「私もいま、誰かの人生を変える記事を書いているのかもしれない」ローカルな記事が人生の転機になった葛西さんのはなし
ウェブメディア『森ノオト』で記事を書く市民ライターさんに、これまで書いてきた記事を振り返りながら、「森ノオトで記事をつくること」について語ってもらうインタビュー企画がスタートしました。
四人目は、2024年度のライター養成講座を受講し、ほやほやの新人ライターとして奮闘する葛西麻理さんです。葛西さんはドッグセラピーの活動の幅を広げながら、現在ドッグトレーナーの資格にも挑戦中。愛犬家ならではの視点から、犬にまつわる記事を続々執筆しています。記事から生まれた出会いのこと、これから書きたい記事のこと、編集部スタッフの佐藤美加が聞いてきました。インタビューの場所としてお邪魔したのは森ノオト事務所からもほど近い、若草台のドッグカフェ「SHEi」。愛犬ノエルくんも一緒です!
——葛西さん、森ノオトのライターになって以降、なんだか実生活にも大きな変化が起きているらしいって、編集部でも話題になっていたんですよ!
そうなんです(笑)。そもそも森ノオトのことを知ったのは、佐藤沙織さんが書いたここ、SHEiの記事だったんです。お店のことが大好きになって何度も足を運んでいるうちに、なんと、時々働かせていただくことになって。素敵なお店で知識を生かして働けるのはすごくうれしいし、賄い料理がおいしすぎるのもすごく幸せ(笑)!
2本目に書いたデイサービスひびきの家 のスタッフさんが働いていることを知って、ご家族と愛犬を連れて会いに来てくれたこともあって、とてもうれしかったですね。
それから、ライター養成講座の同期が執筆をしたことがご縁で、NPO法人優タウンさんで、不登校に悩みを抱えている親子のためのドッグセラピーの会を開催させていただいたりもしました。
本当に、森ノオトと出会ってから、ずいぶんと生活が変わったなぁと自分でも思います!この街に根ざした暮らしになった、というか。
——まさにローカルライフを堪能していますね!森ノオト記事がきっかけで、葛西さんの生活に変化が起きたという話を聞くと、しみじみうれしさが込み上げてきます。ところで葛西さんはどんなきっかけで、森ノオトのライター養成講座を受けようと思ったんですか?
私、ずーっとフルタイムで仕事をしていて。朝早く起きて1時間通勤ラッシュの電車にゆられて職場へ行き、夜にまた1時間かけて帰ってくる、という暮らしを結婚前も結婚してからもずっと続けてたんですけど、去年、怪我をして腰を痛めて手術をすることになって。しばらく仕事を休まなくてはいけないこの時間を、自分の人生においても、ちょっと立ち止まる時間にしてみようってふと思ったんですよね。
リハビリしながら過ごしている中で、森ノオトの記事を見つけたんです。それが沙織さんの書いたSHEiさんの記事。ただ単に、街のドッグカフェの情報を知りたくて検索して辿り着いたんですが、読むほどに、詩的、と言ったら言い過ぎかもしれないけれど、書く人のリズムというか声が聞こえてくるような文章だなって思ったんです。ネット記事なんていっぱいあるけど、書いた人の思いが透けてくる文章なんてこれまで読んだことなくて。
で、ぼんやりとこんな記事を書いてみたいな、書き手になってみたいなって思っていたところに、ライター養成講座開講のお知らせを発見して、これは!!とピンときて申し込んでみました。これまで取材記事なんて書いたことはなかったんですけど、募集要項に「未経験でも森ノオトが伴走します」って書いてあって。その「伴走」という言葉に温かいものを感じて、背中を押してもらいました。
——実際、養成講座を受けてみてどうでしたか?
蓋を開けてみたら、すでに書くことを仕事にしている人が多くて、びっくり&ちょっと心配になってしまって。未経験の私でも書けるかな、大丈夫かなって思っていたけれど、ちゃんと編集部のみなさんに「伴走」してもらって、記事を仕上げることができました。上下関係のある指導、というようなものではなくて、どうしたらいい記事になるか一緒に考えてもらう、まさに「伴走」だったのが、本当に心強かったなー!
心配していた“ライター経験の有無”とか、“今の職業”なんて肩書きは、養成講座の最中、ぜーんぜん気にならなかった。そういうのを全てとっぱらって、着飾らない素のまんまの自分でいられたんですよね。純粋な「養成講座の同期」という、地域の仲間と出会えて本当に良かったなって思っています。
あ、そうそう、これ、私の宝物なんですよ。
—— わぁ、これは、ライター養成講座でつくった「A to Z ノートブック」!自己紹介をするためのワークショップで使っているものですね。
そうですそうです!自分のと、同期のみんなの「A to Z」を、大切に取ってあるんです。
仕事を辞めて参加したライター養成講座で、私は、今後、自分の何を軸にして生きていこうかな、ってゆっくり考えることになりました。「A to Z」に自分のことや森ノオトのこと、街のことを書きながら、自分を見つめ直したんですよね。
ライター養成講座を受けて記事をつくる中で、私はこれから、私の暮らす「街」の中で、自分のできることをしながら生きていきたいな、って思えました。森ノオトを知ってライターになってから、生活が大きく変わった実感があります。普通に街を歩いていても、なんだか街の見え方が変わってきたような感覚さえあるんです。
ただ職場を行き来していたこれまでの生活では、自分の暮らしている「街」になんて目を向けることはなかったなぁってしみじみします。この街に、こんな素敵なローカルメディアが存在してくれていてほんとうによかったです!
