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編集者になるために、これからの時代に求められること

 編集者になりたい。そう思う人は意外にも多く当事者としては「そんないいもんじゃないよ」ってついアドバイスしたくなったり。

 そうはいってもなりたい人がいる以上、門戸を広げるべきだし、編集者とはなにかを伝えるのも現役の務め。ということで編集者のなりかた、そして求められるスキルをお伝えします。

■編集者にも種類があることを知ろう

 ひとくちに編集者といっても実はいくつもの種類がある。大きくわけて「フリーランス」と「正社員」だ。フリーランスの編集者は出版社勤務を経て独立。編集プロダクション運営やライター業を生業にする人々。

 いっぽうの社員系の編集者は実は多くいる。一番想像されるのが出版社勤務の編集者。よく「版元(はんもと)」なんて呼ばれる書籍などの出版元の出版社に勤務する社員だ。

 小学館、集英社、講談社あたりが超大手(年収も1000万円はザラ)。これ以外にも医学書を専門にする出版社など、多くの出版社が実は存在する。これらの人を世間一般では「編集者」と呼ぶだろう。

 これ以外に編集プロダクションに属する編集者がいる。ライター集団だったり、DTP(ページのレイアウトを組んだりする)などまで請け負う人だったり、その業態は様々。しかし彼ら自身が独自で本を出版することはあまりない。

 またの機会に説明するが日本ではたとえ本を作ろうと思っても、そう簡単に書籍を全国の書店に流通させることはできない。だから編集プロダクションの編集者は企画を「版元」に売り込んで下請けとして本を制作したり、企業広報誌の編集、イベントプログラムの制作なども請け負う編集者だ。

 割といろいろなタイプの編集者が世の中にはいる。ちなみに私は版元の編集者です。

■編集者になりたいならとにかく自分の感性を信じる、磨く

 編集者の仕事は多岐に渡る。原稿を書かないといけない編集部もあるし、逆にアイデアだけポンポン出していればOKなとこもあるし。作家先生にやる気を出してもらうのが仕事の編集者もいれば、不倫ネタを追ってスモークフィルムを貼ったワゴン車から芸能人を見張る編集者もいる。

 編集者志望の人に共通して言えることは、とにかく自分の感性を磨くこと。これは原稿が上手く書けるとかではない。

「ものごとをいかに感じられるか」です。

 数年前に油を使わないフライヤーが流行った。原理がよくわからないが「揚げない唐揚げ」ができる。もう脳内に衝撃が走ったんです、ヨドバシAKIBAで。

 こんな革命的なことが起こっているのに、世間一般はやれジューシー、やれカロリーが、そんな切り口ばかり。「宇宙空間で実は酸素が吸えました」くらい革命的なことなのに。

 だからなにも本をたくさん読みました、とかは必要ない。自分だけの切り口をしっかり持つこと。でも正直な話をすれば後天的にこれを身に着けるのはなかなか難しい。

 だからこそ大事なのは自己満足で終わらせないこと。ただの意識高い人は編集者として不要です。こう言っても多いんですよ、自分は完璧なセンス溢れる人材だと思っている人。それはダメです。

 アウトプットを続けて自分が世間からどう捉えられているか、どのような人種に自分の存在を受け入れてもらえるかを知るべきなのです。

 それにはブログ、Twitter、FB、インスタ、とにかくなんでもかんでもバンバン書く。それに尽きるんです。

■チャンスをモノにするにはまず出版界へ

 出版社への入社はそこそこハードルが高い。特に大手は中途採用はあってももちろん求めるのは即戦力、かといって新卒は早稲田、慶應、国立大が募る超難関。

 そうなると狭き門もいいとこだけれど、編集者は前述どおり一つの形だけではない。編集プロダクションの門を叩き、ミッチリと基礎を固めるというのも正しい(ただ待遇としては厳しいところも多いけど)。

 編集者になるにはとにかく業界に入ること。そこで華が咲くこともある。もちろん咲かないこともある。ある程度はセンス、それは正直あります。

 こういうとやや突き放す感じに受け止められるかもしれませんが、やってみないとわからないのが編集の仕事です。

■文学的センスなんて今やオマケにしか過ぎない

 最後にこれからの編集者に求められるものをご紹介したい。常々僕は言っているのですが、文学的センスはまったくといって重要ではありません。文学部国文科が偉いなんてことは1000%ありません。

 2020年の編集者に求められる技能は下記のとおりです。

・SEOの原理を知り常に触れていること
・情報収集をいかに幅広く、濃くできるか
・記事の内容がよければ評価されると思わない精神力

 まずはSEO。紙媒体を経験することはこれからの時代も必要です。しかしやがてWeb媒体へシフトするのは明白で、きっちりとSEOを理解することが必要になります。

 雑誌などの広告収入はもちろん大切なものですが、Web媒体はGoogleなどのネットワーク広告に支えられています。記事のプレゼンスを高める方法の原理を理解することが必要です。

 これがわからない編集者は今後不要になります。ぜひ今のうちに学んでいただけると自分の「強み」として使えます。

■記事が良ければ評価される、はもう古い?

 編集者は企画が命。これは古の時代から変わらないスタンダード。しかし現代において媒体は紙からWebへと移り変わる潮流のなか、やはりいい記事を書いても読者に届かないのではなんの意味もない。

 交通アクセスが悪い超辺鄙な場所に途轍もなく美味しいレストランを開いたとしても、都心のオフィス街にある「まあまあ」なレストランに売り上げは負けるだろう。これと同じことが編集業界でも起きている。

 蓄えがたっぷりで老後を豊かに過ごすなら前者の経営スタイルは問題ないけれど、バリバリとお金を生まないと編集者としては食いぶちも稼げなくなる。せっかく料理が上手くても稼げないと意味がない。

 だからこそ多くの人の目に自分の企画を届けるという手段を持つ編集者が必要になる。これはなにもSNSのフォロワー数ということでなく、SEOやインターネットの仕組みをバッチリ理解しているかどうかということがキモになる。

 そのためにはライバル媒体を知り尽くし、SEOで勝つ仕組みを構築することが絶対条件。細かいことはエンジニアさんに任せるとしても、原理原則を知らなければ絶対に勝てない戦いがすでに始まっている。

 ぜひ編集者になりたい、という方は上記のことを少しずつ意識していってください。なにかが変わると思います。

 

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