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【小五と読書】ホームドラマのおかしみ全開

核家族を超え、お一人様の家が増えた平成の時代に大家族…?

舞台は、退職し平穏を愛する歯科医とその妻、そして高齢の妻の母と、実は引きこもりの三十代長男が見て見ぬ振りされて早10年、という家庭。

すでに長女は家を出て、元証券マンでIT 会社社長と結婚し、息子は難関中高一貫校に入学。次女は、新聞記者と結婚して、バリキャリと、順風満帆。しかし、相次ぐように彼女たちの輝かしい肩書がガタガタっと崩れ、みんな舞い戻ってきて引き起こされるホームドラマ。

次から次へと明るみにでる「あちゃー。。」な出来事も、続けざまに起こること自体に「そういうことってあるよね」というおかしさがあるし、それぞれが間違った方向に突っ走ったり、飄々とやり過ごしたりで、「他人事ではない」という気持ちと「そうはいっても他人事」との間で楽しく読めます。

いやらしくはないものの、ラブホテルでの情事、産婦人科での内診の話などもあり、一旦娘には読ませずに返却。もう少ししたら読ませてもいいかなとおもいます。

底を流れるコミカルな明るさは、向田邦子氏の『阿修羅のごとく』を彷彿とさせました。このお話も、テンポがよくシリアスなことがシリアスじゃなかったり、その逆だったりが、楽しく好きな小説です。

代わりにといってはなんですが、娘には、中島京子氏の中から以前読んだこちらを。

アルツハイマー病に犯される父と、その妻と三人娘の話。軽快な文体はそのままに、リアルな介護生活とその心の有り様が、染み入るように伝わってくる作品です。

加えて、私も三人姉妹なのですが、その姉妹の描写が「我が家を覗いて書いたんじゃないか?」というほどリアリティがあって、別の自分のいるパラレルワールドが広がっているかのような気がしました。

娘は、アルツハイマー病の話を読んだのは始めてで、なんて悲しい病気なんだ、と思ったよう。本を通して擬似体験することが小説の醍醐味ですし、これは買って手元に置いておきたいです。

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バイリンガル育児中、2児ママの本棚
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