Turing Machine Alpha 高性能AIを搭載する自動運転のコンセプトカーの特徴とは
2023年10月28日から11月5日まで一般公開を行っていた「ジャパンモビリティショー2023」では、大企業だけでなくスタートアップなど様々な自動車会社が車両や部品、技術を展示していた。その中でもピックアップするのがTuringだ。
Turingは「We Overtake Tesla(私達はテスラを超える)」をミッションに、完全⾃動運転EVの量産を⽬指すスタートアップ企業。世界で初めて名人を倒した将棋AI「Ponanza」の開発者である⼭本⼀成と、カーネギーメロン⼤学で自動運転を研究し、Ph.D.を取得した⻘⽊俊介によって2021年に共同創業した企業。
Turingが開発を行っている自動運転技術は、人間のように”目”と”脳”で判断するのを謳っている。
現在、一般ユーザーが購入できる自動運転車の殆どは、運転の主体が人間で自動運転はあくまでも補助扱いのレベル2が殆ど。しかし、補助であっても様々な技術が使われている。例えば、日産プロパイロット2.0は7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーと3D高精度地図データを使用している。
Turingが開発を行っている自動運転技術の場合は、カメラによる視覚情報を高度なAIが人間のように理解して運転を判断する。これにより一般的な自動運転で問題になっている標識と看板の違いが認識できない問題の解消や、高精度地図データが無い場所での自動運転が期待できるだろう。同社はAI深層学習技術を⽤いた限定領域に留まらない完全自動運転の実現を目指している。完全自動運転は、自動運転レベルで言うレベル5に相当し、どんな場所も自動で移動できる夢物語ような乗り物だが、Turingはその世界を目指しているようだ。
Turingの自動運転システムは、通常の自動運転時は人間で言う小脳相当のレベル2自動運転を使用し、突発的な事が発生した場合は大脳相当にあたる開発中の自動運転技術を使うのを予定している。
カメラによる視覚情報を高度なAIが人間のように理解して運転を判断できるかと疑問に思う人は多いと思うが、Open AIの高機能チャットボット「ChatGPT」では画像を認識する機能が搭載されている。Turingのようにカメラによる視覚情報を高度なAIが人間のように理解して運転する自動運転技術は可能だろう。
ただ、筆者が気になったのが、AIを動かすためのGPU(画像処理装置)がどれほど必要なのか。GPUは画像を描写するために使われているが、近年注目されている生成AIも膨大なデータを瞬時に計算しないといけないので、高性能なGPUが必要となる。Stable Diffusion等の画像生成AIでもデスクトップタイプのゲーミング用PCに使われているGPUが必要だ。
自動運転を行うのなら画像生成AI以上のGPUが必要になるのは明白だ。Turing Machine Alphaに搭載されているGPUに関して伺った所、NVIDIA製のAIやデータ分析に使われているGPUを3個装備しており、これだけで自動車が購入できる価格とのこと。これは、Turingのカメラ+高性能AIの自動運転システムの問題の1つだろう。この問題に関してはNVIDIAが頑張って自動運転に対応できるレベルの高性能で低価格のGPUが作れるかが重要となるだろう。
車体に関しては、日産の電気自動車「リーフ」をベースにしている。車体デザインやフレームはTuringオリジナルだが、ペダルやハンドル、座席位置はリーフと同じ位置にしているとのこと。これは保安基準に通す際、独自の位置にすると保安基準適合を行う際の時間がかかるため、あえてリーフと同じ位置にしているようだ。
Turing Machine Alphaをよく見ると乗車位置が高めだが、低く構えたスポーツカーみたいに見えるのは、フロントガラスが殆ど無く、独自デザインの鋼鉄フレームを露出させ、車体下部をブラック塗装にすることで車体を引き締めているのもあるだろう。
Turing Machine Alphaの市販は不明だが、仮に市販を行う場合は、まずは光岡自動車・ゼロワンの初期モデルのように組立車登録になるだろう。
Turingは2027年に完全自動運転EVの量産を開始し、2030年には完全自動運転EVの10,000台の生産を目標としているとのこと。どのような完全自動運転EVが登場するのか期待したい所だ。
文:松本健多朗
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