Limbus Companyがもっと面白くなるかもしれない考察①ー井戸編ー
!注意!
※この記事にはLobotomy Corporation, Library of Ruina, Limbus Company、及びそれらの外伝作品の重大なネタバレになる可能性があります。
それでも問題ない方のみ、この先へお進み下さい。
ごきげんよう、管理人様。
突然だが、あなたは「エンケファリン」についてご存じだろうか?
Lobotomy Corporationでは幻想体から精製される謎の物体という側面が強かったかもしれない。
Library of Ruinaの中ではあまり登場しなかったが、その使い方について少し言及されたりした。
Limbus Companyをやっていればアップデートの待ち時間に説明が載っているし、ストーリーの中でも時々その言葉を目にするだろう。
多かれ少なかれ、「どうやって作られ」「どう使われるか」を知っている。
では、それが「一体何なのか」という説明はあっただろうか?
このようにプロムン世界で出てきた言葉についてはその実態が不明瞭なものが多い。
それでも解き明かせる部分について言及し、特に今回は『井戸』という謎の言葉からその世界観を紐解いていきたい。
・井戸とイド
井戸とは、Lobotomy Coporationで初出の概念である。
あらゆる人間は『井戸』を持つ。
この『井戸』は底さえ見えないほどその深さを図ることは虚しく、はるか昔から存在していた人間の根幹である概念である、と言われている。
心だとか感情だとか、形のない概念の一種と思ってもらって良い。
ロボトミーの特異点はこれに関連したものであり、『この井戸から水を汲み上げる事で、幻想体を生み出す』事こそがロボトミーの真の特異点であり、その他のエンケファリンのようなエネルギー生産事業はロボトミーの偽りの姿に過ぎない。
この『井戸』という概念はユングの『自我と無意識』という本から来ている……のだが、実に厄介な事にこの『井戸』という言葉は『イド』とのダブルミーニングでもある。
そしてこの『イド』という別の概念は、フロイトの『自我とイド』という本から来ているのだ。
(正確には『井戸』という概念そのものはユングの本からは来ていないのだが、その『井戸』が持つ役割がユングの思考から切り離しにくいため今回このような書き方をしている。)
ここが少し複雑なところだろう。
本の内容については長く複雑なため割愛するが、要約すると『井戸』とは
①人間の根源(集合的無意識)である大河に繋がっているモノ(ユング)
②個人の人間が無意識に持つ欲望(フロイト)
という二つの側面を持つ言葉であると言える。
(ちなみに後述するが特にありがちな部分について言及しておくと、井戸は大河とは異なる事、人間の個人的な欲望も大河とは異なる事を念頭に置いて欲しい。)
実はLobotomy……というよりプロムンはこうしたダブルミーニング的な意味合いをもつ言葉を使うことが非常に多い。例えばW社を例に出すと、その意味合いがきっと伝わるはずだ。
さて、この前提を知った上でLobotomy Corporationの話をしよう。
上記のようにビナーは『井戸』を「平穏な夢を見ているモノだ。」と評しており、前談では職員がこれを「墓石の中で眠っている」とも言っている。
これは『井戸』か『イド』を指して眠っている・それが目覚めていない、ひいては個人の欲望が眠っている状態か『井戸』そのものが忘れられている様を表していると言っていいだろう。
使い方的にはおそらく前者だろうか。
ちなみに病の治療で選んだ手段を考えると、都市の人間はこの『井戸/イド』が抑圧されている状態であるということも余裕があれば覚えておいてほしい。
さらにもう一つ。『井戸』は水を汲み上げる装置だが、勿論一人でに水が溢れる事はない。
これは人間が無意識的に人間の根源である大河に繋がっているとはいえ、井戸は井戸。
『汲み上げる』ためのものがなければそこから大河の水を得る事は出来ないのだが……
……で、その井戸が何?と思った方。
実はこの概念は、幻想体とねじれの成り立ちにおける大きな違いの一つに関係しているので、慌てないで欲しい。
取り敢えず今回は『井戸』という言葉が二つの意味を持つこと、人間の無意識そのものとは同じ概念ではないこと、幻想体の成り立ちに関係していることを覚えておいて欲しい。
次回はこの井戸に関わる『汲み上げるモノ』についてお話ししよう。
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