「未来志向のまちづくり」~H30年3月区政会議より~
学校再編と生野区のまちづくりについて、新聞記事などもろもろ出ています。学校再編にかかる、平成25年からの議論の経過はこちらにありますので、ご参照ください。
https://www.city.osaka.lg.jp/ikuno/page/0000475670.html
私が区長になった時には、数年間の議論の蓄積があった上で「再編を白紙に戻すべき」「早く再編をしてほしい」という対極の声がある中での、引き継ぎでした。
この語りは、区長になって1年、生野のまちについて学び、地域の方や保護者の方の声を聞き、この日の区政会議でもさまざまな声があった上で、最後の挨拶のつもりが勢い余って熱く語ってしまった内容です。
※議事録全文はこちらです。
https://www.city.osaka.lg.jp/ikuno/cmsfiles/contents/0000437/437376/13kaigiroku.pdf
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皆さんいろいろご意見ありがとうございました。ちょっとだけ、区長から話を聞くというよりは、4月に生野区に来ましてから1年間まちを見てきて、このまちはこんな課題があるなということも考えながら、まちを歩き、考えてきた外から来た人の意見として、聴いてください。
毎日、毎日、私のところにいろんな課題が持ち込まれます。小さいことで言うと、区役所の中でこんな事務のミスが起きましたというのもあれば、それこそ大きな「このしんどい家庭をどうしましょう」という相談であったりとか、様々な課題があり、区役所というのは一つの国ぐらいの機能があるなと思ってやっております。
〔万博誘致に励んでいたころの1枚。生野区住みます芸人の田津原理音さんと、生野区マスコットキャラクターいくみん〕
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その中で「伝える」って本当に難しいなと思ってるんです。陳情をいただいたとき(平成30年3月に学校再編に反対する陳情が出されました)に、それぞれの地域の皆様の顔を思い浮かべました。思いは痛いほど受けとめ ておりますし、私の言葉が足りなかった。説明が足りなかった、そういった場面もあったのかなと思って、まだまだ、これからでもお話もさせていただきたいとも思っております。
そこで、本当に客観的に、私はこのまちに使命を果たしにやって来ましたので、私の描く将来の姿というのを聞いてもらえるとありがたいです。
(平成30年)1月14日にこういった別冊の雑誌が〔会場に見せながら〕、ダイヤモンド社から『伸びる街&地域活力ランキング』という本が出ています。
関西54のランキングをちょっと期待しつつ見てみました。
伸びる街のランキングずっと見ていくと、1位は大阪市の中央区、2位が大阪市の西区、3位が北区、4位・浪速区、5位・天王寺区、6位・福島区、あとは草津とか、 神戸とか、いろいろ入って、次が阿倍野区、淀川区が20位ぐらいに出てきて、ずっときて都島が30位ぐらいに入ってきて、あれ出てこないな。 39位鶴見区、あれ出てこないな、45城東区、47東成区......生野区、きたかなと思ったけど、出てこなかったんです。とても寂しかったです。
(雑誌に)大阪市のこういう地図が載っていたんです。
これ人口が増えてるところが赤かったり、オレンジだったり、黄色だったりします。人口が減っているところが青だったり紫だったりします。
生野区はマイナス1からマイナス2%の人口減少地域になっています。真ん中見たら真っ赤なのがわかるとおり北区、中央区、西区、確かに今、高層マンショ ンが建ってどんどん増えています。急増問題があります。
それがじわじわ周りに広がってきて浪速区、天王寺区、福島あたりが 増えてきて、今は都島、そして東成、城東、鶴見にはいってるのに生野にその流れがきていないんです。
生野の人口動態をよく見てみますと、 高齢の方がどんどん亡くなっていくのに対してこどもが少ないので、 どうしても少子化なんです。本当はもっと減りは激しいはずです。
ほかの区のこというたら記録残るからあれなんですけど某区は、本当にマイナス5%の勢いでどんどんどんどん減っています。生野区のこの「下げ」をある程度止めているのは外国人、ニューカマーの方の人数がかなり寄与している部分があります。
こういった本があります。『新移民時代』という本です。
北九州や福岡の方がかなりベトナム、ネパール、ミャンマーいろんな国の留学生がたくさん来て、もちろん労働者もたくさん来て、まちの人口の有様が変わってしまった。
それに対して行政としてどういうふうにしなければならないか、地域もそれを受けとめてどうしなければいけないかということを、西日本新聞社が各国にまで飛んで取材をして調べたものです。
