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大工さんのギャラ

いらっしゃいませ!
我が家に代々伝わってきた江戸時代の普請帳の中身を、令和の事務員がエクセルで紐解く話。第10話目(全15話)です。■初めから読む


さて、支払いが明らかになったところで、大工さんのギャラについても解明したいと思います。

大工さんの工数と支払われた工賃について

作料でフィルタをかけてみました(`・ω・´)ゞ

登場人物は、彦平(親方)、八郎、彦十郎、新五郎、喜八、庄兵へ、伝兵衛、栄蔵の8名です(←たぶんスペシャリストな方々)。
それぞれの方の工賃を調べてみたいと思います。

その前に・・・


令和で勃発!給料未払い問題!?(半工どこいった?)

ここで、問題発生です。
まさかの、給与計算が間違ってるかもしれない問題。
普請帳には、こう書かれていました。

当分渡 八郎
一 弐工半 未九月
一 八工 申四月
一 八工 酉三月板挽
〆拾八工

文化財建造物保存技術協会 編著. 2010.3. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010839493

2.5+8+8=18.5 のはずなのに・・・。
0.5工(半工)どこいった???

同じことが、庄兵衛さんにもありました。
どちらも半工分が計算し漏れております。

ウッカリなのか、作為的なのか・・・。
もはや知る由も無いのですが、もしウッカリでしたら、この場をお借りしてお詫び申し上げます。


八郎さん、庄兵衛さん、本当に申し訳ございませんでした!!!

遅きに失しましたが、謹んでお詫び申し上げます。

さて、遅ればせながらのお詫びが済んだところで、大工さんごとの工数とギャラについて調べたいと思います。

彦平(親方)

1工あたり 3,058 円

未九月当分渡
一 弐工 彦平
一 四工 申九月二日より五日迄
一 四工 同十月十七日より廿日迄
一 六工 同廿六日より霜月朔日迄
一 壱工 同極月
〆拾七工

文化財建造物保存技術協会 編著.  2010.3. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010839493

1788年12月25日に24匁が支払われています。
1787/9~1788/12までの17工分とすれば、1工あたりは3,058円です。

え・・・新五郎さんの方が高くない!?(下記「新五郎さんのギャラ」をご参照ください)
もしかしてですが、前記事「さて、いくらかかったでしょう?」で、最後にとって付けたかのような「謎の作料」 未九月渡作料六匁四分五厘 は、やはり彦平さんのものではないのでしょうか(希望的観測)。

1工あたり 3,880 円(再計算後)

やっと親方らしいギャラになりました。

これだけ素敵な家を建ててくださったのに、ギャラが安いとかちょっと無いわーと思ってしまいます。そうも言ってられない時代でしょうけど(-.-;)

彦平さん、大丈夫でしたでしょうか?
もし、ご不満等ございましたら、枕元までお越しくださいませ。( ;∀;)


八郎
1工あたり 2,503 円

当分渡 八郎
一 弐工半 未九月
一 八工 申四月
一 八工 酉三月板挽
〆拾八工

文化財建造物保存技術協会 編著. 2010.3. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010839493

八郎さま0.5工マイナスになっている件、改めましてお詫び申し上げます。
八郎さんも、ご不満等ございましたら、枕元までお越しくださいませ。
(↑このままいったらネクロマンサーになるかもしれない( ゚Д゚))


彦十郎
1工あたり 1649 円

彦十郎
一 三工半 申九月
一 三工 同十月十七日より廿日迄
一 六工 同廿六日より霜月朔日迄
一 七工半 同極月分
一 拾壱工半 仏壇雨戸かうし 
  酉六月八九日 七月朔日より十一日迄之内壱日半引
〆三十壱工

文化財建造物保存技術協会 編著. 2010.3. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010839493

3.5+3+6+7.5+11+(-0.5)=31
合ってた。半日早引きしてた!!
また間違えたのかと思って、ヒヤッとしました。

ちょっと、彦十郎さんだけ安すぎません?
ここから妄想劇場なのですが、彦十郎さんは彦平さん(親方)の息子ではないかと・・・。しかも、十番目の末っ子。若しくは…。
この工事の施主(当主)の名前が「武十郎」なのですが、この武十郎さんと彦平さんが、幼馴染みたいなエモい関係で、

「せがれが生まれたら、名前をもろうてもええかのぅ?」

なーんてことで、ズバリ跡取りの長男坊!!
多分、こっちの方が合ってるような気がします。

見事なシンクロ率

9月、10月はお父さんに手取足取り教えてもらって、12月は「後は自分でやってみろ」的な(←妄想です)。
その後、しっかり一人前になって、翌年の7月には時間こそかかりましたが(拾壱工半)、仏壇の扉をしっかり仕上げましたとさ。さすが彦平さんの息子(←何度も言いますが妄想です)。

しかも、何気に1工あたりの単価が上がってる・・・。
1788年9月~12月 @1555円
1789年6~7月 @1808円

とはいえ、1788/10/17~10/20(4日間)働いてるのに、彦十郎さんだけ三工しかもらってないんですよね。同じ日に働いていた、彦平さん、新五郎さん、喜八さんはちゃんと四工もらってるのに。

出来があまり良くなかったのか!?
寝坊して遅刻でもしちゃいました!?
↑すべて素人の妄想です。


残りの方は、表と単価のみ記載させていただきます。

新五郎
1工あたり 3341 円


喜八
1工あたり 2927 円


庄兵へ
1工あたり 3249 円

庄兵へ
一 半工 酉二月
一 四工半 三月雨戸入
一 拾弐工 七月朔日より十三日迄仏壇調
〆拾六工半

文化財建造物保存技術協会 編著. 2010.3. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010839493

0.5+4.5+12=17
何回計算しても足りない( ゚Д゚)

庄兵へさま
0.5工マイナスになっている件、改めましてお詫び申し上げます。
庄兵へさんも、ご不満等ございましたら、枕元までお越しくださいませ。(→令和のネクロマンサーに改名しようかな?)


伝兵衛
1工あたり 3058 円


栄蔵(あなより係)
1工あたり 2166 円


栄蔵さん(あなより係)は多少安いものの、初心者マークの彦十郎さん(←妄想です)を除いて、だいたい1工あたり( ≒ 日当)3000円前後でギャラが設定されているようです。

江戸時代の大工の日当は諸説あるようですが、かなり良心的な価格で引き受けてくださっていたようです。
飢饉の真っ只中、みんな大変でしょうから・・・ということだったのでしょうか!?
それでなくてもお安い日当で頑張ってくださいましたのに、半工分を計算漏れするなんて!!八郎さん、庄兵衛さん、本当に申し訳ございませんでした!!!

次回は、工事のスケジュール(村人)です。

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