語学学習サービスを解説! - 3つのトレンドと注目サービス | 中国EdTech #4
この記事は株式会社BEILリサーチブログにて 2019/09/06 に公開した記事を移行したものです
第4回では、英語学習サービスを中心に、語学学習分野について解説します。
まず、全体的な傾向を説明し、その後、語学学習分野の中ではどのようなサービスがあるのか、大きく4つのグループにまとめてマッピングして解説します。
同時に代表的なサービスの内容を紹介していきます。
今回扱うトピック
・語学学習サービスのポテンシャルと3つのトレンド
・語学学習サービスを4つに分類して紹介
・今後の展開
中国の語学学習サービス
幅広い世代に向けた語学学習サービス
中国では留学人気などを背景に、語学学習は一つの大きな分野を形成しており、0歳〜就学前の幼児から成人まで全世代を対象に様々なサービスが存在しています。
内容としては、ペーパーテストではなく、会話やリスニングをメインに据えたものが大半を占め、対象年齢に応じて形態が異なります。
この記事では大きく4つに分けて紹介していきます。
なお、ここでは、K12を対象にした学校の試験や受験対策用の英語学習サービスは扱いません。
※ K12に関してはこちらの記事で解説しています
市場規模と成長のポテンシャル
下図は年齢ごとに表示した英語学習分野の市場規模の推移です。これをみてもわかるように、特にK12を対象にした英語学習サービスが増加傾向にあることがわかります。
その原因は大きく二つの要因が考えられます。
一つが英語圏を中心にした留学の人気です。
億欧智庫の予測によると、中国人留学生数は、2017年には約60万人、以後も5%の増加率を保ち、2020年には66.9万人に達します。
さらに一帯一路政策の推進とともに、“一帯一路”沿線国家への留学も増加傾向にあるといいます。また同じく億欧智庫によると、高校からの海外留学も増加の傾向にあります。
ちなみに日本人の留学者数を比較すると、文科省の報告では2017年は短期のものも含めて10.5万人、一年以上の留学は2000人強に止まります。
もう一つが中考・高考(中国の高校試験・センター試験)改革の影響です。
2017年から始まった中高考の改革で、高校・大学受験における英語のスピーキングとリスニングの重視の影響も、K12や就学前の英語教育を後押ししています。
語学学習サービスの3トレンド
中国の語学学習サービスの大きなトレンドを3つ紹介します。
一つ目は素質教育化です。第2回の記事でも紹介しましたが、中国では一般に応試教育(テストのための勉強)に対立する概念として「素質教育」という言葉が使われます。語学学習サービスの大きなトレンドとしては、テストに備えた勉強という形から、スピーキングやリスニングなど、より実践的な力を育むことを中心としたものが増加しています。
二つ目は外国人教師主導型です。日本の英語学習サービスで言えば、レアジョブなどが分かりやすいですが、中国の語学学習サービスも、オンライン上で外国人の教師と学習者をマッチングして授業を行うものが主流です。似たような形式のサービスが増加する中で、外国人教師の出身国や教師レベルなどによって値段が異なってきます。
三つ目は学習者の低年齢化です。成人向けのサービスが飽和状態になる中で、新たな市場として0歳から小学生低学年までを対象にした、サービスが増加しています。日本でも早期幼児教育サービスは存在しますが、一人っ子政策などを背景にした教育熱を後押しに、ますます学習者の低年齢化が進むと考えられます。中国EdTech 語学学習分野サービスまとめ
語学学習サービス分類図
中国EdTechの語学学習分野の代表的なサービスをまとめてみました。
語学学習分野では、大きく分けると
・0歳から小学生低学年までを対象にしたビデオ学習教材
・K12〜成人向けオンライン家庭教師型英会話学習サービス
・K12向け双師授業
・成人向けのオンライン講義型の語学学習サービス
の四つの形式に区別されます。
幼児向けビデオ学習教材
幼児向けビデオ学習教材は、主に0歳〜就学前児童/小学校低学年を対象にしたサービスです。教師と一対一で授業をするのが困難な年齢の生徒を対象にしているため、主なコンテンツは数分〜10分程度のビデオ教材やアプリを使った童謡や絵本、あるいはフラッシュカード、発音練習などとなります。
・代表的なサービス: 宝宝玩英語 / 宝貝英語説 / 叽里呱啦 / Dadababy / 酷学多納 など
・ 価格: 無料のアプリから、月額サブスクリプションのものまで
サービス例: 酷学多納
酷学多納は、教育大手の新東方のサービスで、 幼児向け英語学習アプリ、幼稚園向け教材、図書館と提携したオンラインの幼児教育教材、そのほかにも幼児教育用の教材の出版や、幼稚園児〜小学生を対象にした外国人教師のオンライン家庭教師サービスなどがあります。
幼児向け英語学習アプリに関して言えば、外国人教師の授業動画や、童謡、絵本などを提供しています。内容は無料で閲覧できるものも多いです。オンライン家庭教師サービスになると、1授業100 元程度と、下の項目のサービスと同じくらいの値段になります。下の画像はそれぞれ外国人教師の授業動画と絵本の選択画面です。
出典: 搜孤
参考: 酷学多納 HP
K12〜成人向け英会話学習サービス
これは、K12と成人を対象にした英会話学習サービスです。オンライン上で教師と生徒が一対一で授業を行います。多くのサービスは、外国人教師と中国人生徒のマッチングを行なっています。
