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Effectual Business Modeling Method 起業アイデア具現化全体像(2)
こんにちは、広瀬です。前回はEffectual Business Modeling Methodのアイデアの事業化まで説明をしました。今回はその続き、顧客体験の確認とブランディングの話をします。
前回のストーリー
まずは前回提示した、Effectual Business Modeling Method図とEffectual Business Modeling Process図を再度示します。
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(筆者考案・作成)
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(筆者考案・作成)
Effectual Business Modeling Process
お断り:
Effectualな独立・起業・事業化において、これ以降のプロセスは省略しても構いません。ここに敢えて載せた理由は、Effectuationをシステムデザイン思考で捉えると、初めの事業化とそれ以降の事業運営はA/Bテスト、顧客体験の確認がA/Bテストのレビュー、およびCustomer Job-to-be-Doneの理解と製品/サービスに新たな顧客体験の反映、そして製品/サービスのブランディングを経て第二の事業化としてさらなる事業の発展を願って書いています。
顧客体験の確認
ここでは自分が立ち上げた事業のレビューをValue Proposition Canvas(以下、VPC)を用いて行い、再度Effectuation Business Canvas(以下、EBC)に反映しCrazy Quiltの原則で以前会話した人々と会話します。会話の内容は以前のCrazy Quiltとは異なり、今までの自分の仕事内容や今後の方向性について会話します。また、独立・企業・事業化の直後か顧客体験の確認の当初に、ざっくりと当初の自分の価値と当初想定していた顧客のJob-to‐be-Doneをまとめておくことを提案します。
VPCに馴染みがない方は、申し訳ありませんがググってみて下さい。色々なサイトが分かりやすく説明していますので、そちらをご覧下さい。
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Value Proposition Canvas
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Value Proposition Canvas
私はVPCの分析が終了しクライアントにプレゼンする時は、皆さんおなじみのVPCの図を利用しますが、実際の分析時には色々書いては消したりしますので、独自にExcelでVPCを作っています。ここで説明するVPCもExcelのものを使用します。
さて、この先も事例を用いて説明した方がイメージが湧きますので、以前EBCの事例で用いたAさんのITコンサルタントの事例で説明をします。
Aさんの事例:
AさんはIT業界で開発、コンサル、プロジェクトマネージャー等の長い経験からITコンサルタントとして独立しました。独立後順調に仕事が受注でき3ヶ月が経過しました。これまで受注したした仕事は、SI企業からプロジェクトのPMOの依頼が来たり、地元の町工場の会社からホームページ作成の依頼が来たり、地元商工会議所から起業セミナー講師の依頼が来たり、商工会議所経由で紹介を受けた地元の中小企業からのシステム化相談が来たりと、忙しく動き回っています。
と言う事例を使用しますが、先ずは独立・起業・事業化当初に、自分中心に理想的なVPCを書いてみましょう。オリジナルのVPCの書き方は忘れて下さい。独立・起業・事業化当初は不確定要素が多く、先を見通すことや、まだ見ぬ想定顧客のJob-to-be-Doneなどわかりません。書き方は自分本位に以下の順番で良いと思います。また、Value PropositionもCustomer Segmentも見えていませんので書きません。そして、できたVPCが今後のテンプレートになると考えて下さい。
VPCの書き方:
(左側)製品/サービス(Products&Services)
(左側)顧客に利得をもたらすもの(Gain Creators)
(左側)顧客の痛みを取り除くもの(Pain Relievers)
(右側)顧客が本当に必要とするもの(Customer Job-to-be-Done)
(右側)必要とするものが得られた時の利得(Gains)
(右側)必要とするものが得られない時の痛み(Pains)
そしてざっくり作った初期のVPCが以下になります。(私が勝手に想定して書いたVPCです。)
