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父の役目

子供が生まれました!!
妻よありがとう!!

SNSにそんな投稿をする男がいる。
生まれたての赤ん坊の写真を添えて。
それを見る度に私はイラッとする。

何故だろう?

普通なら「まあ、何て優しい旦那様」と思うはずたろう。
実際ににそういう〝いいね!〟が集まっている。

なのに私はイラッとする。

何年か前に某落語家がそんな写真を投稿した時、こいつの落語を聞くのはもうやめようと思った。
そして実際にそいつ……いや彼の独演会には行かなくなった。
推しと共演の時は仕方なく聞いている。

念の為に言うなら、その落語家は大名跡を継いだ実力派である。
仲間内の信頼も厚く後輩にも慕われファンも多い。
災害があれば真っ先にボランティア落語会を催すような人情派である。
まあ……簡単に言えば〝いい人〟なのだ。

〝いい人〟が初めての子供に歓喜して、写真と共にコメントを投稿した。

ちなみに写真は〝彼の指を握る赤ん坊の小さな手〟という芸術味のあるものだった。

それでも、何故だか私はイラッとしたのだ。

今回また別の落語家が、妻が子供を産んだと写真と共に投稿した。
まんま子供の写真である。
産まれたばかりの赤ん坊の顔がはっきり写ってる。
〝妻よありがとう!〟
みたいなコメントと共に。

おいっ!!
赤子の顔を世間に晒すな!!
不特定多数に見せてんじゃねーよ!!
そんな写真は身内にだけ見せておけ!!

咄嗟に思って、以前のイラッの正体がわかった。

父親の役目は母子を守ることだ!!

殊に産褥で母親が動けない間は、父親が赤ん坊を庇い守るべきだろう!?

なのに、自分の歓喜に浮わついて赤ん坊を平気で危険に晒している。

世の中には異常者が大勢いるのだ。
あの落語家の子供が欲しいと誘拐しに行く異常者がいないとも限らない。
子孫を残すなんて生意気だと傷つけに行く異常者がいないとも限らない。

その程度の想像力もないのか?

父親は母子を身内に庇って、万一の場合には盾となって異常者と戦う覚悟を持つべきだろう。

大袈裟なようだが瞬時に私はそう思い、イラッとしたわけだ。
女の防衛本能ゆえである。

いや、それって別に落語とは関係ないのでは……だと?
まあ……確かに。
落語家に限らずどの父親についても同じことが言えるだろう。

ただ落語家にとって想像力は(母子を守ることも含めて)一般人よりかなり重要だと思う。

何となれば、落語は想像力で成り立つ芸能なのだ。
落語家に何より必要なのは想像力である。

背景も小道具も効果音もない高座で、それらがあるかのように語るのが落語家なのだ。
そして江戸時代やら現代やらの庶民の生活、市井の人々の心を描くのだ。

母子の安全に配慮する想像力すらない……いや、言い方を変えようか。
世の中は善人ばかりでSNSを見た人々はみんな自分を祝福してくれる!
という幸せな想像しかできない落語家に、深みのある落語が出来ようか?

子供もいないBBAがいちいちうるさい?

自分でもそう思う。
でも嫌なものは嫌なのだ。
と、ここまで書いて気がついた。
子供の産めないBBAの僻みだと思われるかな?

ふんっ!!
思いたきゃそう思え。

いずれにせよ。
今回の落語家について私は名前を知っているだけで実際に高座に接したことはない。
けれど今後、彼の落語を聞きに行くことはないだろう。

それにしても……。
年の瀬にふさわしくないnoteではある。
ひとつおめでたい写真でも載せてみようか。
厄落としということでひとつ。

境内の桜一輪また一輪

どっとはらい。




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