見つけてしまったら、食べずにはいられない。真夜中のまぁるいあれ

以前見かけたのは確か、3ヶ月ほど前のこと。いいにおいがする、と思ったのも束の間、なんだか人が群がってきてしまってその日は諦めてしまったのでした。

あの日は本当に後悔したなぁ。またいたら、きっと…

なんてこともすっかり忘れていたのですが、そんな今日。また出会ってしまったのです。ころんとかわいい、甘い甘いにおいを纏った「あれ」に。

「あれ」の正体というのは、子どもの頃誰しも口にしたことがあるであろう、ベビーカステラ。最近ではお祭りの屋台なんかでしかあまり見ることもなくなりましたが、漂ってくるあま〜いはちみつの香りところんとしたフォルム、そして子ども心にノスタルジーを感じてしまうたたずまいに心惹かれたものです。

そんなベビーカステラも最近ではこうして、移動トラックでやってくるのですが、意外と出来上がるのに時間がかかる。そしてだいたいが夕飯時。「早く帰ってごはん作らなあかんけど、買いたいけど、まぁ明日もいるやろ」なんて思って後ろ髪を引かれながら後にするのですが、だいたい次の日にはいないものです。そして存在すら忘れたころに再会しちゃったんだもの。そんなの、もう今日は食べずにはいられません。

見てこのノスタルジー。間も無く終電という駅前に、ぽつん。そして煌々と照らされた少々無理矢理感のある「すずや」の暖簾が目を惹きます。

時間は間も無く23時。そんなこと構ってられません。

「にしても30個1,000円て、ちょっと高くないか…？」と注文しながら思いましたが、今日はどうしても食べたいんだもの。

「おねーさん、レシート無い代わりに出来立てどーぞ」。軽い感じのお兄さんが出来立てをひとつくださいました。なんか、商売上手ですよね。今焼けたばっかりのあったかいカステラをひとつ。これだけでちょっと得した気分。焼き立ては特に、表面が薄くてパリッとしているのが嬉しい。私はひとくちでいただくのはなんか勿体無いと思ってしまうタイプなのですが、この噛み締めた時に歯が埋まっていく感じがたまらないのです。あぁ、タマラナイ。

「寒い中待ってくれたからおまけ入れとくね〜」と言われ、袋にぽいぽい焼きたてを追加してくれました。30個入りのはずが、おそらく10個は追加されているはず。この時点で既に1,000円もかかってしまったことはすっかり忘れさせてくれました。

焼きたては蒸気が出ちゃうので袋は開けたまま。もういいにおいを振りまいて、大事に連れて帰ります。もちろんつまみ食いしながらです。

のぞくとこう。顔を覆う湯気があまい。ほわほわ。ふかふか。

はぁぁ、幸せって簡単に手に入るものです。今日は仕事でホテル泊まりだったので、これからこのころころをお供にもう少しがんばることにいたします。そして夜中に食べるからこそ、幸せ。だと思っています。

さぁ、次はどこで出会えるでしょうか。