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ドクターショッピング

一週間続いた不調は降圧剤の副作用に違いない。
そう疑って病院に行く。

とても清潔で感じのいい病院だと思っていた。
陽気で説明の上手い医者だった。
ホームドクターにしようと思っていた病院だった。
(正しくは医院だが。病院ほど大きくないさ)

なのに不調を訴えるなり医者は言ったものだった。
「薬飲まなかったら脳の血管切れて死ぬよ」

はあ!?
ちょっと待て!!
誰が薬を飲まないと言った!?

大体高血圧で頭の血管切れて死ぬなんて、あんたに言われなくても知ってんだよ!!
家の母親はそれで寝たきりになって、胃瘻までして死んだんだからな!!
だから病院に来たんじゃねーかよ!!!

と思ったが黙っていたら、
「この薬が嫌だと思ってるなら飲んだって仕様がない」
とも言われた。

思ってるだけじゃねーーー!!!
実際に、つらくて一週間ろくに外に出られなかったんだよ!
女子会も編み物教室もキャンセルして!
落語会のチケットだって四枚も無駄にした!
体温計が壊れてると思って一本買い足もしたんだバケヤロウ!!!

とも思ったが言わなかった。
無理にも違う薬を処方してもらって帰って来た。

わたくすの心象風景
かつて津田沼PARCOのあった場所

結局あの医者にとってあの医院は自分のステージなのだった。
趣味の熱帯魚を飾った美しい待合室。
そして患者に面白おかしく病気について解説する。
けれど自分の思うように治療の効果が出なければ、いきなり不機嫌になって患者を罵倒する。

考えてもみればあの医者の口からは「副作用ですね」の一言も出なかった。
ただ思い通りにならなかった患者に不機嫌さを隠さない。
患者に寄り添う様子など、これっぽっちもなかった。

ああ……見事に騙された。

とにかく違う薬は手に入れたぞ!
ザマアミロ!!

さて。
新たに処方された降圧剤を飲んだのは、例の高級黒毛和牛を食べた日だった。
その夜いきなり腹を下した。
脂っこい肉のせいだと判断した。

年末福引でもらった商品券で買った牛肉
つまりタダ!!

が、翌日も翌々日も腹は下った。

……副作用?

調べてみれば、こちらの降圧剤には軟便や湿疹の副作用があるのだった。
軟便というか水様便だがな(尾籠で失礼)。
このところ胸の辺りが痒いのは、乾燥肌のせいかと思っていた。
けれど毎年、乾燥肌で痒くなるのは脛や背中でクリームを塗って手当していた。
胸の湿疹は初めてである……これも副作用?

とりあえず一週間。
その薬を服用しつつ、久しぶりの落語生活を送っていた。
昼夜で寄席に行き、次の日も寄席に行く浮かれっぷり。
そして本日。
ネットで新たな医者を検索して、別の薬を処方してもらって来た。

明日から新たな薬の服用になる。
そして後日、血圧の検査もある。
薬も新たな医者も自分に合うかどうかは、まだわからない。
ああ……血圧を下げるのもホームドクターを見つけるのも、長い道のりである。

どっとはらい。

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