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次に、順調に仕事が受注できるようになり3ヶ月くらい経過した時に(特に経過月に定めはありません)、今まで受注した仕事のVPCを書いて当初のVPCとの違いを見て頂きたいと思います。この時に書くVPCはオリジナルのVPC通り、右側から書きます。この右側のブロックは顧客と会話しないと書けない箇所と思いますので、受注時の依頼内容の確認時に聞いておくと良いでしょう。
実は、ここで大きな問題があります。家具屋さん、ケーキ屋さん、美容室等、お店を開業した人たちは開業以降のVPCを作るのは難しいかもしれません。VPC右側のブロックを埋めるような質問は、お店に来た顧客に簡単に聞き出せるものではありません。日々の顧客との会話でこれらの情報がキャッチできれば良いのですが… このようにお店を経営している方たちの顧客体験の確認としては、VPCから離れて売上データから確認するのが良いと思います。日々のお店の状況はお店に出ている経営者の方が一番把握しており、売上データを見るまでもないかもしれません。一番の売れ筋商品やTop 10に入る商品、季節で売上が変動する商品、それぞれの売上などは当然把握されていることでしょう。しかし、お店の売上の8割を占める商品/サービスは何か、とか、もしも顧客名が売上に紐づいているとしたら、売上の8割を占める顧客は誰か等の集計を見ると、面白い結果が得られるかもしれません。また、当初の目論見と異なっていたり、目論見通りであったりと、この先の方向性を教えてくれるかもしれません。
蛇足になりますが、お店を開店する場合は商圏分析を行うケースが多いと思いますが、売上データから顧客の住所か郵便番号だけでも紐づいていれば、独自に開店後の商圏分析ができ、意外な結果がわかるかもしれません。売上データに顧客が紐づいていないお店では、300円お買い上げでスタンプ1つ、みたいな顧客カードでも郵便番号くらいは取得できると思います。さらに、この顧客カードのスタンプ日付から顧客の来店周期を求めることもできます。
もう一つ蛇足でスミマセン。先程の売上の8割を占める商品/サービスや顧客が分かると何が嬉しいと思いますか?
以前地方都市の中小企業の経営コンサルで、その企業の売上3年分を解析したことがあります。その企業の年間取引顧客数は約500社でしたが、3年間売上の8割を占めている顧客はほぼ同じ約30社でした。社長は親から引き継いだ2代目社長で営業経験がなく、現場には営業マンが20名程いるそうで毎日忙しくオフィスにはいないと言っていました。また社長はこの上位8割の顧客のことは知らなかったようで、この30社だけに注力し取引を倍にしたら会社の売上は今の倍弱になりますよ、とアドバイスしたら対応する営業がいないと残念な発言を頂いたことがあります。社長が直接営業やったらどうですか、とアドバイスしても現場担当の邪魔をしちゃいかんと、私が諭され残念な思いをしたことがあります。今もその会社は昔のままのようです。
Aさんの事例に戻りますが、受注した仕事の全てのVPCを書くと冗長になりますので、私の方で勝手に作った各VPCを一つにまとめたVPCを以下に示します。なお、この事例は私が経験してきた業界と業務で、かつ私の想像で事例を作っていますので以下のVPCが意外にきれいにまとまってしまったことは否めません。一つにまとめることのメリットは、そこから顧客が本当に必要としているもの(Customer Job-to-be-Done)が見えてくることにあります。また、新たなBird-in-Handが見つかるかもしれません。一つにまとめても何も見えてこないことが予想できる場合は、無理してまとめなくても良いでしょう。その様な場合は今まで受注した仕事の内容と、本来自分がやろうとしていることと乖離がないか確認して下さい。
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この事例からAさんは取り敢えず自分の経験とスキルを活かして仕事ができたようです。ただし、Webサイト構築と起業セミナー講師は今まで経験してきた内容と異なるので、今後この様な仕事を続けるか否かはAさん次第です。このように悩んだ場合はWebサイト構築と企業セミナー講師のEBCを新たに作ってみてCrazy Quiltしてみると良いと思います。この2つの仕事にも可能性が見いだせれば、新たなCrazy Quiltで新たな世界が開けるかもしれません。
ブランディング
顧客体験の確認が少し長くなりましたが、次にブランディングの話をしたいと思います。ブランディングと聞くと、何か高級ブランドのアパレル製品や宝飾品を思い浮かべる方が多いと思います。それらは立派にブランディングされているから思い浮かぶのです。
ミッキーマウス
この言葉を、見て、聞いて、何を思いますか?
