知りたい!大注目の「東大推薦入試」 どんな学校・どんな生徒が合格してるの?
志望校を決める際に大きなポイントとなる、学校の大学進学実績。 中でも私立中学や、高校の志望校決めの際に、親の多くが一度は確認してしまうのが「学校からの東大合格者数」ではないでしょうか?
本当に子どもに合った学校選びの為には「偏差値」「進学実績」ではなく、学校の本質を見ることがもちろん重要ですが、学校の偏差値に関わらず大学の進学実績がよかったり、東大合格者を輩出しているような学校は、 カリキュラムが充実していて面倒見が良い「お得な学校」とも呼ばれ、例年注目を集めています。
そして「ひょっとしたら自分も?」「もしかしたらうちの子も?」という淡い期待を抱かせてくれたのが、東京大学が2016年度から導入開始した「推薦入試」。 学科試験での東大への入学は難しくても、特技や興味を活かしての合格の道があるのでは?と、夢が大きくふくらみます。
今回は、東大の推薦入試とはどんなものなのか、そして、どんな学校が合格者を輩出しているのかをまとめてみました。
1.東大推薦入試の概要は?
2016年度から開始し2022年度が7回目であったにもかかわらず、あまり詳しく知られていない東大推薦入試(正式名称「学校推薦型選抜」)の特徴。
東大の定員は3000人程度ですが、推薦入試の割合はそのうち各学部で5~10人程度、合計して100人程度が定員です。(毎年合格者は定員以下) 東大の推薦入試はどういった点が一般入試とは異なるのでしょうか。また、どのような出願条件があり、どんな基準での選考が行われているのでしょうか?
■東京大学推薦入試 一般入試との相違点
一般入試と大きく異なるポイントとして、推薦入試は以下の特徴があります。
《入学時に学部が決定する》
東大の一般入試では、まず文1・文2・文3といった「類型」で入学し、成績により学部に振り分けられるのが特徴(3年時)です。つまり入学時には学部が決定していません。 しかし、推薦入試の場合は合格時に学部が決定し、3年時での「進学振分け」は行われません。そのため出願の次点で、出願学部の学問の理解や活動実績が必須とされています。
《一般入試より倍率が低い》
東大一般入試の平均倍率は約4倍と言われていますが、推薦入試の倍率は1-2倍です(学部により異なる)。高校での日頃の学習と、推薦入試の出願準備をしっかりと行うことで、一般入試よりは「東大入学が身近」になるといえるのではないでしょうか
《一般入試より性別・在住地域によるハンディが少ない可能性》
東京大学の現在の男女比率は男子8割・女子2割程度と言われています。 「多様性」が重要視される中、女子学生の比率をあげることは、東大にとっても大きな課題となっていますが、学力で合否が決まる一般入試ではどうしても男子学生の合格者が多くなってしまっているのが現状です。
その対策として、推薦入試での学力・意欲・活動実績・人柄の総合評価によって、女子学生の比率を多くする、ということもあり得ます。 また、首都圏出身者が多くを占めている東大の学生ですが、推薦入試では積極的に地方の高校からの合格者も選出している傾向にあるため、偏差値に関わらず日本全国の高校から「東大推薦入試」にチャレンジする学校が増加しています。
■東京大学推薦入試の出願条件 学部別例
全ての学部に共通する出願条件は
・「高等学校等を卒業、もしくは卒業見込みの者」
・「高い基礎学力を有する成績上位者であること」
・「関連分野またはいずれかの分野で卓越した才能を有すること」
その他、募集要項から学部別の特徴的な出願条件を抜粋しました。
■文学部
人文社会系諸学に関連する分野において、卓越した能力を有することを示す実績があること、あるいは課外活動などの社会貢献活動で優れた成果をあげたこと。
■経済学部
〈以下全てに該当〉
・他者との対話性に優れ、経済分野に強い関心を有する。
・高等学校等において英語、数学、地理歴史・公民のうちいずれかの教科において成績が全体10%以内。
■教育学部
〈以下全てに該当〉
・本学のカリキュラム履修に必要な、教科の基礎学力があること。
・探究学習の卓越した実績・能力を、論文、作品、発表等を通じて示すことができること。
■工学部
高等学校等の学習内容、特に理数系教科について秀でた基礎学力を有しており、「求める学生像」にふさわしいことを客観的に示す推薦事由を有すること。
■教養学部
〈以下全てに該当〉
・自ら課題を発見して探究する卓越した能力を持つ者。
・2つ以上の科目(志望分野に関連する科目を含む)で卓越した能力を持つ者。 ・国際的な活動についての経験、または関心を有する者。
