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先生に本当のことが言えない子どもたち
学校で、いつも暴力を振るう子がいました。ある日、クラスの子がその子に突き飛ばされて怪我をしてしまいました。先生が間に入り、事実を確認するために二人に話を聞いてくれたのですが・・・。
だんだん変わる話の内容
先生の質問はこうでした。
「あなたも“やめて”って手を出したよね?」
次に、
「叩いたのね?」
さらに、
「叩き合ったんだね。」
被害を受けた子は、これらの質問にだまってうなずくことしかできませんでした。
自分は叩き返したつもりはない。
だけど、やめてって手を出したことは事実――。
先生の言葉に引きずられて、まるで自分も悪かったかのような話になっていきました。被害を受けた子は「本当は違うのに。そんなことしていないのに。」と思いながら、何も言えなくなってしまいました。
そのうち、休み時間が終わりに近づきます。
(あ、休み時間に〇〇がしたい。)
(トイレにも行かなくちゃ。)
(もう時間なくなっちゃう。)
(先生、もう話終わりにしてよ・・・。)
焦る気持ちで、先生の質問にただうなずいていく。
「はい。はい。はい・・・。」
本当の気持ちを言えない悲しさ
子どもにとって、先生は大人であり、学校の中では絶対的な存在です。その先生が決めつけるような口調で話を進めると、子どもは「本当のことを言っていいのかな」と迷ってしまうと思います。「反論したら先生に嫌われるかも」「自分が悪者になるかも」と考えると、真実を言う勇気が持てなくなるのです。
家に帰ってから、その子は親にすべてを話しました。
「先生の言っていることは違う。自分は叩いていない。ただ、やめてって手を押しのけただけなのに。」と泣きながら訴えました。
この場合、親が我が子の言葉を信じるのは当然のことです。その子が「違う」と訴えるのであれば、それを信じ、守るのが親の役割だと思います。
もちろん、先生も忙しい中で子どもたちに適切な指導をしようとしているのでしょう。しかし、子どもが本当のことを言えない環境を作ってしまうことは、被害者をさらに傷つける結果になると思います。
私たち大人は、子どもたちの声にもっと耳を傾ける必要があると思います。話を無理にまとめたりせず、十分な時間と余裕をもって、子どもの気持ちに寄り添うことが大切です。そして、親も学校や先生と協力しながら、子どもが安心して真実を話せる環境を作ることが大事だと思っています。
子どもたちが「本当のことを話してもいいんだ」と思える社会を目指して、私たちも考え、行動していきたいですね。