訴訟費用額確定処分のTIPS

弁護士が依頼者からよく聞かれる質問第6位くらいに「訴訟して、弁護士費用を相手に負担させることはできますか?」というものがある(第1位から第5位は各自で決めてほしい)。

多くの弁護士は弁護士費用を敗訴者負担とする制度が日本にはないことを説明した上で、「でも訴状には「訴訟費用は被告の負担とする。」って書いてありますよ?」と問われると、「一応、訴訟費用についてはそうやって書くんですけど、これには弁護士費用は含まれないんです。あと、訴訟費用自体実際に請求したりされたりことはまずなくてですね・・・」と返答していると思われる。
法制審議会 民事訴訟法(IT化関係)部会第5回会議(令和2年11月6日)議事録の渡邉幹事発言でも「現状では,訴訟費用額確定処分の手続の利用が極めて低調であることを指摘させていただきたいと思っております。実際に,ここ20年程度見たところでも,1%を超えることはないという程度の利用状況でございます。」とあり、実際にほとんど使われていないのである。

とはいっても、訴訟費用は勝訴していれば請求できる(なお、勝訴していても負担割合の関係から自分が払う必要がある場合は、請求しない方が良いだろう。)。訴訟費用に関する規律を概観してみよう。

訴訟費用として請求できる項目は民訴費法(民事訴訟費用等に関する法律)及び民訴費規則(民事訴訟費用等に関する規則)を見るとわかる。
原告が勝訴した場合に、原告が被告に請求する場合は、以下が主に請求可能な費用である。被告で請求したい場合は、①②を削るといい感じである。
※なお、以下では正確さを犠牲にしている部分があるが、筆者は、数百円単位で合わせることにこだわるよりさっさと申立てた方がいい、というスタンスなので、その点はご承知いただきたい。

なお、訴訟費用額確定処分には、従来、時効は存在しなかったが(今回の法改正で10年となった。)、訴訟記録の保管期間の関係から、訴訟費用額確定処分が申し立てられるのは、事実上、判決から5年が経過していない事件に限られると思われる。

①訴訟提起印紙代:訴状に添付した印紙の額

②送達等に使用した郵券:予納郵券額-還付額

③代理人出頭日当:3950円×出頭回数
※電話会議・web会議で出席した場合は下記のとおりである。令和6年3月1日からはweb口頭弁論が可能になるので、画面に向かって陳述することで3950円が発生する。
・書面による準備手続として行われた場合→カウント不可
・弁論準備手続・口頭弁論期日として行われた場合→カウント可

④代理人出頭旅費:0円or300円or実費×出頭回数
ア:事務所から裁判所が500メートル以内→0円
イ:事務所から裁判所が500メートル以上→300円
ウ:事務所と裁判所が同じ簡易裁判所管轄内でないとき→実費(領収書の控えの提出を要する)

⑤書類の作成及び提出費用:1500円(+1000円×n)
提出した訴状や準備書面が5通以内なら1500円、6通以上20通以内なら+1000円(以下15通増えるごとに+1000円)。甲号証が16通以上65通以内なら+1000円(以下50通増えるごとに+1000円)。
※ページ数ではなく、準備書面5を出しているor甲号証を16通以上出していて初めて1000円の追加。甲号証は枝番もカウントできるので、甲1の500とかまであると稼げる(?)。枝番を振ろう。

⑥資格証明書提出費用:668円
500円+168円である。(説明が面倒なので放棄)

⑦訴訟費用額確定処分正本送達費用:1204円
※なお、訴訟費用額確定処分は必ずしも送達を要しないが、訴訟費用を請求する側であればとりあえずこの金額を記載しておいて良いと思われる。

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