ほとんどの方がディズニーランドかディズニーの世界を思い描くと思います。中にはミッキーマウスマーチの音楽が鳴り響いた人もいるでしょう。
ミッキーマウスは皆さんご存知のように、ディズニーの世界を象徴するキャラクターです。アニメ、映画、グッズ、ディスニーランド、音楽、ロゴ等、ミッキーマウスと言ったらディズニーと言うように、見事に連想されるようにブランディングされています。
皆さんが立ち上げた事業も、〇〇と言ったら〇〇、のように連想されたら商売が繁盛すると思いませんか? また、ブランディングは差別化戦略の一つとして考えることもできます。ブランディングは非常に奥が深いですが、ブランディングの事を少しでも知っていれば、事業立ち上げ前や立ち上げ後に自分なりに差別化を考える上で大いに役に立つことと思います。
お店を開く方は、商品の包み紙、小さな袋、手提げ袋等に、お店独特のデザインやお店のロゴを入れるとか、コンサルタントになる方は名刺に自分自身を表すロゴを入れるとか、専門分野を明記するとか、ご自身の写真を入れるとか、ブランディングは遊び心を持って検討されると良いかもしれません。
また、キャッチコピーを考えるのも一つの手です。キャッチコピーはブランドメッセージとして、立派なブランディングです。「やめられない止まらない、〇〇」は某社スナック菓子のキャッチコピーですが、昭和の人間の私は、このキャッチコピーを見ただけで商品と商品名が目に浮かびます。
ひょっとすると、川柳とか俳句とか、古風なものも狙い目かもしれません。
以下に参考までにブランディングのパターンを示します。皆さんの立ち上げた事業のブランディングに役立つ事を願っています。
商品のブランディング
個々の商品や製品に焦点を当て、その商品の特徴や価値を強調するブランディング。例えば、リンゴマークのスマホやスカッと爽やかな炭酸飲料の特定の製品がこれに該当します。小売店のブランディング
商品を販売する小売店自体がブランドイメージを持ち、店内の雰囲気やサービスによって差別化を図る。例えば、アパレルブランドの専門店や大手百貨店など。サービスプロバイダーのブランディング
サービスを提供するプロフェッショナルや企業が、提供するサービスの質や専門性を強調するブランディング。例えば、弁護士やコンサルタントがこれに当たります。個人ブランディング
個人が自身をブランド化し、専門性や経歴、スタイルなどをアピールするブランディング。著名な個人、アーティスト、専門家などがこれに該当します。地域ブランディング
特定の地域や都市が、観光、文化、歴史などを強調してブランディング。地域に特有の価値や魅力を伝えます。
Effectual Business Design Pyramid
この先、システムデザイン思考、ジョブ理論、およびJob-to-be-Doneの話が出てきます。詳しくない方は申し訳ありませんが、ググってみて下さい。色々なサイトが分かりやすく説明しています。
Effectual Business Design Pyramidとは、システムデザイン思考の5つのステップに、ハーバード・ビジネス・スクールの故クレイトン・クリステンセン教授がJob-to-be-Doneに対処する方法を図式化したThe Jobs to be Done Pyramidを足し算したものです。
システムデザイン思考の5つのステップ
共感(Empathize)
ユーザーの視点やニーズをインタビュー等で理解する。定義(Define)
インタビューの結果、課題や問題を具体的に定義し理解する。概念化(Ideate)
定義された内容を解決するために多くのアイデアを生み出す。試作(Prototype)
概念化されたアイデアを具体的な形にする。テスト(Test)
試作品でユーザテストを繰り返し、フィードバックされた評価を元に再度試作品を作りテストを繰り返す。
この5つのステップは、目に見えるモノ作りと目に見えないサービスの両方に適用可能なステップです。
The Jobs to be Done Pyramid
このJobs to be Done Pyramidは「ジョブ理論」の日本語版・英語版の本共に記述はありませんので、この本で勉強した方にとっては初耳と思います。多分、故クレイトン・クリステンセン教授の授業の中でしか紹介していない情報かもしれません。
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Job理論の経営戦略コース
筆者講義ノートから抜粋
上図は、顧客のJob-to-be-Doneが分かったら、どのような経験をしてもらうのが良いのか(EXPERIENCE)、それをどのように実現すればよいか(INTEGRATION)、実現したらそれをどのようにブランド化すれば良いのか(PURPOSE BRAND)、と言うことを図式化したものです。
