小野成志(Seishi Ono)

大学の経営,情報システム構築,国際交流などのコンサルティングを営んでいます.

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最近の記事

大学DXのガバナンスと監査―衰退する日本と監査人の仕事

要約日本が、世界の中で存在感を失い衰退に向かう中で、日本の私立大学は、今後一層難しい経営局面を迎えることになる。それに伴い、大学の監査人の意義と役割は、大変重要なものになってゆく。ただ、そのことは同時に、監査人が厳しい立場に追い込まれる場面に遭遇することにもなることを意味している。その結果、例えば、大学の監査人が監査上の見解相違を事由に辞任するケースも生まれてくる。こうした場合でも今の制度上は,退任監査人による意見表明の機会が十分に与えられているわけではない。その結果、監査人

    • 続:ポストコロナの大学ーテレワークで生き残りをかける

      1 私立大学経営はレジリエンスからレジームシフトへ1.1 私立大学のレジリエンスレジリエンスという用語は、元々は18世紀頃の物理学分野で「復元力」という意味で使われ始めたようである。しかし、今日においては、レジリエンスは「環境変化に対する耐性」という意味で使われている。その適用分野は広く、最初は生態学で使われていたものが、やがて、災害のような社会事象から看護における個人的な事象に至るまで様々な領域で用いられるようになった。 日本の大学のレジリエンスについて言えば、日本の私立

      • 大学におけるランサムウエア対策とその監査

        日本の大学がランサムウエアに狙われる可能性が高くなっている。重要なファイルは適切なバックアップを行い、被害に遭った場合のリスクマネジメント計画を構築しておくべき時が来ている。 ※このノートは2021年11月21日に行った講演の一部をメモにしたものです 1 はじめにランサムウエアは,身代金請求型のマルウエアであり、組織内に侵入したマルウエアがファイルを全てロックしてしまい,その解除のために金銭的要求を行う. アンチウィルスソフトなどの水際対策はほぼ回避されてしまうため,侵

        • ポストコロナの大学ーオンライン授業がもたらす大学の変革ー

          オンライン教育は大学経営の鍵であり、同時に、高い教育効果もあげることのできる仕組みである。ポストコロナにおいては、大学経営では重要な位置を占める事になる。このため、オンライン教育の監査は,今後の大学監査にとって欠かせない要素になる. ※このノートは,2021年10月12日の講演のメモである. 1 レジームシフトを迎える大学新型コロナウィルスのパンデミックは、終わりが見えないまま2年を経過しようとしている。しかし,レジリエンスの観点からすれば、大学は、この時期こそパンデミッ

          大学のレジリエンスとDX ―この世界でどのように監査に取り組むか―

          現代は、VUCA時代と言われている。このため,VUCAに対する監査のフォーマルさが、組織の正しいあり方を示す基準にもなりうる。レジリエンスとDXの監査は、そうした新しい時代の監査の効力を問われる監査となる。 ※このノートは2021年7月13日に行った講演のメモである.  1 パンデミックとレジリエンス全世界を襲った新型コロナウィルスパンデミックは、あらゆる組織に大きな爪痕を残しており、大学を含め今やどのような組織においても、このパンデミックからの脱却が求められている。レジ

          大学のレジリエンスとDX ―この世界でどのように監査に取り組むか―

          大学におけるDXガバナンスと監査

          DXは,ITが価値を生み,組織にたいして大きな貢献を行うものとなることを求めている.大学では,ITは、業務合理化のためや教育の必要に迫られて導入するものであった.DXを意識するとき、大学のITは、ガバナンスによって大学に価値をもたらすものへと変わらなくてはならない。 ※ このノートは, 2020年10月30日に行った講演のメモである. 1 日本のITの厳しい現実 大学関係者に言わせると,大学のITガバナンスは日本の企業に比較して遅れているのだそうである.しかし,周知のよ

          大学におけるDXガバナンスと監査

          大学が本当に欲しかったものの監査

          業務系情報システムは,しばしば「本当に必要だったもの」を見失ってしまうシステムである事が多い.監査は,業務のために本当に必要なもの見いだすことができる可能性がある。「本当に必要もの」の発見のためには,情報科学の知識よりも,「倫理的、知覚の鋭さ、適応特性、粘り強さ,不屈の精神、決断力、自律的、改善に対する前向きの姿勢、文化に対する敏感さ」などがの監査人の力量が必要だからである。 ※このノートは,2020年6月25日に行った講演のメモである.  1 日本のITの厳しい現実日本

          大学が本当に欲しかったものの監査

          大学業務系情報システムの内部監査

          監査人は,しばしば自身のICTのスキルに自信が無いことから,情報システムに関して監査の対象から外してしまうことが多い.しかし,経営的な観点から見た場合に助言できることは数多くある. ※このノートは,2019年10月17日に行った講演のメモである 1 内部監査とシステム監査大学の業務系システムの監査は、学校法人の特性から見て標準的なシステム監査手法には不十分な部分があり、大学の業務系情報システムの評価をする場合において検討すべき部分は多い。 周知のように,内部監査は,IS

          大学業務系情報システムの内部監査

          働き方改革法と人事部門の監査

          働き方改革法は,非正規雇用の労働者の保護と経営側の説明責任などについて経営者側に大きな責任がある.監査人は,これらの対応のための取り組みが適正に行われているか,また,働き方改革のためにどのような内部統制システムの構築が行われているかを監査する必要がある. ※このノートは,2019年8月2日に行った講演のメモである.  1 労働法の性格と働き方改革法案労働関係諸法は、他の法律に比較して法理すなわち判例により運用を判断しなければならないところが大きく、法令の他に判例に十分な注

          働き方改革法と人事部門の監査

          大学の内部監査における人事監査

          人事は経営に近いため聖域とされ,監査人の手の及ばない部門である事が多い.しかし,働き方改革の中で,人事も新たな課題を抱えており人事部門の監査は,助言を必要とする人事にとっても重要な意味を持っている. ※このノートは,2019年1月16日に行った講演のメモである. 1 内部監査における人事監査内部監査は,ISO19011のマネージメントシステム監査で標準的な手法が確立している.それによれば,マネジメントシステム監査の原則は,(1)高潔さ(Integrity)(2)公正な報告

          大学の内部監査における人事監査

          大学の人事監査

          ”Audi et alteram partem.”(他の人の意見も聞きなさい)は,監査の原義であるが,人事部門の業務監査の要諦は、 この原義に立ち返り利害関係者の話を「良く聞くこと」が大切である. ※このノートは,2018年8月7日に行った講演の概要である. 1 大学における人事監査の特性大学の人事部門の業務監査は,財務等における業務監査とは異なるアプローチが必要になる事が多い.コンプライアンスについて言えば,財務部門においては,法令遵守は当然のこととした上で,さらに,内

          大学の人事監査