ミャンマーとかネパールには貧困、いわゆるあまり経済状況がよくない若者がいます。彼らに対してブローカーが売り込みをかけます。日本に留学しないか。こんだけ借金したら行けるよ、行ったら週28時間働いて、その借金は1年ぐらいで返して、2年、 3年とあとはお金を仕送りができるよと夢を乗せて連れて来ます。
一 応日本語のそこそこの能力を身につけてから日本に来なければならないにも関わらず、そういった指導はあまりされていません。
※注:当時に比べて、入管法の改正もあり改善の方向に向かっています。
もしかしたら生野にいる若い人たちも、向こうで経済的にしんどくて、でも日本 夢を見てやってきて、そして安い賃金で夜中のコンビニであるとか、 飲食店で働かされている、ひょっとしたら夢を持っているのに、何でこんなとこ来ちゃったんだろうと、思ってる若者かもしれない。
そういった若者はちょっとしたことで、やはり犯罪のリスクの中に入っていきます。実際ベトナム人の若い人たちが口座をつくって、それを買うというのがネットで取引されていまして、オレオレ詐欺であるとか、そういったものに使われているというような現状もあります。
こういったことも生野に来てからたくさん本を読んだり、講演に行ったり、調べたり、当事者に会ったり、勉強しました。
〔区内の日本語学校(健全な経営の学校です)と協定を結び、授業に参加させてもらいました。中国やベトナムからの留学生が多いです。〕
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生野区には日本の最先端の課題が詰まっています。これから、恐らく全国的に課題になってくる少子化の問題、そして空き家の問題、そしてこういった移民政策をとってないんだけれども増えてくる外国の人たちの問題、そういった問題があります。
私はいつも課題を、課題解決だけじゃなくって、こうありたいという未来から逆算して、今やるべきこ とをやろうと考えています。
私は「未来は今」という言葉をものすごく大事にしています。
未来は今やることによって結果が生まれ、そういう未来になるんですよね。だからオリンピック選手になりたいと思ったら小っちゃい頃から、そのために何をやるかみたいなことを積み重ねていくわけなんです。未来は今、だから、今は過去がつくってきたものなので、それをいろいろ恨み節を言ってても仕方がないとは思う んです。
例えば、日本の少子化をつくったのは、私たち団塊ジュニア40代、 それから30代後半から45歳までの私たちに安定した生活と安定した雇用とこどもをたくさん産んで働ける環境をつくってくれなかった誰かのせいです。
その誰かを恨んでても、しょうがないんですよ。
今あるのは確実に二度とこどもは増えない、出生率が多少上がったところで産む人間が減っているのだから絶対に、今の日本の女性の数から考えて、これから人口は増えないという容赦ない事実と、じゃあ、そこに対して国はどうしていきますか。大阪市はどうしていきますかということを問いながら、生野区で今起きている課題にも対応しつつ、みんなで一緒に若い人たちが生野区に住んでくれるか考える必要があります。
〔2年前に作った「生野区シティプロモーション戦略」の資料より〕
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ニューカマーの人たちも、若い人たちなんですよ。
その20代の外国の人たちは、まちの力になって防災であったり、防犯で活躍してくれたり、一緒に仲間になってくれたり、そういったまちというのを私はやはり在日の方と長い歴史を持っている生野区だからこそ、きっとできたり、考えられたりすることもあると思って、「多文化共生」という言葉を発信しています。
〔生野区には人口12万7000人のうち、在日韓国・朝鮮の人たちが2万人以上います。韓国料理や音楽などは、生野の文化の一部となっています。〕
そして空き家対策は、生野区に大きな土地がぱかんと空いて、高層マンションが建つんだったら、もしかしたら、ちょっとはこの中央の人口の集まりを引っ張ってくる可能性はあるんですが、(厳しい現状があるので)「戸建て子育てキャンペーン」を一生懸命やって、一生懸命やっても現状維持か微増ぐらいではないかなというのが私の予想です。
全ての町会の地図を手元に持って、蛍光ペンで空いてるところを一生懸命塗ったりとか、いろいろやってるんですけども、そういったことをやっていっても、やはりこれから特に2025年以降、一気に人口が減ってく中ではそうそう長くは持続しないという課題意識ももっています。空き家対策も、とにかく頑張っていかなければならないと思っています。
〔戦争で焼けていないので、長屋率や流通に乗らない空き家率は、全国でもトップランクです。それが、まちの「一周まわって新しい」魅力にもなっています〕
