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トランプの一枚と中国人の商魂

なんという構成力だろう。しびれた。

銃撃直後のトランプを見上げるようにとらえた一枚。スーツをきたシークレットサービスのエージェント三人がトライアングルの構図でトランプを囲み、それでも腕をつきあげるトランプが真ん中にいて、そのやや左に空に掲げられたアメリカ国旗がはためいている。トランプのすぐ左にいるエージェントの一人はこちらを見つめ返している。その視線は、今まさに私たちが、そこにいるような気にさせる。

青い空、赤い血、紺色のスーツ。手前に共和党の赤白の旗。背景に星条旗。色彩の構成も見事だ。

銃声と悲鳴の中、壇上を駆け抜けるフォトグラファー。落ち着いてシャッターを押す。こんなことは、昨日今日のカメラを持った人にはできない、何千何万回のチャレンジの結果。政治信条に関係なく伝説的な仕事だ。

トランプが大統領になって、神話になったとしたら、この1枚の写真のおかげだろう。


アメリカ人絶賛の一方で、中国人も騒いでた。

フランス革命の名画「民衆を導く自由の女神」のようだ、とウェイボー(微博)で中国人が騒ぎ、むちゃくちゃに拡散しておる。アメリカ人が絶賛するのはわかるが、中国人が騒ぐ意味はなんなのか。

中でも面白い騒ぎが、Tシャツの販売停止。

中国のオンライン小売業者は、事件発覚の数時間後には拳を振り回す大統領の絵が描かれたTシャツを販売。めざといことに3時間も経たないうちに、人気の電子商取引プラットフォーム「タオバオ」で販売され、3時間以内に中国と米国から2,000件以上の注文を受けたという。

シャツの写真もXで話題となり、2万7400回以上のリツイートと26万4000件以上のいいねを獲得。でも、今日の午後、シャツの出品は削除された。「微博」でも商品画像が検閲中だ。怖いよー。

トランプ銃撃の歴史的一枚、中国人の商魂、当局による検閲。高速で拡散し、高速で収束する。なんという構成だろう。この一連の動きにしびれた。

おれが休んでいる間に、世界はこんなにも高速で回っていたのか。

さて、今日の音楽は、やっぱりこの曲。アメリカ国歌。

スーパーボウルに限らず、あらゆるスポーツの国歌斉唱を聴いてきたが、1991年のホイットニーヒューストンにまさる感動はない。

アメリカでは、フォトグラファーが歴史的な一枚を撮影し、中国ではその画像を数時間でTシャツにして販売し、中国当局が瞬く間に封殺した。立場の違いはあれど、みんな自分の仕事をしっかりしてる。

不思議とやる気が出てくる。おれも、おれの仕事をせねば。

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