森ノオトは「好き」を表現してよい場所。「書くこと」は、私らしく立っていられる力になる
ウェブメディア『森ノオト』で記事を書く市民ライターさんに、これまで書いてきた記事を振り返りながら、「森ノオトで記事をつくること」について語ってもらうインタビュー企画がスタートしました。
三人目は、2020年に森ノオトライターになり、子育てとアートの関係への興味から大学院で研究を始めるなど、探究心旺盛な松井ともこさんです。最近は、夫さんのご実家のみかん農家の営業サポート、時々舞台制作のお仕事、地域活動としてトトリネコと森ノオトライター、そしてご自身の研究、と多忙ながら充実した日々を送っているそうです。松井さんが森ノオトで記事を書くことで実感していることや、取材相手との関係性について、編集部スタッフの梅原が伺いました。
——昨年、大学院での論文作成を優先してライター活動は一時お休みしていましたが、ずっと書きたいことを温めていたよね。「旗振りの大原さん」を追った記事は、これぞローカルメディアならでは!と感じるような大作でした。
はい。地域で出会った、推しの大原さんを紹介できて、関係者の皆さんも喜んでくれて幸せでした(笑)。大原さんはとてもシャイな方なんですけど、いつか取材したいからと、お声がけして、一昨年には取材許可をいただいていたので、もう、思いがあふれて。
——今の大原さんに至るまでの生き様、背景も丁寧に描かれていて、長文なんだけど引き込まれてぐんぐん読んでしまう。熱量があって編集中にも胸が熱くなったよ。
ありがとうございます。私は、小学生の時に見たミュージカルに衝撃を受けて、その世界に関わりたいという夢から始まり、舞台俳優のマネージャーや文化施設で働いてきた経験があるので、裏側とか裏方の仕事に光を当てて伝えたくなるんですね、きっと。
これは森ノオトの魅力だと思うんですけど、記事ってラブレターというか、大好きだよと伝えるツールなんだなあって。好きなことを好きに書いてよいと言われるメディアってなかなかないと思うんです。
私は、結構自分ではブレーキをかけてしまうタイプなので、もっと表現していいよってポンと背中を押してもらいたい。だから、編集部のみなさんが、本質的な部分を深く汲み取ってくれて、私が書きたいと思っていることを引き出してくれるのが楽しいし、一人では出せない力が今回も思いきり出せたのだと思います。
——大原さんとの出会いのきっかけとなった楓公園愛護会の取材も面白かったよね。
身近な、子どもたちとも利用していた公園を、ボランティアでお手入れしている方々がいるなんてと感動しました。楓公園の取材では、愛護会会長の仲津さんとの縁ができました、その後も何かと連絡をいただいたり、ゆるやかな交流が続いています。あの中では、大原さんは控えめでしたが存在感はありました。
——編集部から、ここの取材どう?とお仕事で依頼したものに関しても、快く引き受けてくれているよね。自分発ではない場合にも、下準備として、その場を訪ねたり時には買い物したりを当たり前のようにやるとか、取材関係者への後日確認を丁寧にするところなどが、プロっぽくてすごいなあと感心しています。
声がけいただく取材先が、私の特性や好みに合っているからというのも大きいです。そこをちゃんと考えて提案していただいているなあと感じます。なので、取材対象を好きになれる。既に知っている人やお店でもそうですが、取材で新しい世界を知れる面白さを体験させてもらってます。
——インタビューにあたり、改めてこれまでの記事を読み直してみたのですが、最初の原稿に、テーマや方向性の原型が出ているなあと改めて思いました。
友人で、小児科医の小澤礼美さんの記事ですね。たしか、あの時は、なみこさん、あゆみさん、まどかさんの3人に見ていただいて、最初は、あの倍ぐらいの長さだったと思います(笑)。
——背景や裏側を丁寧に書きたいと長くなりがちよね(笑)。あと、その人がその時話している感じを出したいのだな。そこが演劇的だなと感じています。ところでライター養成講座にはなぜ参加したの?
ライターになりたいと思ったわけではないんですよね。2012年に青葉区に越してきて、森ノオトは読者として読んで知っていて、いいなあと思うことが多かったので、漠然と、森ノオトの輪の中に入ってみたいと思いました。
最近の「たまれ」訪問の記事でも書いたのですが、そもそもは、母を難病で亡くしたことをきっかけに、私自身がとあるNPOの患者の会に救われたという経験があります。それと同時に、子育てに困難さを抱えていた時に助けられた体験も重なって、自分から社会的な活動だったり、地域の人々と積極的につながっていかないと、という気持ちが高まっていたんです。
取材して書くことは、かつての居場所、仕事で舞台や芝居をチームでつくる感覚と似ていて楽しくて、終わったあとの喜びがあります。論文もそうでしたが、「書くこと」で自分が立っていられる。だから、これからも、ライターを続けていきたいです。
——おお、なんかすごいところにつながったね!
(取材を終えて)
コミュニティ、アート、広い意味での教育など、興味の範囲が似ているため、時々個別に会って話をする松井さん。取材後、松井さんから「今度、逆に私がインタビューってできるんですか?森ノオトの裏側、編集部の皆さんの話を聞きたいです」と申し出がありました。
松井さんは、いち市民ライターに留まらず、企画・編集側の役割を担えるのでは?と感じていたこともあり、提案してくれたことに頼もしさを感じました。
これからも、地域をベースに、「好き」を思いっきり表現できるメディアを守り、つくっていきましょう!
(文・梅原昭子)