laatikko

ややマイナーなものを栄養にして生きているインドアパーソンです。

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最近の記事

改姓して思うこと 匿名化された自己

結婚して改姓した友人の話。 ----- 選択的夫婦別姓を支持していたし、自身のルーツを示す姓を捨てざるを得なかった海外の人のエッセイを読んで、改姓の強制がアイデンティティに及ぼす影響についてずっと考えてきた。 いざ変えてみると、煩わしさと理不尽さに憤りを覚え、信じられない、かくも簡単に、と思った。しかし同時に、憤っても仕方ない、という諦念も生じ、頭の片隅で、なんとか憤りを鎮めて善処しようと努力を始めたのがわかった。 一つ感じたのは、新たな姓を含むわたしの名前は、なんの

    • 愛と家族と人生の”完璧な”物語:ドラマ「Fleabag(フリーバッグ)」

      9月に発表された米エミー賞で最優秀コメディ主演女優、最優秀コメディ・シリーズ、最優秀コメディ脚本など6部門をさらったドラマFleabag。 20〜25分で6話×2シーズンで完結する短めのシリーズなのですが、明確な起承転結がなく、いまだに単純に「ココが面白い!」と表現しきれないまま、あのシーンはこんな意味があるのかな、あのシーンは……と思考が巡ってしまう、独特の深みのある物語でした。 ファイナルシーズンであるシーズン2が公開されたときには「完璧」という評価も多かったという本作

      • 最高のネーミングセンスを夜のお供に:Late Night TalesとNight Time Stories

        夜に合う曲が好きです。好きな曲を見つけてシェアしようとすると、だいたい「夜のBGM」という言葉がしっくりくる。 リズム感はあるんだけど音量をガツンと上げる必要はなく、ちょっと淡々としていて(私はよく「ボーカルに程よくやる気がない」という言い方をしています)、テンションが上がりすぎないのが大事です。 長いことチルアウト系の音楽を探してきて、ふとプレイリストを眺めたら、アーティストは違えど、みな同じアルバム名ーLate Night Talesというタイトルがついていることに気づ

        • グレッグ・イーガン『ビット・プレイヤー』を読んでいます②

          5編目の『鰐乗り』に入りました。 結婚生活1万と309年目の夫婦が、死ぬ前の大プロジェクトとして、銀河系のあらゆる周辺種族からの接触を拒んでいる「孤高世界」とのコンタクトを試みる話です。 ーーこれって、「ソラリス」で描かれる、理解を超えた相手とのコンタクトの試みを彷彿とさせますよね。 ソラリスは、「理解できないもの」との物理的精神的な対峙を主軸に据え、アイデンティティSFとしての要素も多分にありますが、『鰐乗り』の問いの立て方はすこし色合いが違います。 生物学的制約(

        • 改姓して思うこと 匿名化された自己

        • 愛と家族と人生の”完璧な”物語:ドラマ「Fleabag(フリーバッグ)」

        • 最高のネーミングセンスを夜のお供に:Late Night TalesとNight Time Stories

        • グレッグ・イーガン『ビット・プレイヤー』を読んでいます②

          グレッグ・イーガン『ビット・プレイヤー』を読んでいます

          待ちに待った久々の短編集。早速買って読んでますが、あっという間に6編中4編を読み終わってしまいました。 今のところ、アイデンティティ模索のテーマがさまざまな世界設定&語り口と絡み、これぞSFの醍醐味!という楽しさであふれています。 各編の世界設定、アイデンティティを問いなおすIFはこんな感じです。 『七色覚』 「人口網膜に視覚改変アプリを入れて世界の見え方が変わったら?」 『不気味の谷』 「故人の記憶をインポートされたアンドロイドが、インポートされなかった記憶の断片を

