どんな工事をしたの?
いらっしゃいませ!
我が家に代々伝わってきた江戸時代の普請帳の中身を、令和の事務員がエクセルで紐解く話。第7話目(全15話)です。■初めから読む
江戸時代の家の建て替えの話。いよいよ工事についてです。
<受卸之事>こんな工事しました ←今ココ
普請帳には、こう書かれていた!
「受卸之事」と題され、工事の内容が記されています。
現代で言うところの、工事請負契約書なんだと思います。今回調べて気づいたのですが、工事界隈って契約書に限らず尺貫法の名残があったりと、江戸時代のものが丸っと受け継がれてるところがあります。
さて、この江戸時代の工事請負契約書について、1文ごとに内容を紐解いていきたいと思います。
<あらかじめご了承ください>
工事の内容については知識が全く無いので、ひとまず言葉の意味だけ調べました。
また、専門用語の解説につきまして、「家づくりを応援する情報サイト」さまのリンクを使わせていただきます。とても分かりやすいご説明をありがとうございました!!
とりあえず、ここかな?という画像と一緒にお届けします。
一 本宅壱軒(梁三間半 桁六間半)
梁と桁は、下記サイト(外部リンクへ飛びます)をご参考ください。
桁(けた)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)
1間=1.818m
梁三間半=6.363m
桁六間半=11.817m
一 居間より上本柱鉋削之事
鉋(かんな)は、木が削り節のように削れるアレです。
鉋で削ったんでしょうね(←かなり適当)。
一 居間沖より上つま迄椽板打候事
上つま=軒先
椽(たるき)=家の棟から軒にわたして屋根を支える材木
下記サイト(外部リンクへ飛びます)をご参考ください。
垂木(たるき)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)
一 戸袋二つ調候事
戸袋=雨戸を開けた時に、収まっているところ。
一 戸障子唐紙入候所不残(のこらず)敷居鴨居を入候事
唐紙=襖に貼る加工紙
一 指鴨居鉋削之事
「指鴨居」を鉋(かんな)で削ったらしいです。
下記サイト(外部リンクへ飛びます)をご参考ください。
鴨居(かもい)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)
一 座廻り不残(のこらず)上敷を入候事尤面通り居間より上敷板打候事
上敷
"畳の上敷き" 【通販モノタロウ】 最短即日出荷 (monotaro.com)
当時、座敷と仏間は畳でしたが、居間は板の間でした。恐らく、板の間に上敷きを敷いたのだと思います。
現在は、仏間と座敷には本畳、居間は板の上に普通の畳を乘せています。
一 床敷込かばちを入板打落かけ入候事
框(かまち・かばち)
上がり框(あがりかまち)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)
落かけ
落とし掛け(おとしがけ)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)
一 座敷之分なけしを打候事
なけし=長押(なげし)
長押(なげし)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)
一 木挽(こびき)大工受之内ニて調候事 但指口鼻入斗之事
木挽大工:製材、および製材作業者で、かつ卓越した木材の鑑定能力をもつ職能集団を指す
指口:部材と部材を接合させるとき,一方にあける穴の位置,またその仕口(しくち)こと
一 穴ハ此方よりほり可申(もうすべく)事
工事のスケジュールのところで、「あなより」と書かれている工程があって、このことかなーと思っております。
一 来二月中旬迄ニ調候事
この普請帳が書かれたのが、天明8年(戊申)1788年なので、「来二月中旬迄ニ」=「寛政元年(己酉)1789年2月中旬までに」ということだと思います。
後述しますが、この記載通りに寛政元年(己酉)1789年2月14日〜2月15日に吉祥日おこし日(上棟?)とふきじ(葺地?)を完了しています。
一 大工賄カ捨ニシテ作料銀弐百五拾目ニ定候
銀弐百五拾目(匁)=541,500円
*1匁=2,166円で計算
何となく、工事費用の前払金のような気がします。材料を仕入れたり、職人を手配するための費用を先に渡したのではないかと思います。
右之通請負仕切如此相違無御座候以上
右の通りに間違いないよ、以上。
申十一月四日
天明8年(戊申)1788年11月4日
大工 彦平殿
彦平さんは、この後「工事進捗・関係者リスト(大工さん関連)」に登場します。たぶん「親方」なのだと思われます。
外ニうしつなきのしけつり作料弐拾目増
なんだか良く分からないのですが、弐拾目(匁)アップチャージになったようです。
弐拾目(匁)=43,320円 *1匁=2,166円で計算
さて、工事の内容が分かったところで、次はどのようなスケジュールで工事が行われたのかを調べたいと思います。