1.5億円の資金調達したことで話題の超小型電気自動車「KGモーターズ ミニマムモビリティ」 気になる所は?
1.5億円の資金調達したことで話題となっているのが「KGモーターズ」だろう。
KGモーターズは現在開発を行っているのはミニマムモビリティコンセプトという原付ミニカー規格の電気自動車。
1人乗りのセンターポジションで走行する新たな楽しさを提供することを目指して開発されている。また、デザインは、1980年代のポラロイドカメラをモチーフとし、レトロな雰囲気と近未来的な要素を併せ持つ前後対称のデザインが特徴。
このデザインはマイクロカーだからこそ成功した車らしくないデザインで、従来の車っぽさを無くしている。マイクロカーは縦横比の関係で、どうしても幅が狭く屋根が高くなるので、一般的な乗用車のデザインを落とし込むと上下方向に間延びして非常にカッコ悪いデザインとなってしまう。
クルマっぽさを無くしたKGのミニマムモビリティコンセプトだが、車体の形にメリハリをつけるキャラクターラインはシンプルな直線を採用している。マイクロカーはクルマらしくない形状を意識しているのが多く、そのような車種はうねるようなキャラクターラインを採用しており、クルマらしくないスタイリングとなっているのが多いが、KGのミニマムモビリティはシンプルな直線や曲線を採用しており、クルマらしいキャラクターデザインを採用している。
筆者の個人的な見解としては、クルマらしくない前後対象のフォルムとクルマらしいシンプルなキャラクターラインの組み合わせで、クルマらしくないが玩具の質感に見せずクルマらしいスタイリングとなっているKGのミニマムモビリティは良いと思う。
また、一般的な原付ミニカーは樹脂ボディにラダーフレームという組み合わせなのに対して、KGのミニマムモビリティコンセプトは金属ボディでスペースフレームと思われる構成となっており、従来の原付ミニカーよりも本格的な構成だ。
また、ミニマムモビリティコンセプトは、フルドア仕様で雨風を遮ることができるだけでなく、マイクロモビリティでは貴重であるエアコンの装備を予定している。また、家庭用のAC100Vコンセントを利用して充電でき、1度の充電で約100kmの航続距離を実現することが可能だと謳っている。ソフトウェア面でも、OTAアップデートを通じて常に最新の機能や改善も予定されている。
ここで気になるのが様々なマイクロカーの欠点と言われている所をどのように解決するのかということ。
最初に気になるのが、多くのマイクロカーは、パワーステアリングが無いことによるステアリングの重さと、制動倍力装置が無いことによるブレーキ性能の低さが欠点として言われている。これは、ミツオカ・MC-1、タケオカ・アビー、日産・ニューモビリティコンセプト、トヨタ車体・コムス、トヨタ・C+Podといった超小型自動車のレビューで、欠点として必ず言われるほどとなっている。参考として、大手自動車会社が作った超小型自動車「トヨタ・C+Pod」は、ITmedia ビジネスオンラインの池田直渡「週刊モータージャーナル」で、トルク不足による遅さ、リニアリティが皆無で街乗り用途のクルマとして初期の踏力がいりすぎるなどの欠点を上げている。執筆者によると”まるでノンサーボのブレーキのようだ”と評しているが、筆者が調べた限りでは、どうやらC+Podのブレーキはノンサーボらしい。
(外部記事)
今年読まれた記事と、全力で止めたい超小型EV「C+pod」:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン
現在の超小型自動車を運転する上で注意したいのが、普通の軽自動車を単純に1人乗りサイズに小さくして、ある一定の運転性は維持しているという考え。現代社会でもはや装着されているのが当たり前といっていいパワーステアリングと制動倍力装置が無いクルマを日常使いできる人は多くないだろう。
KGのミニマムモビリティに関してはパワーステアリングや倍力措置付きブレーキの装着は不明だが、ミニマムモビリティは将来的にレベル4相当の自動運転を考えており、ステアリングやブレーキ問題に関しては、何かしらのアシストが加わると思われるので問題は無いのかもしれない。
但し、自動運転に参入するということは、自動運転で問題になっている電力消費問題にどのような対処を行うかが気になる所。特にミニマムモビリティはエアコン装着を予定しているため、エアコンと自動運転による電力消費で、航続距離がどれほど変わるだろうか。
KGのミニマムモビリティは、ドア付き、エアコン付き、航続距離100キロで車体価格100万円を予定しているらしいが、他社の殆どの原付きミニカーと比較した場合、自動運転抜きにしてもこの構成で100万円は相当安い。このようなマイクロカーは売れないため、車体の作りの割に価格が高くなってしまうというジンクスがある。恐らく100万円という低価格で販売するには、従来の販売や所有だけでなくリースやシェアリング、海外展開、プラットフォームを活用した新車種の展開までを考えないとここまで安くはできないだろう。
文:松本健多朗
(運営ウェブメディア「シクロライダー」から転載)