          グレッグ・イーガン『ビット・プレイヤー』を読んでいます

          疲れた人間のための、頭と心の調整剤ーミランダ・ジュライの短編

          疲れたときは、まず長い文章を読まなくなるので、短編を読みます。内容はほどよく現実から離れられるものがいい。サラリーマン小説なんてもってのほか、時事系や、学生ものも余計な記憶や思考を喚起するのでやめておく。となると…疲れのレベルがもっとも高い時、わたしがいつもたどり着くのはミランダ・ジュライの「いちばんここに似合う人」です。 https://www.shinchosha.co.jp/sp/book/590085/ ミランダ・ジュライの小説では、登場人物が日常的にカウンセリン

          疲れた人間のための、頭と心の調整剤ーミランダ・ジュライの短編

          理解できないものと闘い、歌うー「ソラリス」オペラ

          先日、スタニスワフ・レムのSF小説「ソラリス」のオペラを観てきました。オペラ鑑賞はほぼ初めてです。SFをオペラにするだけでも、言葉を尽くして作家が構築するユニークな世界観を表現するのは非常に難しいはず。 それを、ソラリスで……心理描写と人知を超えた「ソラリスの海」についての理論的考察が大半を占めるこの小説でやるとどうなるのか。見ると今回の公演はたった1回ではありませんか。なんとか目撃したい!という一心でチケットを取りました。 ステージには、青く照らされたパイプオルガンを背景

          理解できないものと闘い、歌うー「ソラリス」オペラ

          映画『黙ってピアノを弾いてくれ』

          チリー・ゴンザレスのドキュメンタリー映画、 Shut Up and Play the Piano『黙ってピアノを弾いてくれ』 を観てきました。ちょっとネタバレがあるかもしれません。 初めてチリー・ゴンザレスの名前を知ったのはダフト・パンクのピアノカバーです。夜、ひとり、静かな部屋で、思いついたように弾き始めたような軽やかさ。ふつうのカバーでもピアノ曲っぽくもない、これは何…?そこから芋づる式にSolo Pianoシリーズを聴きました。 これまでピアニスト映画といえば『情熱

          映画『黙ってピアノを弾いてくれ』

          都市のあらゆるスキマに/ゴードン・マッタ=クラーク展

          東京国立近代美術館で9月17日まで開催中の「ゴードン・マッタ=クラーク展」を観てきました。 1970年代にニューヨークを中心に活躍し、35歳で夭折したアーティスト、ゴードン・マッタ=クラーク(1943-78)。アート、建築、ストリートカルチャー、食など多くの分野でフォロワーを生み続ける先駆者の、アジア初回顧展です。 国立近代美術館公式サイト:http://www.momat.go.jp/am/exhibition/gmc/ 特別展チケットを買えば、2〜4階まで大充実の常設

          都市のあらゆるスキマに/ゴードン・マッタ=クラーク展

          スザンヌ・ヴェガのたたずまい

          ビルボードライブ東京でスザンヌ・ヴェガのライブを観てきました。 年齢も時代も飛び越えて変わらない声。Tストラップのフラットシューズ、黒いジャケット、黒いスキニーパンツ、サーモンピンクのインナー、シルクハット。 自分に似合うものを完全に把握している装いです。若い頃から、この眼差し、このたたずまいで歌ってきたんだろうなと思わされます。 今回のツアーでは、(記憶が正しければ)イギリス、ドバイ、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドと回り、朝6時に東京に到着。 大阪公演を終

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          衣食住からはじまる自己実現ー「クィア・アイ」

          Netflixで放映中の「クィア・アイ」は、さまざまな問題を抱えた依頼人の人生の再出発を、5人のクィアがつきっきりで応援する番組です。 https://www.netflix.com/jp/title/80160037 5人はそれぞれがファッション、美容、食、デザイン、カルチャーを担当していて、カルチャー以外はいわゆる「衣」「食」「住」。 5人(ファブ・ファイブ)は、プロの技術とこだわりを持っていますが、自分の好みを押し付けることはありません。番組の前半は、ファブ・ファ

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