“視点”が同じだったから、初日から親密な間柄になれてしまった

その昔、「ディズニープリンセスになりたい」という同僚がいた。社会人になってもプリンセスになりたいってどんなメンタル…と思ったけれど、理由を聞いてびっくりしたのを忘れられない。

彼女がなりたいと言ったのは、ディズニープリンセスのように、自由で強い女性たち。当時すでに流行っていたディズニープリンセスという概念に、わたしは「自由」とか「強さ」というワードを当てはめてはいなかった。キラキラ、ふわふわ、可愛らしい。単に見た目上の、女の子らしい愛らしさを形にしたものだとしか認識していなかったとその時初めて気がついて、自分のバイアスにびっくりした。

人のものの捉え方ってこんな風に、理由や背景を聞かないと意外と分からないものなんだなと思っている。

話は変わるけど、最近新しい友人ができたの。初日から一緒にいて何の違和感もなくて、出会ってまだ10日なのに頭のすべてをさらけ出している勢いでやり取りしている。大人になって知り合いは増えるけれど、友人と呼べる人にはなかなか出会わない。そんな中でもこのスピード感で、この関係になれたのはありがたい限り。

ウマが合うといえばそこまでだけれど、その背景に【材料が同じ】というベースがあったからこその今なのかなぁと思うんだ。

出会った初日、一緒に行ったたこ焼き屋さんの目の前で路上ライブしている女の子がいた。たこ焼きを食べ終わっても何となく名残惜しくて、少し離れた道端で、BGMにしながらおしゃべりを続けていた。そのとき不意に「aikoのカブトムシを歌います」とカバー曲コーナーへ突入。「え、わたしaiko好き！」「わたしも好きだよー」なんて話をした結果、お互いに結構熱心にライブに通うくらいのaikoジャンキーだったことが判明した。そりゃね、どうりで話が通じる訳だわ。
ちなみにその場所は、大阪駅の目の前。aiko目的の遠征とかじゃないのに、こんな風に出会ってしまうなんてさすがaikoの地元だなぁと、不思議な縁を感じてしまう。

初対面の人に「日本語が変」と言われることが多い。わたしもちょっとは自覚がある。

•推しにあたる子を「うちの子」と呼ぶ
•ライブで乗ってきたメンバーたちを「調子乗ってきた」と表現（悪口ではなく）
•◯◯くんのファンを、「◯◯の女」と呼ぶのがデフォ（本当に、悪口ではない）

などなど。挙げ出したらきっとキリがない。

なぜこんなことになるかというと、ベースにあるのがaikoだから。

aikoのつくる曲って、すごく変態的だ。好きな男の子の体のパーツを超ピンポイントで見ていたり、日常の何でもない一瞬のなかに別れた彼を浮かべたり。たとえば最近よく頭をよぎる『えりあし』という曲は、

5年後あなたを見つけたら
背筋を伸ばして聲をかけるね
一度たりとも忘れたことはない
少しのびた襟足を
あなたのヘタな笑顔を

と歌い上げて終わる。
好きな人のあの襟足と、ヘタな笑顔を5年間も忘れずに焼き付けてる女ですよ。面と向かったときのわたしに笑いかけてくれた優しい目とかではないのよ。しかも襟足って、後方からじゃないと目に留まらないものじゃないですか。後頭部だけでも長年忘れられないなんて、すごく変態的じゃない？　そこがすき。

ライブや舞台を観ていても、わたしが「あのシーンの、この瞬間の、この時の目！」みたいな話をしてしまうのは、絶対にaikoの影響だ。おかげで「ダンス中の白目が好き」というどうしようもない癖を抱えていきている。これだけはいまだに同志を見つけたことがない。

インタビュアーのお仕事をしていて思うのは、人は、視点だということ。
その人に見えているものが思考になり、行動になり、世界観をつくって、仕事になって人に届くなどする。例えば経営者インタビューで、「お客様を第一に」みたいなありふれたワードが出たとしても、その言葉を口に出すまでの過程も思いも本当に人それぞれ。単なるキーワードではなく、そこにどれだけの想いが詰まっているのかを大切にすくいあげて聴き、伝えられたらいいなと願う。

aikoが好きなわたしたちは、aikoの視点が好きで、きっといつの間にかaiko的な視点で世界を切り取って恋をしてきたんだと思う。だから、aikoではないイケメンのライブを観に行って「ここが好き」って話をピンポイントで、ちょっと変態的な視点でし続けているし、それ以外の話をするときも「これくらい強いワードを使っても彼女には通じるし、言葉のまま受け取ってもらえるな」という安心感がある。

この短期間で、急激に密な仲になれた理由を挙げたとしたらこんな感じだ。これと同じ理由で、文章って視点と思考のかたまりだから、noteが好きな人とはきっかけ次第でとてつもなく仲良くなれちゃう可能性があると思っている。