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生野っていいまちです。
例えば、ちょっと保育園に入りやすいです。 実はそうじゃないというご指摘も幾つか部会の中であって、努力はしてるんです。若干、最近入りにくくなってる年齢もあるんですけど(※注:0.1.3歳は年々厳しくなり、とにかく第6希望まで書けるだけ書いてもらっても入れるかどうかのケースが増えました)
まず生野区に保育園入りやすいから、とりあえず借家で住もうかって引っ越して来ます。安いですからね。わりと職場や繁華街も通いやすい。
お母さんたちに言わせると、自転車であべのハルカスに行ける。多分、自転車10分圏内でどこの駅にでも、近鉄でも、地下鉄でも、どこなとに着く、そういう意味では若い人にとっては利便性がある。
そういった中で1回、子育てをする。そこで、地域の皆さんが活躍して ほしいんですが、地域の子育てサロン、地域の活動そういった中で「お子さん大きくなったね」とか、声かけていただいて、地域に見守られて子育てしていく。これは高層マンションでの暮らしではないよねって、 高層マンション悪く言ってるわけではないですが、生野っていいよね って気持ちにだんだんなってきて地域に友達もできます。
〔地域の会館を使った子育てサロンの例。私も4年以上、地元で子育てサロンのボランティアをしており、近所で挨拶する親子が増えた〕
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そしたら、 さあ家買おうかなってなったときに、「あれ?小学校どうなんねんやろう」というふうになったら、先ほどおっしゃっていただいたとおり、そこで躊躇する部分というのはあると思うんですね。実際あります。私も子育て世代です。
そこで、やはり何年に、こういう学校ができます。 こんな内容でいい学校をつくります、という絵姿を早く示したいとい う思いがあります。そして、やはり、生野のまちのイメージというものが、ほかのまちから見たときに決していいわけではない。
それは生野区のシティプロモーション会議のときにもそんな話になりました。そのイメージを変えるために私は広報紙に力入れたり、シティプロモー ションとかにも力を入れようと思っていろいろ取り組んでいます。
官民連携のまち情報サイト「いくのぐらし.com」
https://ikunogurashi.com/index.html
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生野ってええやん、人のつながりの中で子育ていいやん。戸建てで子育て っていいやん。学校ようなるらしいで、だんだん何かまちのあちこち で工場とかの体験とかさせてくれて、なんか本当にこどもよう見てもらえてええねん、というのがだんだんと塊になって、そこに、BRTであるとか、交通の便がよくなってきて増えていく。
BRT「今里ライナー」が2019年4月より、5年間の社会実験として走っています。
https://brt.osakametro.co.jp/route/index.php
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空き家対策 でどんどん戸建てに建て替わって、そして利活用も含めて生野の暮らしを、「いくのぐらし」を楽しむ人たちが増えくる。
気がついたら、まちに活気が出てきたな。若い人増えてきたな、という生野のまちにならへんかなというのが、私の思ってる夢です。夢ですというか、もちろん、きっちりそこは数字であるとか、絵を描いて努力をして、今やるべき打ち手を打とうと思っています。
長々と話しましたが、区長が言ってるとなると「あれしてくれるのか、これしてくれんのか」とか、ちょっと約束とか、 そういうことになってしまうんですけど、外から来た子育て世代として、シンプルに日本と大阪と、そして生野区というものを客観的に、いろんな勉強もしながら見た上で、私が描いてる絵としては、やはり今、目指してる方向、将来ビジョンでお示ししたような方向で区政3本柱(教育・子育て環境の充実/空き家対策/多文化共生)を進めていくことが、まちの未来につながっていくのではないか なと思っています。
もちろんそこには、皆さんの意見をいろいろ、区長はそう言ってるけど、こういうとこもあるでとか言っていただきながら、私もそれに耳を傾けながら何とか、10年後ぐらいにしかきっと、今言ってることはわからないかもしれないですけど、「気がついたらそうなってたな」となることを私は心から願っています。
そのために職員一同、心を一つにしてやっていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
今日はいろんなご意見ありがとうございました。
(2018年3月10日 生野区区政会議全体会の終わりの挨拶にて)