■理学部
自然科学に強い関心を持ち、自然科学の1つ若しくは複数の分野において卓越した能力を有し、グローバルに活躍する意欲があること。これらを示す実績として、以下の(i)または(ii)もしくは両方を有すること。
(i)在学中の特に優れた成績や研究成果など
(ii)科学オリンピック<数学、物理、化学、生物学、地学、情報>、高校生科学技術チャレンジ、日本学生科学賞、国内外で開催された各種コンテストへの入賞、商品レベルのソフトウェア開発経験、科学雑誌への論文発表など。
■医学部医学科
〈以下全てに該当〉
①高い基礎学力とバランスのとれた人格を持つこと。
②生命科学・医学研究への意欲と能力を持つこと。
③医学部進学後に研究者養成のための特別カリキュラムへの参加を望むこと。
④自然科学の領域においてきわめて高い能力を持つこと、あるいは非常に優れた語学力とそれに伴う豊富な国際経験を持つこと。
■東京大学推薦入試の試験概要
東大推薦入試では、
①提出書類・資料による一次選考
②面接試験・プレゼンテーション
③一次選考合格者は大学入学共通テストを受験
①~③の入試結果を総合評価し、最終的な合否を判定します。
資料による一次選考合格者は大学入学共通テストでも8割程度以上は取る必要があるといわれており、テストに向けた勉強も必要です。
■東京大学推薦入試の試験日程
東大推薦入試の試験日程は以下の通りです。(年毎に変動あり)
■インターネットによる出願:10月中旬〜11月初旬
■出願書類郵送:11月初旬
■一次試験合格発表:12月初旬
■面接試験:12月初旬〜中旬
■大学入学共通テスト:1月中旬
■最終合格発表:2月中旬
2.東大推薦入試合格者を輩出しているのはどんな学校?
2020年度まで、全国の高校1校につき校長推薦で男女1人ずつ、計2名の応募に限定されていました。そのため男子校、女子校は各校1名ずつしか応募できず、狭き門でした。
しかし2021年度から、1校につき4名まで(男女比は2:2、1:3、3:1が可能)の応募が可能になり、男子校・女子校は各校3名まで応募できるようになりました。 その結果、合格者は20名程度増加しました。
2021年度からは1年で3名の合格者を輩出している高校も出てきています。
どのような学校の生徒が合格しているのか、公表されているものを2017年度~2022年度の合格者データからまとめました。
(※筑波大学附属駒場高校や、フェリス女学院高校など、合格者数を公表していない学校は除く)
■2017年~2022年度合格者合計 1~7位の高校(合格者が4名~11名)
■2017年~2022年度合格者合計 8~9位の高校(合格者2名~3名)
■2017年~2022年度合格者 注目の高校
2017年~2022年度で、4名以上の合格者を輩出している学校はおおむね偏差値68以上の県内トップ校がほとんどを占め、2~3名の合格者を輩出している学校も同様でした。 しかし、中には偏差値50台で6年間で3名の合格者を出している高校(兵庫の私立中高一貫女子校「小林聖心女子学院」)もありました。
東大推薦合格者が6年間で1名の学校は全国140校で、その中には、
・2021年度に合格者を出した通信制の「N高」
・2022年度に合格者を出した国語を除くほとんどの教科教育を英語で行う「英語イマージョン教育」の「ぐんま国際アカデミー高校」
・2019年に合格者を出した島根県の山間部にある県立「津和野高校」
・2020年度、1903年の開校以来初の東大合格者として教育学部に推薦合格者を輩出した東京・清澄白河の私立女子校「中村高等学校」
など、偏差値やタイプ、地域を超えた学校からの合格者が年々増えている傾向にあります。
東大推薦の合格には、生徒の能力や、学びに対する意識だけでなく、レポートや論文作成・プレゼンテーションなど、受験に向けた準備に高校の先生のサポートや力が必要不可欠です。 また、推薦入試を受験し合格した多くの生徒が、面談で先生に「東大の推薦入試を受けてみたら?」と勧められて「初めて推薦入試を意識し、準備を開始した」と言っていることから、 学校の先生方の「生徒の進路に寄り添い、生徒の能力を見抜く力」も必要になります。
「入口偏差値」を超えて合格者を輩出した学校には、学力のサポートはもちろん、東大推薦合格に向けたサポート体制が整っていたり、生徒の興味や関心・能力を引き出すカリキュラムが充実していたりと、 中学・高校選びの際に注目すべきポイントがぎっしりと詰まっているのではないでしょうか。
3.まとめ こんな子が東大推薦入試チャレンジの切符をもっている!
