拙筆📖５：『模倣の限界』

　なぜ他者の真似をするのだろうか？人真似で満足できるのだろうか？人真似をする人の気持ちがあまりよく分からない。自分自身の解法で問題を解決できれば、人真似などする必要性がない。人真似をするということは、その問題の解き方が自力では分からない事を認めているに等しいのではないだろうか？学習とは、言葉の通り、見本を習い、学ぶということだろう。真似ることは、物事を覚えるための初手のような感じもする。しかし、見本を真似ているだけで満足できるのだろうか？守破離という言葉もあるが、先ずは見本を忠実に守ることが、成果を出す上では必要な事なのかもしれないけれど...。
　私には学習能力がないので、ほぼ無手勝ち流である。自問自答を繰り返し、成果を達成する為の方法を自分なり試行錯誤しながら構築していく事が何より好きなのである。解法を覚えることで、その問題には対処できるだろうが、果たして他の問題に対して応用できるだろうか？周囲の人を見ていると、馬鹿の一つ覚えとしか思えないような行動選択をしている。見本を覚えれば一つの問題には確実に対処できるが、それでは応用が利かないことを、この人達の存在が証明しているのかもしれない。
　情報化できる要素であれば、それを参考に真似ることもできるのだろうが、視覚化できない対象をどのように真似するのだろうか？現実は刻一刻と動いている。同じ状況は二度と起こらない。類似した状況は起きるかもしれないけれど...。既存の問題に対する解法を覚えることは、解決手法を高度化する上では必要だろう。今までの人類の英知が築き上げた解決手法を踏襲するようなものである。型として残る手法を身に付けることは、現実の問題に対処する上では必須の事なのかもしれない。しかし、過去の叡智を機械化し、誰でも結果を出せる形にできれば、学習する手間は省ける。機械の操作を覚えれば、取り敢えず現状には追い付くことが出来る。肝心なのはその先である。既存の手法で対処できない問題の発生には、ただ既存の手法を模倣しているだけでは対処できないだろう。発生する現象を予測し、その現象に対処する手法を絶えず開発していかなければ、何れ問題には対処できなくなるだろう。結局、模倣をする事で結果を出すためには、後出しじゃんけんしかできない。起こりうる結果を予測して行動しなければ、先手を打つことはできないだろう。真面目なことは結構だが、それでは全て後追いになることは自明である。ある意味では、予測とは、ギャンブルに似ているのかもしれない。予測したことが必ず起こりうる訳ではないからだ。
　しかし、PDCAサイクルのように、物事を計画して実行しない限り、物事を反省することは出来ない。反省するために、計画を策定しているといってもいいのかもしれない。場当たり的で、刹那的な行動では、反省することはできないだろう。今という変化する現状に、意識を合わせているだけだからである。それでは反省する意識すら働かないだろう。