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【本】駐在家族はたぶんすごく頷ける葛藤

普段あんまり帯で惹かれることってないのですが、「浮気も裏切りもないのに…史上最悪の夫婦小説」という帯のコピーと『ウィーン家族』という、美しい装丁の一見華やかなタイトルのコントラストに思わず手に取った本。

簡単なあらすじを書きますと、ウィーンに研究留学で滞在する大学教授と家族(妻、息子)の歯車が、妻の若干軽率な行動による骨折を期に、かけちがうようになり、家族としてお互いに甘えたくてもうまく甘えられず、相手を試すような行動ばかりをとってしまい、どんどん追い詰められていく…というような話で、哲学者である中島氏の私小説とも言われています。

確かに、誇張なく最悪な夫婦関係なのですが、お互いに求めてしまうばかりで、よかれと思ってやったことさえ受け入れられず、さりげない気遣いをすることが嫌になる、そういうシーンって海外で家族として暮らすと大なり小なりあって、なんだかすごくよくわかるなぁと思いながら読みました。

この大学教授は、それを生い立ちから「妻を愛せないのは、家族愛を持ち合わせていない」せいと思い込むのですが、そういうこととは別に、生まれ育った国を離れて生活することは、これまで頼ったり、頼られたりしてきた人々と離れて、家族の中で頼ったり頼られたりすることで、その負荷って特殊なものな気がします。

この話自体は、家族うまくいかないのはなぜか…という方にだけひたすら向いていて、最後まで救いようがないのですが、身に覚えのなくはない家族のあり方が客観的に見られて、個人的に記憶に残る本になりました。特に駐在・転勤関わらず、ゆかりのない場所で家族で生活する人は共感されるのでは?と思います。




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