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寄席あちこち
■上野鈴本演芸場
昨日6/14は久しぶりに鈴本演芸場の夜席に行った。
隅田川馬石の“お富与三郎〜世話情浮名横櫛連続通し全七席+総集編三席”
第四話「稲荷堀」である。
これを「とうかんぼり」と読むことすら知らない無知蒙昧な私だが、充分に楽しめたのは馬石師匠の話術ゆえである。
長編の途中から聞いてもわかるように語ってくれる。
鳴り物入りの芝居噺だった。
客席はソーシャルディスタンス席かと見まごうほどの入り。
(演者さんには寂しいだろうが私はこれぐらいが好き)
コロナ禍の禁止事項はすっかり解除されて、飲食も自由になっていた。
売店で牛乳もなかを買って、客席で食べるのも嬉しい限りである。
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酒悦で漬物を買うのが定め
ホール落語ばかりに通っていると寄席に行く機会が減りがちである。
しかし寄席の空気もいいものである。
「聞くぞ!」と神経を集中させる落語会とはちと違う。
集中するのはせいぜいトリだけ。
後はおやつを食べて(煎餅、チョコ、白湯など持参)うたた寝して……てな具合である。
そのテキトーさが心地よいのだ。
馬石師匠のトリは6/20(火)までだから、みんなも行くといいよ。
■巣鴨スタジオフォー
遡って6/10(土)には、スタジオフォーに出かけた。
電撃Ⅱの公演である。
電撃とは、桃月庵黒酒、柳家小ふね、春風亭だいえい、三遊亭ごはんつぶ、林家八楽ら5人によるユニットである。
前座の勉強会として始めたが全員二つ目になったので「Ⅱ」を付けたらしい。
実は私も参加二度目なので、あまり詳しくはないのだった。
だが5人とも次の落語界を背負う有望な新人である。
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私は小ふねさんと黒酒さんに笑った
スタジオフォーには巣鴨駅から地蔵通り商店街を抜けて行く。
落語会が始まる夕方頃は店々もシャッターを下ろし始めている。
その寂しさは都内なのにまるで地方商店街のようである。
妙に懐かしい風景なのだった。
電撃Ⅱ、次回は10/7(土)開催。
何と最終回とのことである。
巣鴨散歩のついでに若手の落語はいかがでしょう?
■落語演芸茶屋 にっぽり館
更に遡る6/6(火)には、にっぽり館に行った。
昨年までにっぽり館は日暮里駅に程近い、夕やけだんだんの真下にあった。
それが地上げの憂き目に遭い、この春にシン・にっぽり館が誕生した。
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主催は林家たけ平&三遊亭萬橘
にっぽりと言うにはやや難のある、台東区上野桜木という住所である。
最も近いのはJR鶯谷駅。
他にJR日暮里駅、上野駅からは徒歩二十分〜三十分。
地下鉄千代田線根津駅、千駄木駅からも行ける。
残念ながら交通至便な場所ではない。
JR〇〇駅から〇〇市民会館まで徒歩二十分というような、落語会にありがちなロケーションとも言える。
けれど主催者たちのホスピタリティは素晴らしい。
キャパ30名ほどの小さな寄席のあちこちに細やかな心遣いが見て取れる。
建物は三叉路にあり道路に挟まれた状況である。
それも交通量ハンパない道である。
だが窓は防音用の二重窓にしてあるらしい。
落語家の生声がきちんと聞き取れるのだ。
最後列の椅子には座布団が敷かれている。おそらく前の席より視点を高くするためだろう。
椅子の背にはドリンクホルダーも設置されている。
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たけ平師匠や萬橘師匠はこの場を整えるのに、どれだけ心血を注いだことだろう。
この勢いでマイホームを建てれば家族大喜びの素敵な家が建つだろうに。
などと考えるのは余計なお世話である。
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この日は、襲名間もない江戸家猫八先生がゲストだった。
新しい寄席にウグイスの鳴き声が高らかに響くのだった。
にっぽり館 落語演芸茶屋 - にっぽり館 公式ホームページ! (nipporikan.com)
■もっと遡れば
実は私がホール落語以外の寄席を回り始めたのは、ここ数年のことである。
だって寄席なんて場所に集うのはマニア中のマニアだろう。
胎教で寿限無を聞かされ、子守歌が金明竹の言い立てだったような、先祖代々の落語マニアに違いない。
私のようなぽっと出が訪ねれば、きっと白い目で見られる。
と、あり得ない恐怖を抱いていたのだ。
そんなことは全然ないのにね。
まだ行ったことのない小さな寄席はたくさんある。
追々訪ねてみたいものである。