—— 葛西さんがこれまでに書いた記事について、振り返っていただけますか?
▼何事も全力!愛犬家のイタリアンシェフ。OSTERIA PACE 本多伸行さん
https://morinooto.jp/2024/04/04/osteriapace/
最初の記事は、愛犬を連れて食べに行っていた大好きなお店のことを書こうと思ったんです。取材してみて、オーナーシェフ・本多さんのこれまでの人生経験、さまざまなストーリーを深く知ってますますお店のことが好きになりました。オーナーの生き方がそのままお店への姿勢に反映されているのだと気づいたのも大きかった。他のお店を見る目も変わったように思います。
▼犬とコミュニケーションに癒やされる第二のおうち。 デイサービスひびきの家
https://morinooto.jp/2024/06/26/hibikinoie/
これから自分で犬に関わる仕事をして地元で生きていきたい、と考えた時に、生かせる場所って近くにあるのかな?と思ったのが執筆のきっかけでした。施設に直接電話をしてみたり、青葉区役所へ出向いて担当の方に相談し一緒に探していただいたり。ようやく見つけたのが「デイサービスひびきの家」だったんですが、実は何度も断られていたんです。それでも3-4回足を運んで思いを伝え続けて。最終的には「熱意に負けた!」って言われて取材させていただけることになりました(笑)。記事が完成した時には本当に喜んでくださって。利用者さんにプリントアウトして記事を配ってくださったり、ブログに取材のことを載せていただいたりもしました。私が素敵だと思った活動を、必要としている誰かに届く「記事」と言う形にして伝えられたこと。しかも取材相手にも喜んでいただけた、というのはとても貴重な体験でした。
▼音楽は体験の先に。家族で通える音楽教室「芸術村あすなろ」
https://morinooto.jp/2024/11/06/asunaro/
こちらは犬とは離れて記事を書くチャレンジですね(笑)。知人が教室に通っているご縁で、素晴らしい活動をぜひ紹介したいと思って書きました。ちょっと飛躍しちゃうかもしれないですけど、取材を通じて、子育ては犬育てにも似ているなぁと思ったんです。この先どうなるかわからない不安を抱えつつも、成長を信じて、その過程をちゃんと見守る。その眼差しは、子どもに向けるものも犬へのものも同じだな、という気づきもありました。
—— これから、どんな記事を書きたいと考えていますか?やっぱり、犬関係の記事なのでしょうか?
そうですね!私は今、ドッグトレーナーの資格を取るための勉強を続けています。いつかは、この横浜市青葉区でドッグトレーナーやドッグセラピーの仕事ができたらいいなと思っているんです。これは大きな夢ですけれど、ゆくゆくは、犬を介した地域コミュニティをつくりたいな、とも考えているんですよ。横浜市の中でも青葉区は犬の登録頭数が最も多い地域。森ノオトでも私らしく「犬を介したコミュニケーション」の記事をこれからも書いていけたらうれしいです。私がそうであったように、「私もいま、誰かの人生を変える記事を書いているのかもしれない」って思うと背筋が伸びる思いがします!これからも書くことにチャレンジし続けたいです。
(取材を終えて)
森ノオトの養成講座を経て新たなライターさんが増えるたび、「あぁ、またこの街を見る新たな眼差しが増えたなぁ」といううれしさが込み上げてきます。葛西さんは、森ノオトに「犬と一緒の青葉区の暮らし」という新たな視点をもたらしてくれました。ライターが増えれば増えるほど、街の切り取り方が増えていき、街を読み解く解像度も上がっていくような心強さを覚えます。
それからやはり特筆すべきは、「街とつながって生きていく」選択をした葛西さんの軽やかさ、そして静かな覚悟のすごさ!「記事によって地域と読み手をつなぎ、一歩を踏み出すきっかけをつくる」ことを願って運営している森ノオトにとっては、葛西さんはほんとうにロールモデルのような人だな、と思います。人生を少し立ち止まって考えた彼女の選択の先にある今の豊かさを思う時、ローカルメディアを運営していくよろこびと責任を同時に噛み締めています。これからもみんなで森ノオトを大切に育てていきましょうね。
(文:佐藤美加)
おまけ