高校の修学旅行事情 ~訪問先、費用、コロナ禍を経ての変化など~
2020年度の、中学校・高校の修学旅行は、新型コロナウイルスの影響で中学校では全体の51.5%、高等学校で61.4%が中止されました(日本修学旅行協会調べ)。
行き先や期間などの内容を変更した学校は中学校で47・2%・高校で34・3%。多くの学校は出発時期・日数・行き先を変更しており、海外旅行を実施した学校は0件でした。
感染状況が少し緩和された2022年は多くの学校が修学旅行等の宿泊行事を実施する予定ですが、行き先や内容を今までとは大きく変更した学校も多いのだとか。
修学旅行は多くの生徒にとって、学校生活で1番とも言えるビッグイベント。 入学前に志望校の修学旅行について知っておきたいという生徒や保護者の方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、高校の修学旅行の実施時期や、人気の行き先、かかる費用、そしてコロナ禍を経ての修学旅行の傾向がどのように変化していくのかについて解説します。
1.修学旅行にいく学年や時期は?
高校の修学旅行は、何年生の時に実施され、どの時期に集中しているのでしょうか?
高校の修学旅行の実施学年
高校修学旅行に行く学年は、中学が3年時に行くのに対して大学受験勉強での影響などを考慮し2年生が圧倒的に多く、3年で実施する学校も、進級早々に実施する学校が多いようです。
中には、1年生で実施する学校や、全国の高校の中には「修学旅行を実施しない」学校も存在します。
高校の修学旅行の実施時期
2020年度に「日本修学旅行協会」が実施した高校の修学旅行の調査によると、10〜12月に修学旅行を実施する学校が全体の63.9%を占めています。
多くの学校が修学旅行を実施するのは、大学受験勉強が本格化する前の2年生、時期は気候がよく、クラスの仲も深まった夏以降が1番多いといえるでしょう。
2.修学旅行 人気の訪問先は?
私立高校だけでなく、公立高校でも修学旅行先に「海外」を設定する学校が増えていることが注目されていますが、高校の修学旅行で人気の行き先はどこでしょうか。
公立と私立で人気の行き先に違いはあるのでしょうか。
高校の修学旅行先トップ20
新型コロナウィルス流行以降、修学旅行先にも大きく変化がありました。2020以降と以前で「修学旅行の行き先」にはどのような変化があったのでしょうか。
《2019年度修学旅行先 上位20》
「公益財団法人日本修学旅行協会」が全国の国立・私立・公立併せ1149校に実施した調査によると、2019年では国内・海外を合わせた修学旅行実施率は 91.8%。
2月に新型コロナウィルスの感染者が出始めたことから、例年修学旅行を2・3月に実施していた学校が取りやめ、前年度より実施率が5.9 ポイント減少しました。
修学旅行先で1番多いのは「沖縄県」。
続いて「大阪府」「京都府」「東京都」「奈良県」。
順位の変動はあっても、8位までの人気の修学旅行先には3年間変化がありませんでした。
参考:https://jstb.or.jp/files/libs/3167/202106281519224390.pdf
《2020年度修学旅行先 上位20》
新型コロナ感染拡大の影響で、7割以上が中止になった2020年度の高校の修学旅行では、 東京、大阪、京都といった大都市圏を避ける傾向が見られ、訪問先で最も多かったのは「長崎県」で、2019年の8位からランクアップ。
他には「広島県」「北海道」「熊本県」といった地方が大きく順位を上げました。
参考:https://jstb.or.jp/files/libs/3336/202111040951248342.pdf
修学旅行で海外へ行く高校
「全国修学旅行研究協会」が全国の公・私立高校を対象に実施した「令和元年度全国公私立高等学校海外修学旅行実施状況」によると、 2019年に海外修学旅行を実施した学校は私立が455校。公立が443校にも上り、 私立高校だけでなく、多くの公立高校も海外への修学旅行を実施していることがわかりました。
海外の修学旅行先を「私立高校」「公立高校」で見てみましょう。
《公立高校の海外修学旅行先》
行き先の1位は「東南アジア」が34.8%と最も多く、中でも「シンガポール」が最多。 国別で1番多い行き先が「台湾」で、海外修学旅行を実施した公立高校の44.7%が訪問していました。続いて「北アメリカ」が10.4%でした。
《私立高校の海外修学旅行先》
行き先の1位はやはり「東南アジア」で27.8%。 国別で1番多い行き先が「北アメリカ」で、海外修学旅行を実施した私立高校の26.5%が訪問していました。
続いてオーストラリア・ニュージーランドといった「オセアニア」が16.7%。公立高校で国別1位の「台湾」は13.7%でした。
海外の修学旅行の日数は、公立高校では4~5日が多いのに対して私立高校は5~6日が多く、「10日以上」の学校も私立で47校、公立で4校もありました。
3.高校の修学旅行にかかる費用
意外に負担となる、高校の修学旅行の費用。 金銭的に行くことができない生徒がいるという理由で修学旅行自体を廃止している学校も存在しています。
国内・海外の修学旅行はそれぞれどれくらいが相場なのでしょうか?
