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【猫や猫】布団カバー

上の写真の布団カバー。
風邪の熱で寝ていると、何故だかこの布団の陰に猫めが隠れているような気がしてならなかった。


あれ?


ひょっとして猫めが最期の日に寝ていた掛け布団は、このカバーだったかな?


あの冬晴れの日、私は散歩から帰って来たのだ。

そして猫めに点滴を打ち始めたのだ。
それは猫には全く不要で、逆に苦痛を長引かせるだけの物だった。
ずっと後になって知ったのだけれど。

途中で猫めは「トイレ、トイレ」とぎゃーぎゃー鳴いた。
既にオムツを着けていたけど、猫トイレに運んでやったらオムツの中に排泄した。

それが最期のはばかりだった。

紙オムツを交換した。
大きなパックを買ったばかりで交換したのは、まだ二枚目だった。


猫トイレから布団に戻らず、そのまま窓辺に連れて行ったのだ。

日向ぼっこをさせようとして。

クッションにうまく寝かせられず、一度抱っこし直したら首がくけっとなって……逝かせてしまった。

これらは
猫みまかりし直後に捨てた

あの時、窓辺で猫めは数歩クッションの上を歩いたのだ。
日向ぼっこに適した場所を探している。
ならば具合よく寝かせてやろう。

そう思って抱き上げたのだけれど……。

あれ?

ひょっとして猫めは、また布団に戻りたかったのではないか?

ああ……そうだ。

そうだったに違いない。


布団に戻りたかったのだ。


だってもう何日も掛け布団の暗い中で寝てばかりいたのだ。
柏餅のあんこみたいに、折り畳んだ掛け布団の間に挟まって。

そもそも猫という動物は具合が悪くなれば、暗く安全な場所でひたすら眠る習性なのだ。

病んだ猫が、いきなりあんな日差しがきつい窓辺に連れて行かれて、寛げるはずもないじゃないか。

あの時、猫めがクッションの上をうろうろしたのは、布団に戻りたかったのだ。

そうして永遠の闇の向こうに行ってしまった。

ああ……何ということだろう。


私ときたら16年も猫と暮らして何を見て来たんだろうか。

最期に猫にとっていちばん嫌なことをしてしまったのだ。

なのに今の今まで善行を施したつもりになっていた。

亡くなって二年もたつまでそれに気づかないなんて。


風邪の熱にうかされて、布団カバーが気になったのは、そういうことだったのか……。

あの時、猫めが入っていた掛け布団はこのカバーだったろうか?

帰りたかった場所はこの布団カバーだったんだろうか?


今となっては覚えていない。


でも、こんなにこのカバーが気になるのは、そうなのかも知れない。


結局、人は自分が親にされて来たことしか、他人にしてやれないんだな。

自分の勝手な思い込みで良かれと思って、娘が嫌がることを強いた親。

そこから逃げた娘も、猫めに同じことをしていた。


そうかそうかそうだったのか。


気づかなくてすまなかった猫や。

今はもう全く眩しくないんだろう。

そうあって欲しいよ。

これは猫みまかりし後
購入した布団カバー

朝になって熱が下がってから、布団カバーを取り替えた。

件のカバーは袋に包んでゴミ箱に押し込んだ。

捨てる!


もう捨てるさ!! 


そうしてまた風邪の養生に戻ったわけさ。


来月の19日に二年目になる亡き猫の話でした。

どっとはらい。


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