「ええ愛」とリアル。
昨年10月、ユニコーンが配信リリースした楽曲。
「AIに若い頃の彼らの歌声を学習」させ、同時に、
「現在の彼らが、当時作っていたような楽曲を制作」し、
「その曲をAIに歌わせ、配信リリースする」
という、昨今のAI事情に逆らうような作品。
なにせ、第三者ではなく本人たちが、いわば「自分たちの偽物」を作り上げたわけでもあるし。
とは言え、最初に聴いたときは衝撃でした。
確かに、発音やイントネーションに若干の違和感はあるものの、あの頃聴いていたユニコーンを思い起こさせるような歌声に、そりゃもう騒然と。
さらに、配信リリースから間を置かず。
いやなんなんすかユニコーン全員〇亡説って。
そもそも、民生さんはフェスで全国各地を駆け回り、川西さんは地元広島でテレビやラジオに大忙し、EBIさんやテッシーも仕事を抱え、なにより当のABEDONさん本人も、毎週YouTube配信を行ってるのに、全員〇亡説はさすがに無理があります。
ともあれ、この動画を見て思ったことは。
誤解を恐れず書くのなら。
「この人たちにかかったら、最新気鋭の技術すら玩具になるんだな」と。
この企画、デビュー間もないバンドがこういった試みを用いるならともかく、ユニコーンのようにキャリアも知名度も実力もあるバンドが、いわばAIに叩きつけた挑戦状(本人たちはそう思ってないだろうけど)のようで。
そして同時に感じた、この企画でいちばん動いていたABEDONさんの気概。
コロナ禍真っ只中の頃から、「(コロナ禍が明けても)もう昔のようには戻れない、戻れるわけがない」と言っていたABEDONさんが、
「こいつで遊んだら、面白いことになったぜ?」
と言いつつニヤリと笑う姿を、楽曲の中にぼんやりと見たような。
ユーモアの中に隠された抜群の攻撃力、丸腰のようでいて実際、数多の武器を隠し持つとんでもねぇオッサンたちだと、改めて実感した次第。
それにしても、「川西さんはAIの方が(歌が)上手かったから、ピッチを修正した」とは、年季の入ったチョットオンチーは伊達じゃない。
この『ええ愛のメモリ』リリースから約1ヶ月後にリリースされたアルバム『クロスロード』(本日、ちょうどリリース1周年)には、実際に本人たちが歌っているバージョンが収録されていて、それを聴いて何故かホッとした自分が。
AIを否定するわけではないですけど、やはり人の声には敵わない。
なにより、声に温度を感じる。
特にテッシーの歌は、本人の歌声にぬくもりを感じました。
それはたぶん、テッシーがこれまで生きてきた時間や、それによって培われた人柄が、声に反映されているのかな、とか。
声には生き様も映し出されるのね。
さて。
これを書くため久々に『ええ愛のメモリ』を聴いたのですが、なんなんだろうこのバリバリな違和感。
AIボーカルの『OAW!』、ABEDONさんっぽいけど全然ABEDONさんじゃない。誰ですかあなたは。