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【温泉に行った】鉛温泉
※3818文字
■洗礼
写真が白黒に見えるが全てカラー写真である。
今回は何とも白黒な気分である。
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歴史と伝統のある東北の古い温泉旅館。
その洗礼を受けたのだ。
昭和生まれだから薄々知ってはいたけれど。
まさか令和の今も残っているとは思わなかった。
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出発は、2/21(水)猫の日の前日である。
東北新幹線で新花巻駅へ。
ちなみに平日だったので話題のJRキュンパスを使う。
ここからバスで鉛温泉へ行く。
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新花巻駅には山猫軒がある。
それしかない。
とも言えるが。
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昼食にカツカレーを食す。
こんなヘビーな物を食べられるか?
と案じるまでもなく完食。
後になってみれば、ここの米は美味しかった。
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新幹線到着が13時頃。
温泉地に向かうバス出発は15時頃。
約2時間……。
駅の待合室でお雛様や大谷翔平くんの展示を見る。
見る。見る。見る……
田舎の待ち時間は他に見る物もなければ、やる事もない。
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いや、田舎のせいじゃない。
また私が到着時間を読み違えただけだ。
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30分程で温泉に到着する無料送迎バスである。
松倉温泉、志戸平温泉、渡り温泉、大沢温泉、山の神温泉、鉛温泉、新鉛温泉……
と、山道に沿って点在する温泉に次々と乗客を降ろして行く。
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鉛温泉バス停には、旅館のマイクロバスが待っていた。
わずか数分だけど、急な坂道を玄関まで連れて行ってくれる。
至れり尽くせり!
これって前に白骨温泉で経験したサービスだわ。
大旅館サービスあるあるだったのね。
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バスを降りたら玄関ホールで一斉に宿帳記入。
鍵を渡され各自部屋へ。
一丁上がり!!
って感じ。
完全に客の送迎がシステム化されている。
おら少し度肝を抜かれただよ。
温泉初心者丸出しである。
■温泉
さて。
肝心の温泉である。
こちらの旅館には四か所の湯がある。
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いずれも加水なし、加温なし、掛け流し、とのこと。
〇白糸の湯&銀の湯⇒泉温:約57度 泉質:アルカリ性単純高温泉
〇白猿の湯⇒泉温:約 45度 泉質:硝酸化水素単純泉
〇桂の湯⇒泉温:約50度 泉質:弱アルカリ性単純高温泉
お湯はいずれも良かった。
白糸の湯は入るなり肌にまとわりつく滑らかさ。
化粧水?と思うほどだった。
桂の湯は……良かったと思う。
確か露天も入った気がする。
実はよく覚えていない。
何故なら慌てて入ったから。
その理由は後ほど。
その後に入った白猿の湯が衝撃的過ぎたせいもある。
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白猿の湯は扉を開けると階段で、降りて行くと既に湯殿。
脱衣棚があって洗い場はない外湯形式である。
そして階段が長いのだ。
地の底に降りて行くような感覚である。
それだけでちょっとどきどきする。
おまけにここは立湯なのだ。
立ったまま湯に浸かると、身長153㎝の私の顎まで湯が来る。
底には湯の噴き出す穴がある。
足裏で触って驚いて、足が滑って頭のてっぺんまで湯に没入する。
あぶあぶあぶ……身長153㎝……あわてて泳いで縁に摑まる。
溺れるかと思った……。
もちろんお湯そのものも素晴らしい。
白糸の湯のようなとろみはない。
なのに滑らかで肌に心地いいのだ。
柔らかく優しい湯でいつまでも浸かっていたかった。
以上。
温泉報告終わります。
楽しいレポートはここまでです。
今回私は毒を吐く。
思う存分毒毒毒です。
毒は勘弁という方は、さようなら。
またの機会にお会いしましょう。
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■毒毒毒
今回旅館の名前はあえて伏せます。
わかる方にはわかりましょうが。
(わからなくてもググらないように)
お部屋はこんな感じです。
バス、トイレ洗面所は廊下の外。
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玄関的前室もあり充分広い。
Wi-Fiも飛んでいる。
電気ポットに氷水のポットもある。
お茶道具も用意されている。
川の流れる音が部屋まで届く。
映画「リバー、流れないでよ」を思い起こさせる。
(あのロケ地は京都の貴船だそうだが)
うむうむ、結構結構。
と思ったのだが……温泉に入って寛いでいるうちに気がついた。
部屋が臭い!!
異臭がする!!
すえたような淀んだような……イヤな匂いが。
壁紙や襖紙あるいは木材に染みついた湿気やカビが経年劣化したような。
時代のついた建物だから仕方ない?
いやいや、これまでも古い宿には泊まって来た。
ここよりボロい宿にも泊まったけど、臭くはなかった。
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室内にいれば居るほど気になって来る。
雪模様なのに窓を開けて空気の入れ替えもした。
が、その程度じゃどうにもならない。
時代と歴史がコラボした異臭!
従業員さん達はみんな鼻が慣れちゃって気がつかないのかな?
■男様天国
そして、もう一つの問題。
古い旅館あるある。
女は男の邪魔にならない時間帯に風呂に入れ!問題。
女は、男が飯食ってる時間に、男が寝てる時間に、風呂に入れ!
