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生野のまちに捧げるラブソング。

 生野区役所も、港区役所も基本的には自転車で通勤している。ただ、雨の日や予定がある日は電車で行く。

 音楽が好きなので、その時のヘビロテ曲がある。私が最後の数年間、勝手に「このまちのテーマソング」と決めて、生野のまちを歩く時によく聴いていた曲がある。

 特に桃谷商店街から横に折れて路地を歩く時、この曲を聴いていた。

 2019年に『ロケットマン』というエルトン・ジョンの伝記映画があって、そのサントラバージョンの「Your Song(君の歌は僕の歌)」が特にまちの空気に合う。

It's a little bit funny this feeling inside
(なんだか不思議な気持ちがする)
I'm not one of those who can easily hide
(僕は自分の気持ちを隠すのが下手なんだ)


 主演のタロン・エガートンが最初は静かに、少し不安げに歌い出す(映画の場面では、作曲しながら親友でもあり恋する男性に歌っている)。

 1分50秒ぐらいから伴奏の音が重なってくる。共に歩く仲間が一人、また一人と増えていくように

But the sun's been quite kind while I wrote this song
(この歌を書いている間、太陽の光がやさしく降りそそいでいた)

It's for people like you that keep it turned on
(これは僕を照らしてくれる君のような人のために、作った歌なんだ)

 この秋は、生野の懐かしい人に会う機会が多かった。共に困難を乗り越えた区役所の仲間、家族のように私を励ましてくれた地域の方、共に新しいことにチャレンジしてきた「いくのな人」たち

 曲がサビに差し掛かると、私は切なさと幸福感の入り乱れた想いでいっぱいになる。

I hope you don't mind, I hope you don't mind
That I put down in the words
(君が嫌でなかったらいいなと心から願うよ
 僕がこの歌詞にこめた想いを)

 自分がこのまちを少しでも変えようなんて、傲慢ではないのか。変化は全員にとっての「正解」にならないのは自明だ。でも、私は生野のまちの可能性を信じて、未来に向けて打てる手を全部打つしかない。

 私はあくまで通り過ぎるだけの人かもしれない。でも、このまちが好きだ。

 高い建物が無いのがいいのか悪いのかは横に置いといて、生野の空は広い。路地にきゅぅっと肩を寄せて暮らしてきた歴史があり、窓や家の前からこぼれそうな鉢植えが(行政的には指導しないといけないのだろうけど)季節を教えてくれる。

すでに「森」状態……


 帰り道は、こどもたちが公園で遊んでいたり、お年寄りが道ばたで会話を楽しんでいたりする。このまちには、人が生きている実感がある。だから私は「居場所と持ち場のあるまちへ」と5年間、繰り返し続けた。


「Your Song」の言いたいことは、この1フレーズに尽きる。

How wonderful life is while you're in the world
(あなたが存在するこの世界は、なんて素晴らしいんだろう)

「あなたと同じ時代に生き、同じまちで出会えて、心から幸せです」

もっと言うなら。

「この世に生まれてきてくれて、出会ってくれて、ありがとう」


 誰かが、生野のいちばんの財産は「人」ですよ、と言っていた。

 生野のまちでつながり、たくさん泣き、笑い、今も声をかけてくれる「いくのなみなさん」へ。

 あなたの瞳の色がどんな色だったか覚えていなくても、私はあなたが大好きです。


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 いつかこの小っ恥ずかしい文章を、どこかで伝えようとずっと心に抱いていました。

 もちろん、エルトン・ジョンの歌も素敵なので誰かに生野区の人たちの写真や映像でMV作ってほしいぐらいです(笑)。

 私の愛するまちへの、ラブレターはこれでおしまい。

 そして「港区のテーマソング」はなんだろう、と海辺で耳にイヤホンを突っ込みながら考えています。

 これから数年かけて、また港区を愛する人たちと出会い、つながり、見つけていくのだと思います。

 未来と世界にひらくまちへ。
 いざ、出航!