意外とかかる?!高校の修学旅行
高校の修学旅行の総費用の平均は国公立で9万程度。・私立で12万程度。 行き先が海外の場合の平均は20万円程度です。
「平成26年度 都道府県・政令指定都市 修学旅行実施基準概要一覧」によると、 東京都公立高校の修学旅行費用については、国内の場合7万9800円以内、海外の場合9万5000円以内(燃油サーチャージ代を除く)と決められています。
また、旅行期間は96時間以内、海外の場合はガイドラインにより、安全・衛生・治安が良好な方面を行き先に選出すること、などの条件が一応存在するようです。
しかし、実際は修学旅行にかかる総費用がガイドラインを大幅に上回る学校も多く、国内で修学旅行を行った高校でも、全体の80%の高校で金銭的理由・健康上の理由などから不参加の生徒が存在しました。
公立と私立で費用の差はあるの?
多くの高校では、修学旅行の積立を入学と同時に開始。一度での大きな出費はなるべくないように設定されています。
しかし2019年度の調査によると、海外の修学旅行を実施している私立高校の全国の最高額は、訪問先がオーストラリアの60万円。
公立高校でも最高額はアメリカ本土が訪問先の42万円の学校もあり、こういった学校は参加は必須ではなく、任意とはいえ、家計の大きな負担となっているのではないでしょうか。
子どもが「経済状況のせいで、みんなが参加する修学旅行にいけない」という悲しい思いをすることがないように、学校選びの際に志望校の修学旅行先やかかる費用について、 さらには自治体からの補助なども調べておく必要がありそうです。
まとめ コロナ流行から修学旅行の傾向はどう変化する?
新型コロナウィルスの感染状況が多少落ち着いてきた2022年度は、修学旅行の実施を再開する学校がほとんどです。
しかし、いままで修学旅行を海外で設定していた学校に関しては、行き先を国内に変更したり、実施自体を取りやめる予定の学校も。
「日本修学旅行協会」が実施した調査では、修学旅行や、それ以外の海外教育旅行について「再開意向あり」と回答した高校はそれまで海外研修や修学旅行を実施していた学校のうち62.2%でした。
国内の行き先にも大きな変化が見られました。2020年度の訪問先では、2019年度に3位だった東京はランク外に、4位だった大阪は16位に下降しました。
新幹線や飛行機で東京や大阪を訪れていた学校が、都市部での感染拡大のリスクを避け目的地を近くの地域に変え、感染を避けて屋外での体験学習を取り入れる学校も増えました。今後は、自然の多い田舎や地方地域が訪問先として選ばれやすくなるのではないでしょうか。
海外修学旅行の廃止や、国内の訪問先の変更で、各家庭の修学旅行にかかる費用負担も減っていくのかもしれません。
「高校図鑑」では、各学校の修学旅行や海外研修制度について紹介しています。ぜひ学校選びの際に高校図鑑・教育図鑑インスタグラムを活用し、自分に、お子さんにぴったりな志望校を見つけてくださいね!