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ならぬことはならぬものです、白虎隊、ジジェク
新宿発の高速バスに乗って、初めて会津に来た。J R会津若松駅に到着するとき、「みんなが幸せになるために ならぬことは ならぬものです」と書かれた時計台があって、ちょっと驚いた記憶がある。綾瀬はるか主演の大河ドラマ『八重の桜』やベストセラーになった藤原正彦『国家の品格』で取り上げられたせいか、「ならぬことはならぬものです」は全国的にも広く知られている。
福島に引っ越してもう四年経つが、何人かの友人が訪ねに来てくれた。東京駅から東北新幹線で郡山駅まで来て、そこから磐越西線に乗って会津若松駅にやってくる。駅を出てまず目にするのが、白虎隊の銅像だ。まだ幼さを残したふたりの白虎隊士が遠くを見つめている。視線の先にあるのは彼らが自刃した飯盛山だろうか。
その隣りには「あいづっこ宣言」という看板が掲げられている。「一 人をいたわります」「二 ありがとうごめんなさいをいいます」などの心得が説かれたあと、「やってはならぬ やらねばならぬ ならぬことはならぬものです」とやはり書かれている。だいたいの友人はこれを見せると、ちょっと笑う。ぼくも少し笑ってしまう。
友人たちと観光がてら七日町や鶴ヶ城のあたりをぶらぶらする。「ならぬことはならぬものです」はいろんなところで目にする事になる。鶴ヶ城の公園にも「ならぬことはならぬものです」という標語が掲げられている。おみやげ屋さんにも「ならぬことはならぬものです」とプリントされたタオルやTシャツ、そんな名前の日本酒まである。そのたびに指を指して友人とニヤッとしてしまう。別に嘲笑ってるわけではない。やはりどこかおかしな感じがするのだ。
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