ガーシーのところには虚実入り乱れた情報がとにかく集まっていくだろうから、もしかすると国籍を手に入れることができたり、パスポートもどこかで発行してもらえたりするかもしれない。いくらでも逃げ道はあるだろう。
ガーシーは悪で政府が善、なんてストーリーは私はひどいシナリオだと思っている。彼を出馬させた立花元党首は頭が痛いのか、裏でにんまりなのかは知らないが。
ただ彼がある意味で「犠牲」となったことで、他の「潜在的ガーシー」は同じ轍を踏まないように政治活動をするっていう選択肢ができたと思う。これからは、さらに巧妙な”政治ジャック”が行われるかもしれない。
よく書いているが「生徒会」というのはまんま民主主義=政界のごっこ遊びみたいなもの。学生時代にみんなそこを通過するわけだけど、私はその中でいやというほど「権力の壁」を感じていた。ガーシーもまた、権力という巨大な魔物に打ち勝てなかった人の1人ということだろう。しかも本物の政治の世界で。
権力って怖いというが、何が怖いかというとまず「正邪」の重みがない。そして空気感や人と人との関係性(血筋も含めて)が重視されるという点が怖い。そこに、裏切りや駆け引きが存在する。ただ、これは恐らくどこの国でも同じようなものだと思う。
だから、その魔の世界でうまくやっていくためには既に構築された関係性に切り込むだけの知的体力と巧さが求められる。これを総合して私は政治力と呼んでいるけど、この政治力の高い人間が日本の会社組織でも割と重視されていると思う。だから、挑戦する企業・人が伸びにくい。政治力が高い人は決して能力が高いわけではないから、能力主義を採用する会社の持っているスピード感とは違った構造になる。
ただ、企業が挑戦することや経済成長することがいいことなのかどうかという大前提の話がある。
経済成長の果てに戦争がちらつくようなら成長はむしろしないほうがいいわけだし、挑戦をすることで大量の解雇者が出るのであれば、政治力重視でほどほどにしておいたほうがいいという考えがあるのも理解できる。
というか、日本の歴史を調べているとどっちかというと「政治力重視」のほうが性には合っているとすら思う。私は嫌いだけど。
話が逸れたけど、私は今後彼に投票した人達の動向と、ガーシーがどう逃げるのかという事を注視してみようと思っている。
そういえば、この前丸山ゴンザレスのYoutubeを見ていた。神奈川県警はなぜ不祥事が多いのか、という事だったんだけど、「不祥事が多いことがわかっているということは、神奈川県警は不祥事を隠していない」という理屈に確かに、と思った。
どういうことかというと、「やっていることはヤクザ」ともっぱら言われているガーシーは、「ヤクザであることを隠していないだけ、割とオープン」ということである。本当は、「ヤクザに全く見えないけどそれに匹敵する事を裏でやってる人」の方が怖い。そういう人は、実力行使を持って襲撃されることが時にあるのだが、これ以上いうと私も指名手配の憂き目にあうかもしれないのでやめておく。
なんかガーシーをかばっているみたいに思われたかもしれないが、私の立場はいたって中立である。私のエッセイを読んでくださったことのある方はご承知の通りひねくれ者である。安易にどちらかを支持するなんてことはないのだけど、一応付記しておく。