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Job理論発表資料から抜粋
そして上図の左側は、Jobs to be Done Pyramidをシステム思考的に筆者が書き直したものです。そして出来上がったものがEffectual Business Design Pyramidです。
Effectual Business Design Pyramid
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ハーバード・ビジネス・スクール
Job理論の経営戦略コース
故クレイトン・クリステンセン教授の
講義資料をヒントに筆者が作成
上図の1回目の挑戦までの段階は、システムデザイン思考の考えを取り入れ、2回目の挑戦の部分がJobs to be Done Pyramidの考えを取り入れている部分で、以下のように対応します。
1回目の挑戦
Effectuationの教えに従い、先ずは行動優先で事業をプロトタイプとして立ち上げることを目標とします。
アイデアの閃き/再確認/評価:
共感(Emphasize)
定義(Define)
概念化(Ideate)
Crazy QuiltでEBCの意見交換/修正:
概念化(Ideate)
独立・起業・事業化:
試作(Prototype)
テスト(Test)
2回目の挑戦
1回目の挑戦で、顧客が本当に必要とするものがある程度理解できていることを前提に、この後はJob理論に従いJob-to-be-Doneの解になる事業展開に望みます。
顧客体験の確認:
JOB TO BE DONE(Inspiration)
EXPERIENCE(Ideation)
ブランディング:
PURPOSE BRAND(Storytelling)
顧客体験の反映:
INTEGRATION(Implementation)
2回目の挑戦以降は、この2回目のサイクルを繰り返し、事業が顧客が本当に必要とするもの(Customer Job-to-be-Done)に答えられるように日々研鑽を重ねます。これら一連の流れは全て自分のコントロール下にありますので、考え方はEffectuationです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
Bird-in-HandとAffordable LossからEffectuation Business Canvasを作り、Crazy Quiltで事業内容に磨きをかけ、事業を立ち上げるまでのプロセスをEffectual Business Modeling Methodと言う方法論にまとめ上げてみました。このNoteをお読みいただいた方の中には、もっと気楽に単純に、または別のアプローチで事業を立ち上げた方もいることと思います。また、この方法論そのものにご意見をお持ちの方々も多くいらっしゃると思います。是非、E皆さまCrazy Quiltの原則に従いワイワイガヤガヤと意見交換しませんか? このNoteへのコメントでも、FacebookやLinkedInやXでも受け付けておりますので、ご意見頂けましたら幸いです。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
P.S.
Effectuationと出会い、色々とNoteを書かせていただきましたが、内容はどちらかと言うと個人の独立・起業に偏ってしまったかもしれません。
一般企業の新規事業立ち上げに、どこまでEffectuationが有効なのか? 今も思案しています。私自身、企業人だった時に立ち上げた事業は全てCausation方式でした。次回は、今回ご提案させていただいたEffectual Business Modeling Methodがどのように一般企業の新規事業立ち上げに活用できるかに焦点を絞って書いてみようと思います。多分ヒントは以下の図にあると思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1706786638988-u3UIkfpRGG.png)
コース資料から抜粋
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![広瀬 潔(HBR Advisory Council Member)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/125655665/profile_78e9c742c76ddf94c47e3b93f4f7bfdc.jpg?width=600&crop=1:1,smart)