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プチ落語遠征
プチ落語遠征をした。
以前書いたように遠征未満の場所に泊まって帰ったのである。
落語会は東京の目黒区で開かれた。
わが住まいと同じ関東圏内である。
しかしその夜はホテルに泊まって翌日帰宅したのだ。
ちなみに落語会は、三遊亭萬橘後援会主催の独演会だった。
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プチ遠征の今回はただ泊まるだけなのだ。
なるべく会場に近く、けれど繁華街ではない立地のお宿を選んだ。
落語会場、めぐろパーシモンホールは都立大学駅から徒歩十分。
選んだ宿は中目黒駅から徒歩十五分。
……徒歩十五分は遠いなあ。
と思いながら歩く。
十五時頃に中目黒駅に着き、Googleマップを頼りに宿に着いたのだった。
東京は坂の街と聞いてはいたけど、見事にそうだった。
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坂の上り口には庶民の家やアパートがこちゃこちゃある。
上るうちにマンションは高級になり、一軒家もけっこうな豪邸になるのだった。
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必ず花が咲いている
すごいな中目黒!!
こんなお屋敷街の中にホテルがあるのか?
と思った坂の上にありました。
あら?
改めて見れば、ここは国家公務員のためのお宿だったのね。
そりゃあ良い立地にあるはずよね。
でも宿の中は昭和の香りぷんぷんで。
部屋に入るとクーラーから噴き出す冷気に咳が出て止まらなくなる。
埃でも舞い散っていたのか?
リモコンでは動かない吹き出し口を強引に手で閉ざして、冷気が直撃しないようにする。
その時点で私はかなりげんなりしてしまった。
室内には電気ポットもお茶道具もない。
せっかく持参したドリップコーヒーもティーバッグも使えない。
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某旅館に忘れて送り返してもらった時
思わず記念写真を撮った
洗面台のコップは紙コップだった。
部屋の外に無料でコーヒーやお茶が出る機械があるけど、それも紙コップだし。
嫌なのよね。
紙コップで物を飲むのは。
試飲みたいで落ち着いて泊まる気になれない。
うっかりすれば検尿カップで飲んでるような気もするし。
いよいよげんなるする。
とりあえず大浴場に行く。
これがあるから、このホテルを選んだのだから。
そしてこの風呂が良かった!
まるで温泉のように肌触りの柔らかなお湯。
後で聞いたら別に温泉じゃないそうだけど。
むしむしする中、駅から十五分高級住宅地の坂を歩いて来た身にはなかなか良かった。
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そして夕刻お宿を出て、また十五分歩いて駅に向かう。
これは一体楽なのか?
少々疑問が湧く。
落語会の開演は十九時から。
終わったのは二十一時十五分頃だった。
都立大学駅から中目黒まで電車に乗る。
暗い中またGoogleマップを頼りに少しばかり迷いながら(マイデフォルト)歩く。
それでもお宿に帰り着き、また汗をかいたので風呂に入ったのが二十二時十五分頃。
いつもならまだ下総の国に向かう電車の中である。
それがもう風呂で汗を流しているのだから、プチ遠征も悪くない。
悪くはないが……。
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実は落語会の間中、終わったら家に帰りたいなあ……と思っていたのだ。
こんなに楽しい落語会の後に、あんなお宿に帰るのは嫌だなあ。
自分ちで好きなようにコーヒーを飲んで、落語の余韻に浸りたいなあ。
そう思っていたのだ。
だから落語会が終わって一時間もするうちに入浴してベッドに入れたのに、何だか釈然としないのだった。
そもそも。
私は他人の家に泊まったことが殆どない。
親の実家や親戚の家に泊まったことはあるけれど。
こういうビミョーに遠い落語会の時、近場に友達がいれば(親戚でもいいけど)そこに泊めてもらえる。
もしそれが落語友達なら感想を語り合いながら寝ることも出来るのだ。
だがそんな幸せな体験は私にはない。
ホテルに泊まって翌朝は自宅と同じように朝のEテレを見て淡々とチェックアウトするだけである。
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バイキングのおかずは豊富でしたが
かなり摂生しました
そして翌日は9月ではなく既に10月になっているのだった。
ちょうど「ハニワと土偶の近代展」が始まったばかりなので見て帰った。
中目黒駅から日比谷線で茅場町駅まで出て、東西線に乗り換えて竹橋駅へ行き国立近代美術館へ赴く。
会場に親子連れが多かったのは、都民の日で学校が休みだったかららしい。
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そうしてプチ落語遠征から帰還したわけだが。
実は10月初日の夜は、渋谷での落語会があった。
なのに私ときたら、もう外に出る気力がなくなっている。
居眠りをして結局出かけないのであった。
おいっ!!!
プチ落語遠征……そうそういいものでもないな。
ホテルに泊まるのは、絶対にその日中には帰れない遠方に限った方がいいかも知れない。
プチはやめよう。
落語の余韻に浸るには、自宅がいちばん!!
と自覚するのであった。
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ピグちゃん&ダダちゃん
どっとはらい。