初めての登山は筑波山〜山と僕Vol.2〜
恋の山筑波山
登山らしい登山としては、おそらく筑波山が初めてだと思う。
男体山と女体山からなる筑波山は、恋の山として知られている。
古くは「歌垣(うたがき)」とよばれる、今で言う合コンの会場にもなっていた。
筑波嶺(つくばね)の峰より落つる男女川(みなのがは) 恋(こひ)ぞつもりて淵(ふち)となりぬる
最も思い出深い筑波山三行は、嫌がる幼いセガレを連れ出し、2回ほど女体山に登ったことだ。
その頃はフルマラソンで結果を出そうと割と走り込んでいたこともあり、脚には自信があった。
父とは偉大であることを知らしめようと、無理やり連れ出されたセガレ、本当にすまぬ。
1回目の山行はケーブルカー沿いの御幸ヶ原コースを登った。
距離は短いが斜度があり、本格的な登山道である。
ランで鍛えているからといえ、登山経験がない私でかなりキツかった。
幼いセガレはよほどキツかっただろうと思う。泣きながら登っていた。
そして、中腹まできた頃に、事件が起こる。
「パパ、ウンコしたい」
あーまじか。上にも下るにも時間がかかる。これはピンチだ。
登山経験がないため山での作法なとも知らないし、当然準備もない。
焦って下るのも危険だから、行けるところまで行くことにした。
「パパもうダメ」
まて、諦めるんじゃない。
周囲を見渡すと、少し先に隠れられそうな茂みを見つけた。急いで茂みに入り、健康的で立派なブツそっと置いた。
当時は作法を知らなかったが、落とし物に土をかけ、紙は持ち帰った。
その後無事に登頂して、帰りはケーブルカーで無事下山した。
恋の山改めて、ウンコの山筑波山
2回目の登頂は白雲橋コースで女体山を目指した。
前回の教訓を生かし、セガレにこまめに確認しながら慎重に登った。
今回は弱音が減り、明らかに成長している。実に頼もしい。
だんだんと山頂が近づき、今回は無事に登頂できるだろうとホッとした頃、登山渋滞が発生した。
山頂手前は道が狭く、休日などは渋滞が発生するようだ。
ただ、山頂はもうすぐだ。
「パパ、ウンコしたい」
ん?今なんて?何だこのデジャブ。
山頂に近づき、前回のような茂みもない。おまけに周りは人だらけである。
これは成長したセガレの忍耐力に期待するしかない。頼んだ、セガレよ。
一歩一歩少しづつ山頂に近づき、ようやくロープウェーの駅が見えてきた。
「パパ、流れない」
間に合った。
ロープウェーのトイレに滑り込み、セガレは人間としての尊厳を守った。
ただ、我慢に我慢を重ねたうえで生まれたブツは、山の水圧の低い環境でなかなか流れなかったのだ。
そのあと女体山まで登り、いっしょに素晴らしい景色を眺めた。
すっきりしたセガレから見えた景色は、私のそれをはるかに上回っていたに違いない。
そんなセガレも今は中学生になり、水泳で全国レベルで戦っている。
この時培った忍耐力が強さに影響しているかはわからない。(そんなわけない)
私はこの経験で、山とトイレの問題を真剣に考えるようになった。
僕自身もお腹が弱く、いつも不安を抱えている。
セガレのおかげで準備の大切さを知り、今に活かすことができている。
つづく
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