・K12向け代表的なサービス: VIPKID / 51talk / 哒哒英语(DaDa) / vipJr / 新東方多纳 / 学而思VIPX / 阿卡索外教網 / 粉笔Kids など
・成人向け代表的サービス: 51talk / Hitalk / TutorABC
・価格: 1授業あたり15元程度から100元まで
サービス例: VIPKID
VIPKIDは中国EdTechのユニコーン企業の一つで、北米の教師によるオンライン家庭教師型の英会話サービスを展開しています。
対象は4~5歳で、一回の授業は90~130元と比較的高価格です。また4万人以上の外国人教師を擁しており、AIによりマッチングを行います。
授業形態としては、
予習動画(3~8分)→1対1ライブ授業(25/50分)→オンライン課題(5~25分)
という流れになってます。
下の画像はPR動画の授業風景です。PCの画面上に問題が映る部分と、教師・生徒のビデオ通話ができる部分に分かれています。
出典: VIPKID
サービス例: 学而思VIPX
学而思VIPXは、教育大手の好未来が展開するサービスです。
対象は幼稚園〜中学生で、VIPKIDと同様に北米の教師によるオンライン家庭教師型の英会話サービスを展開しています。
学而思VIPXがVIPKIDと異なる点が二つあります。
一つは英語で文学を学ぶ授業など、より素質教育を意識したコンテンツになっていることです。授業形態は
予習動画(10-15分)→1対1ライブ授業:文法(40分)→1対1ライブ授業:文学(40分)→復習(10分)
という形になっています。
もう一つは教師の雇用システムの違いです。学而思VIPXは時給制となっており、授業をするしないに関わらず、一定時間授業をできる時間を確保すれば時給が発生する仕組みになっています。一方でVIPKIDなど多くのサービスは成果報酬制をとっており、授業をした分時給が発生する仕組みになっています。オンライン家庭教師型の語学学習サービスが増加する中で、教師側へのサービスに差をつけることで、優秀な教師を囲い込む戦略も必要となっています。
・ 参考: 学而思VIPX HP / サービスPRムービー
双師授業
語学学習分野でもライブストリーミングのオンライン講義とオフラインの指導を組み合わせた、双師授業のサービスが出てきています。
ライブストリーミングで外国人教師が授業をする間/後に、オフラインの補助教師が生徒の学習の補助を行います。
またこのグループはさらに3つの種類に分けることができます。
(1) toC向け
顧客に対して自社の教師による授業を行うもの
代表的なサービス: USKid / 博根英语
(2) toB向け
企業・教育機関に双師授業のサービスプラットフォームを提供するもの
代表的なサービス: USKid / 外教易 / 清成教育
(3)公立学校向けサービス
toB向けのサービスの中で、特に公立の学校に自社の外国人教師による授業とICTツールを提供するサービス
代表的なサービス: 楽学习 / 微語言 / 学邦在線
サービス例: USKid
智課教育の提供するUSKidは3〜12歳向けのオンラインアメリカ人教師+オフライン中国人教師の授業を行うサービスです。オフラインの教師は学習計画の制定・管理を務めます。授業内容としては、6人ほどのグループで、英語の童謡やフォニックス、作文などを行います。
また同様授業を展開するための学習ツールプラットフォーム、中央内容厨房と智能教学システムを幼稚園や教育機構に提供しており、すでに2000件の共同事業を行っています。
下の画像は樹湾校区の塾での実際の授業風景です。
出典: 未来网
参考: USKid HP / PRムービー
成人向けオンライン講義
大学生・成人向けの語学学習サービスは、主にオンライン講義の形をとり、その中でも主に二つのサービス形態があります。
学習動画プラットフォーム
K12教育分野でも登場したサービスとほぼ同じです。主にインターネット大手企業が展開しているサービスで、発信力のない教育機構や個人と学習者を結ぶプラットフォームを提供します。
語学学習分野に限るわけではなく、K12教育分野、成人教育分野など、幅広い分野をカバーしています。
・代表的なサービス: テンセント傘下の腾讯課堂 / 沪江傘下のCCtalk
・価格: 無料〜(個々の教師による)
オンライン講義
ライブストリーミング / 録画の授業で教師の授業を複数人の生徒を対象に配信するタイプです。
・代表的なサービス: 新东方在线 / 沪江网校
・価格: ばらつきが多いですが、一学期2000元~5000元するものなど、成人向けは比較的高いです。
今後の展開
まず今後の展開方向として一つあげられるのが、地方への広がりでしょう。優秀な教師が不足している地方では、学習におけるオンライン教材の使用が、ますます重要になってくるでしょう。
またオンラインサービスが増加する中で、学校との連携も一層進んでいくでしょう。特に受験で英語のリスニング・スピーキングが重視されるようになる中で、外国人教師の授業を実現することは、個人だけでなく学校としても重要な課題になっていくでしょう。
参考
・億欧智庫「把握未来五年英语教育新風口」
・文部科学省「「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について 」