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チロル堂、コピー用紙2枚の魔法


やあやあやあ!たのしいにいのちがけ吉田田タカシです。
僕たちが運営する「まほうのだがしやチロル堂」で起こった、小さな魔法の話を聞いてください。
※チロル堂って何?という人はこちら


その日、僕はコーヒーを飲もうと、生駒駅すぐ近くの路地裏にある「まほうのだがしやチロル堂」に向かった。
最近、〝グッドデザイン大賞〟なる、身に余りまくる賞をいただいた事で、少し話題になっているとはいうものの、平日の昼間は客もまばらで静かなのでゆっくりコーヒーを、、、のはずが今日は違った。

ドドドドドド ガコンガコンガコン ガガガガガガ
チロル堂に着くと、何やらものすごい騒音が鳴り響いていたのだ。

何事かと店内を見渡すと、お店の一番奥にある窓の向こうでドッカバッカと工事が行われていた。
スタッフに聞くと、となりの古い建物が取り壊され、新たにマンションが建つらしい。その基礎工事をしているのだという。
窓ガラス一枚向こうで、ショベルカーが土を掘り返して、ものすごい騒音が鳴り響いてるのだ。

工事が始まる前の窓ガラスの向こうはこんな感じ
だった。

工事前の窓の風景

実は石積みとトタン壁が見える素朴な風景を僕はとても気に入っていて、元々すりガラスだった窓ガラスを透明に入れ替えて、この素朴な景色を見えるようにした程。
1年前チロル堂がオープンした頃はこの窓と、壁との隙間に植物を置いたりして楽しんでいた。

チロル堂が出来た頃の窓


だーがしかし、だがしかし!今日チロル堂に行ってみると冒頭に書いた通りゴワンゴワンと基礎工事が行われていて、ショベルカーやダンプカーによる騒音と砂ぼこりが舞い景色は一変していた。

工事中の窓からの風景

落ち着いてコーヒーを飲みたかったのに残念だなぁ。
と思って景色を見ながらテーブルに着いた時に何か不思議な違和感を感じた。

僕はその不思議な違和感にジーーーーっと焦点をあてて、違和感の正体は何だろうと探ってみるとそれは窓越しに見るショベルカーの角度(視点の低さ)だ!と気づいた。

座ると目線が下がり、その低い角度からショベルカーを見たのは初めてだったから、そこからくる不思議な違和感だったのだ。

次に、この不思議な違和感は何かと似てるなぁ。。と思い、
感覚の記憶ページをパラパラめくると、あったあった!
それは子どもの頃、大阪の水族館〝海遊館〟に行った時だ。でっかいジンベイザメを斜め下から見た時と同じじゃないか!
ジンベイザメの横っ腹を見ながら「こんな角度から見れるの!?」と少年の僕は水中に迷い込んだような不思議な感覚になったのだった。
あの、斜め下からジンベイザメを見上げたという体験は、ジンベイザメの全長や生態といった知識の学びでは辿り着けない、感覚を伴った学びとして僕の中に約30年間大切に保管されていたのだ。

余談だけど、僕が25年間やっているクリエイティブスクール〝アトリエe.f.t.〟では
こういうテストで採点できない(数値化、言語化しにくい学び)、感覚の学びが重要だと考えていて、自分で答えをつくるプロセスから使い物なるスキルを学ぼうとしている活動の場なのです。

https://eftosaka.com

この一見残念な状況こそクリエイティブのスイッチをONにする絶好のチャンス!
そう、クリエイティブはいつもネガティブから始まる。
「こんな特等席で工事現場を見れるなんてそう無いんじゃないかな?」とふと思った。

一見、ネガティブに感じるような物事を「ちょっとまてよ!?」と別の視点から捉えなおして、「もしも、この状況が〝良い〟とすればどんな事が考えられるか」と特別な状況だからこそ起こりうる〝たのしさ〟を感じ直すのだ。
ワクワク?熱狂?イタズラ?ユーモア?やさしさ?皮肉?メッセージ?音楽?驚き?問題提起?アクション?新感覚?巻き込む?企む?と頭の中でルーレットが回った。(しゃがんでからここまで5秒)

うんうん、基礎工事の期間は一週間程度、この窓を水族館のように見立てて、子どもたちがガラス越しに工事現場をすぐ近くで見れるスペシャルウィークにすればいいんじゃないか!
そう思った途端に窓から見る景色は一変した。

そして僕はA4のコピー用紙にこう書いた
「はたらく おじさん をみよう!」

はたらく おじさんを みよう

するとその一連の様子を見ていた小学生がすかさず、スマホのアプリで電光掲示板を作った!
横にして置いたスマホの画面には、新幹線の電光掲示板の如く、右から左に「働くおじさん見放題\(^o^)/」の文字が流れて気分を盛り上げた。

小学生が発案の電光掲示板

〝見放題〟としたところが、これまた秀逸!
〝みよう!〟よりもそそられるなぁ、、と小学生に嫉妬しながらも、気分が盛り上がってきた!

その時おじさんが窓に近づいてきたのだ。
店内の事など気に留める様子もなく、たまたま窓の近くを通っただけなのに、チロル堂の店内では「おおーーー」っと歓声があがった。
この頃にはもう全員の目には、ネガティブなはずの工事が、楽しすぎるスペシャルウィークに突入していた。

調子に乗った僕はさらにもう一枚のコピー用紙に

「ご苦労さまです。
リンゴジュース300円、
コーヒー600円、、、」

とドリンクメニューを書いたコピー用紙を、窓の内側から工事現場に向けて張り出した。

これは〝水族館のエサやりショー〟のイメージ(失礼)

見渡すとチロル堂に居た、客もスタッフも大人も子どもも全員が一つの〝たくらみ〟に夢中になっていた。

そして、、、

ついに、、、

その時はきた、、!

キターーーー!\(^o^)/

「おーいドリンクもらおか!」とおじさんが窓をノックしてドリンクを注文してくれたのだ!

そこから先はもう魔法の世界にいるようだった。
「ショベルカー乗ってみるか?」と子どもを窓から連れ出してショベルカーに乗せてくださったのだ。
これはもうジンベイザメの背中に乗ったのと同じ!!!

水族館どころか本当の魔法使いは、はたらくおじさん達だった。

子どもにとっては、かけがえの無い体験になった事だろう。
もしも大人になって忘れてしまったとしても、僕のジンベイザメみたいに記憶の中に感覚が格納され、出番を待ち続けるのかもしれない。

数日後、ショベルカーに乗った男の子の手には、その体験の大きさを物語るオモチャが!

ハマってる!

これが、まほうのだがしやチロル堂で起きた、コピー用紙2枚の小さな魔法のおはなし。
めでたし、めでたし。


100人100通りの人生に取説は無い! 自分だけの地図を描くチカラを身につける。 「つくるを通して生きるを学ぶ」アトリエe.f.t.です。 応援ありがとうございます!!