森ノオトは緩やかに地域のベースカラーをつくっている|鴨志田惣菜店・岡本麻希子さん(取材先)
森ノオトにかかわる人たちの声を聞きながら、ローカルメディアのあるまちの現在を描いていくインタビュー企画。4回目は、森ノオトの事務所と同じく青葉区鴨志田町に店舗を構え、地域の方に愛される「鴨志田惣菜店」店長の岡本麻希子さんです。岡本さんは地元のメディア・森ノオトをどう見ているのでしょうか?編集部スタッフの佐藤沙織がお伺いしました。
——岡本さんは2011年に鴨志田惣菜店をオープンし、2012年に森ノオトの取材を受けられていますね。今のようなイートインスペース併設のお弁当屋さんを、どうしてオープンしたのですか?
自分の「あったらいいな…」に近いお店をつくりたいと思っていました。
自分でも本気を出したら作れるんだけど、っていうことを代わりにやって、特別ではないけど普段がすごくよくなる、そんなお店にと思っています。だから周辺に住む人がふらっと利用できる店でありたいし、道の駅やサービスエリアのように、来る人が限定されないような場所でもありたいなと。
——森ノオトと畑は違えど同じ地域で活動する仲間として、岡本さんには森ノオトの記事はどのように見えていますか?
森ノオトの記事は、読んでいて知りたいことが知りたいところまで取材されているという感じ。表面の情報らしきものだけではなくて、その奥の情報まである。それがどこかから持ってきた切り貼りの情報じゃなくて、ライターさんが行って見てきた本当の情報ですよね。それはありそうでなかなかないことだと思います。情報ってあふれているように見えるけど、本当に知りたいところまで書いてあるものって少なくて、多くの情報は同じようなところまでしかとれない。
私はお弁当を作っていて、一つの枠を埋めるためだけのおかずはいらないと考えていて。色味のためだけの飾りは入れずに、どのおかずを食べてもおいしいというのが理想なんです。うまいこと言うようですけど、森ノオトもそれに似ていると感じます。どの記事を見ても役に立つというのは稀有なことだと思いますし、そういうコンテンツづくりへの信頼感はずっと持っています。
——2021年、鴨志田惣菜店さんの求人情報を森ノオトのSNSに載せる機会をいただきましたね。(これが2022年からスタートした「Hello local work」につながっています)森ノオトに声をかけてくださったのも、そういう流れからだったのでしょうか?
そうですね。一緒に働く人を探すのに、顔が見える人にお願いしたいという気持ちがありました。森ノオトへの信頼感があるし、応募する方も逆の信頼感があるんじゃないかなと思うんです。
自分でやろうとすると一人よがりになりがちだけど、森ノオトからの発信によって、自分たちを客観的な場所に置いてもらえる。自分にはできない情報発信ができる方が地域にいることの心強さを感じます。
——岡本さんは森ノオトがあることで、自分や周りに何か変化を感じていますか?
森ノオトが始まった時と今では、地域の色がすごく変わっているかもしれないですね。毎日グラデーションのようにその時によっていろんな色をしているけど、時間をかけて森ノオトが地域に浸透してきたことで、じわっと全体に変化してきていると思うんです。
みんなあんまり気づいていないかもしれないですけど地域のベースカラーというか、トーンがつくり出されている。森ノオトさんが継続して発信してこられた結果が、そうなってきたんじゃないかな。うちのお店もふんわりそれに染まっています。
——そんな地域のカラーは、岡本さんにとってどうですか?
森ノオトはたぶん、ゆるやかに地域全体の雰囲気づくりをしているんじゃないかなって思っています。
森ノオトからの発信を受け取るたびに、ちゃんとやっていることが伝わっています。すべての記事を読んでいるわけではないですけど、雰囲気を受け取っています。地域の中にちゃんとやっている人がいるということが、蓄積されていって、それが地域の人はなんとなく安心と思えるんじゃないかな。それが、私が考える森ノオトの地域に与える雰囲気づくりです。
食べ物も〜だけっていうのは好きじゃなくて、何かに偏っている情報って敬遠しちゃいます。森ノオトの情報は一度練られたもの、という安心感がありますね。これからもジャンルに偏らず、情報の発信を続けていってほしいなと思います。
(おわりに)
森ノオトにかかわり始めてから鴨志田惣菜店の存在を知った私は、行く度に楽しめるバリエーション豊かなお惣菜と落ち着いた空間が好きになり、こんなお店が近くにあればいいのに……と考えて止みませんでした。
今回岡本さんがお話してくださった「森ノオトには本当の情報がある」という言葉は、まさに私が読者として森ノオトを見ていた時の気持ちと重なりました。それを地域で活動する方の口から聞くことができたのは、自分の気持ちの答え合わせをしたようで深い感慨を覚えます。
今は情報を伝える側に立ち、その難しさを日々感じていますが、時間をかけても受け取ってくれる方々がいると思うと心強い思いです。安心できると感じてもらえる情報発信を、これからも丁寧に続けていきたいと思います。
(取材・執筆:佐藤沙織)
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