そんな感じの時間配分。
この時間配分のため、私は到着するなり温泉に駆け込んだ。
お茶の一杯も飲む間もなく。
だって到着が16時頃で、白糸の湯は17時までなのだ。
早く入らなきゃ!
と焦って入湯。
ついでに桂の湯にも飛び込んでいた。
桂の湯は女性専用だから何時でも入れたのに。
温泉攻略を検討する間もなく、臭い部屋を飛び出したのだ。
お陰様で桂の湯の記憶が飛んでしまった。
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上の表が旅館内の三か所の混浴温泉の時間配分である。
赤が女時間、灰色が男時間。
女性は5+9+5=19時間
男性は17+10+19=46時間
三か所の入浴時間を合計すると倍以上も違うのだ。
男尊女卑!
男尊女卑!
男尊女卑!
大切なことなので3回言いました。
ええ〜っ!?
そんなの気にしすぎだよ〜。
フェミニストに毒されすぎだよ〜!
温泉宿は男性客のが多いんだから仕方ないでしょ~。
という男がいたら、女時間に風呂に入ってみろや!!
古い女達が黙って耐えて来たのを良いことに図に乗ってんじゃねーぞ!!
と毒を吐く私である。
■哀愁の白猿湯
白猿の湯は20時~22時の2時間を逃すと、女性時間は翌朝である。
20時~22時とは夕食腹ごなしタイム真っ盛りである。
私はたまたま夕食抜きだったからこの時間に入れた。
そしてこの時間帯は空いていた。
翌朝の込み具合を見れば夜に入れなかった女性は多かったのだろう。
就寝前にこの素敵な立湯に入れるのは男様だけなのだ。
結局、女は朝6時~7時たった1時間の間に入るしかない。
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朝も早よから寝ぼけ眼の女たちが粛々と集まって来る。
深い石段の底にある薄暗い白猿の湯。
夜も明けきらぬ早朝に、黙々とその深い湯につかる女たち。
一体何の修業をさせられているのか?
温泉に寛ぎにきたんじゃないのか?
妙に哀れで涙を誘う風景だったよ。
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そして、まんま朝食時間に女時間がかぶる銀の湯に、私はとうとう入りそこねた。
恨むぞえ〜。
入湯料金払ったのに入れなかった。
恨み骨髄ぞえ〜。
三箇所ある混浴の湯は湯浴み着もタオルも禁止。
(個人的にはその方が湯が汚れなくていいと思う)
だから男時間と女時間に分けるのは当然だと思う。
だが、この男尊女卑な時間配分は何なのだ!?
そもそも混浴とは男様が人間で、女は人間じゃなかった時代の遺物である。
もう言い切っちゃうよ!
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ここは二度も入ったのに……
女が人間じゃなかったのって、わりと最近までなのだ。
女性に人間として選挙権が与えられたのは終戦後だよ。
昭和21年(1946年)4月10日。
ほんの78年前よ。
■ワレ人ニアラズ
だからほんの最近まで、人間である男様が入る温泉には、それ以下の女が入ってはならない。
って感覚だったんだろう。
女人禁制!
とまでは言わなかったけど。
たぶん清潔を保つためには必要だからかな?
あ、そうか。
男様が触れる女体が不衛生だったら病気が伝染るからだね?
……言ってるうちに、とてもそんな気がしてきた。
おぞぞぞぞ……
土俵とか御山とかは未だに堂々と女人禁制と言い放っている。
女が土俵や山に入らなくても男様の衛生には何の問題もないから、だね。
おぞぞぞぞ……
ともあれ。
女が温泉に入るなら男様につきそってもらえ。
つまり夫婦や家族などで入れ、と。
一人で温泉に来るような女はアバズレである。
男様の目にさらされても文句は言うな。
仮に襲われても自己責任!!
という認識だと思うのよ。
〝おひとり様〟と、もてはやされるようになったのはつい最近だもの。
でも、混浴ではまだこの有様なのだった。
たぶん地方の古い温泉旅館はまだまだこんな感じなのだろうなあ。
ただでさえ自己評価が低い私は、温泉自体が嫌いになってしまうのだが……
……いや、毒を吐くんだ毒を!!
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■米米米
最後にもうひとつだけ毒を吐く。
米が不味かった!!
朝食だけのプランでよかったよ。
ここは東北、米どころじゃなかったの?
水でふやかしたような口触りのご飯。
まるで糊のような味がするご飯。
何これ!?
うそでしょう?
他のお客は黙って食べてるけど……あっ!
まさか女一人のアバズレ客は、古いご飯をあてがわれる!?
……なんて被害妄想まで抱く。
温泉の女時間のせいでかなりダメダメ気分に陥っているのだった。
いや、毒だ!
こんな時こそ、毒を吐いて立ち直れ自分!!!
メシマズーーーーッ!!!
金返せーーっ!!!!
山猫軒で食べたカツカレーのライスは美味しかったなあ。
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この旅館にはもう二度と泊るまい。
鉛温泉の理想的な利用方法。
マイカーで訪れて立ち寄り湯(要時間確認)をして帰る……そんなところかな?
お湯は文句なくいいんだから。
は〜毒吐き毒吐き。
最後にお清めの猫写真置いておきます。
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どっとはらい。