改正刑法を素材にした問題
こんにちは。かいとの社会科アカウントです。
今回は、六法発売にともない話題となった改正刑法を素材に、問題を作成してみました。
問題は以下の通りです。
次の文章を読み、後の問いに答えなさい。
A:この間、⑴刑法の改正が話題になっていたね。「拘禁刑」っていうんだっけ。あれはどういうものなの?
B:拘禁刑は従来の懲役刑と禁錮刑を一本化するものなんだ。
A:どうして一本化することになったのかな?
B:従来の刑法では、懲役刑を「刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる」(刑法第12条第2項)とする一方で、禁錮刑を「刑事施設に留置する」(刑法第13条第2項)と規定していたんだ。つまり、懲役刑では労役義務が科される一方で、禁錮刑では労役義務が免除されるというわけだね。そして、一般には破廉恥犯(道義的にも許されない犯罪)に対しては懲役が科され、内乱罪や過失犯のような道義的に責を負うものでない犯罪、つまりは非破廉恥犯に対しては禁錮を科していた。しかし、この二分法はもはや一昔前のものとなって、過失犯のような非破廉恥犯に対しても懲役刑を科すような実体があった。さらに、労役の有無が懲役/禁錮を分かつ点であると説明したけれど、禁錮を科せられた者も結局は労役に就いた。刑務所のなかではやることがないし、作業報奨金を得ることができるからね。
A:なるほど。懲役と禁錮という区別が不要になったから拘禁刑という法律ができたんだね。
B:そうだね。ちなみに、⑵憲法にも「拘禁」という言葉が出てくるんだ。
A:そうなの?
B:第34条には、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、拘留又は拘禁されない」とあるんだ。ここでの拘禁というのは、刑務所や留置所問わず、身体を拘束するって意味なんだ。拘禁刑はそうした拘束をする刑という意味で、自由刑の一つとしてのニュアンスをより強めているとも考えられるな
A:へー難しいね。でも刑法や犯罪ってテレビや新聞で見かけるし、私たちの平和な生活を守るものでもあるから、⑶今回の刑法改正以外にも刑事司法に興味を持っていきたいな。
問1. 下線部⑴に関連する文章として適切なものを一つ選択しなさい。
ア.刑法は道徳的慣習に基づくものであり、自然法の一つである。
イ.刑法は私人間の関係を規律することを主な役割としており、私法の一つとして分類される。
ウ.刑事訴訟法は公法のなかの手続法に分類される。
エ.刑事事件とは、刑法の適用によって処罰される事件であり、弁護士によって起訴されて、刑事事件法によって手続きが進められる。
問2. 下線部⑵に関連する文章として適切なものを一つ選択しなさい。
ア.日本国憲法第82条には、裁判の対審及び判決は、原則として非公開で行う旨の記載がある。
イ.尊属殺重罰事件は、刑法200条の規定は合憲であると判断した。
ウ.最高裁判所は、憲法解釈をめぐる争いに対して判断を下すことから、「憲法の番人」
と呼ばれる。したがって、一般に下級裁判所は違憲審査権を有しないとされている。
エ.日本国憲法第76条では「行政機関は、終審として裁判を行ふことはできない」と定め、行政裁判所を廃止した。
問3. 罪刑法定主義とは何か。以下の語句を用いて、100字以内で説明しなさい。
犯罪 刑罰 法律
問4.2022年6月17日に公布された改正刑法では、本文中の懲役と禁錮の一本化による拘禁刑が成立した。同改正では、深刻化するインターネット上での誹謗中傷に対応し、【 】罪の法定刑が引き上げになった(厳罰化された)。【 】にあてはまる語句を、漢字二文字で答えなさい。
いかがでしょうか。高校生が解くには少し難しい内容だと思いますが、例えばこれを授業後の復習教材として扱うのであれば、ちょうどよいかもしれません。解答解説はここでは載せないでおきます。後日、何らかの形で掲載しようと思います。
ではまた。