合格に向けてどのような準備が必要なのか、どんな人が合格しているのか、まだまだ謎に包まれている東大推薦入試。 インターネット上にはたくさんの合格体験談や、情報がまとまっています。
ある推薦入試合格者の東大推薦入試準備スケジュールは、
・3年生の4月 東大推薦合格に向けて勉強スタ―ト
・7月~11月 論文制作(勉強は一旦休み)
・11月初旬 出願書類郵送
・11月 共通テスト合格に向けた勉強を再開
・12月初旬 一次試験合格発表
・共通テストに向けた勉強を休止し、プレゼン準備に集中
・12月中旬 プレゼン・面接試験
・1月中旬 大学入学共通テスト
・2月中旬 最終合格発表
上記の合格者は7月~11月の5か月間と、共通テスト間近の12月初旬~中旬は「論文作成」や「面接・プレゼン準備」で学科の勉強ができなかったため他の大学の受験対策が難しく 「ギャンブルでもやっている気分だった」と話していました。(※推薦で不合格でも、二次を受験し一般入試での受験が可能)
多くの理系学部の合格者が「数学オリンピック」「化学オリンピック」など「オリンピック」受賞経験などのコンテスト出場経験を持っていましたが「オリンピック」等の出場歴は必須ではなく単なる目安。 学問に対して真摯に向き合い「東大に入って何を勉強したいのか」という想いが重要です。 「自分が今まで頑張ってきたこと」「東大でどうしても学びたいこと」があれば、高校の偏差値に関係なく東大推薦合格の可能性があると言われています。 人一倍「好きなこと」「得意なこと」「興味をもっている対象」がある子は、東大推薦入試チャレンジの切符を持っているといえるでしょう。
「中学図鑑」では、
・6年間で4名もの東大推薦合格者を輩出している「海陽中等教育学校」
・2019年度に1名の合格者を輩出している「田園調布学園中等部・高等部」
・2020年度に1名の合格者を輩出している「豊島岡女子学園」
・2022年度に合格者を輩出した「中村中学・高等学校」
の先生方にインタビューを実施し、学校の魅力を詳細に紹介しています!
「海陽中等教育学校」、「田園調布学園中等部・高等部」、「豊島岡女子学園」、「中村中学・高等学校」の学校ページを読むと、東大推薦のみならず毎年難関大学の合格者を多数輩出している理由がわかるかもしれません。
まずは、自分の、我が子の、興味や得意を広げて伸ばしてくれる学校を「中学図鑑」「高校図鑑」で探してみましょう!
【参考資料・文献】
・サンデー毎日発:入試速報 東大推薦・京大特色入試 合格者出身高校一覧
・東大「推薦入試」合格者数ランキング・全179高校【2020年入試版】 | 中学受験への道 | ダイヤモンド・オンライン
・「キミの東大」2021年東大推薦生インタビュー・全10学部まとめ