お蔵だし小品 交渉人シリーズ 桜
こちらの小作品は2012年に、当時のブログで公開したものになります。
榎田尤利名義のBL小説『交渉人は黙らない』に始まる、交渉人シリーズの番外編です。このたび、パソコンの奥深くから探し出すことができましたので、再掲載いたしました。お楽しみいただければ幸いです。
BL作品なので、男性同士の恋愛描写がありますが、直接的なエロティックシーンはほぼございません。パンツパンツ言ってますが(笑)
桜 -sakura-
♪回る回るよ、お寿司は回る~。
と、某名曲の替え歌を口ずさんでいたら「そんなに寿司が食いたいんですか」と聞かれた。俺は脱水を終えたTシャツをぱんぱんと広げつつ「そういえばしばらく食ってないなあ」と答える。
日曜日。
晴れ。
ポカポカ陽気のベランダは、兵頭のマンションだ。
月に一度か二度、洗濯物を抱えてここに通うのが俺の習慣になりつつあった。だってうち、いま洗濯機ないんだよ。ずっとコインランドリー使ってたんだ。そして兵頭んとこは最新のドラム式洗濯機がある。 家電にうるさい松本が厳選した逸品だ。
これはもう、借りない手はないじゃないか。ちなみに乾燥もできる洗濯機だけど、俺は晴れてる限り、洗濯物はお日様に当てる主義だ。従って、本日も『一回すすぎ・エココース』で洗濯し、あとは手干しである。
「あんたほんと、回る寿司好きですね」
「うん。寿司と洗濯機はよく回るのがいい」
「そんで、いっつも寿司じゃないもの食いますよね」
「あー。からあげとかな」
「大学芋とか。プリンとか」
「だって回ってくるんだもん」
「だもん、じゃないでしょうが。かわいこぶってるとここで襲いますよ」
「こらこら、ここお外だぞ」
「外だけどベランダだから、俺の私有地です」
などとバカな会話も、のどかな休日には相応しい。
二軒先の民家では庭先の桜が見事に咲いている。
「兵頭。見ろよ、綺麗だな」
「……『あんたのほうが綺麗です』っていうとこですか?」
「おまえの脳みそにも桜が咲いてんのか」
「先輩、三週間ぶりの逢瀬なんです」
「だから会いに来たじゃん」
「嘘だ。あんたは洗濯しに来たんだ」
ぱぁん、と俺のトランクスを伸ばして兵頭が不服を言う。
なに拗ねてんだこいつ。べつに洗濯だけのために来たわけじゃないぞ。
そりゃ、嬉しそうに玄関に出てきたおまえの顔を見て、開口一番「洗濯びよりだな!」って言っちゃったけど。
「だいたい、あんたは仕事しすぎなんです」
「わあ、周防興産のマグロに言われちゃった」
「そのマグロっていうのやめてください。俺がベッドで手抜きするみたいな誤解が生じたら、沽券に関わる」
……おまえの沽券って、そこにあるのかよ。
ちなみにこの場合のマグロは『泳ぎ続けていないと死んでしまう』、つまりワーカホリックという意味合いである。
「まったく、俺ほどベッドで頑張る男はいないってのに」と、ぶつぶつ言いながら、兵頭は俺のパンツを丁寧にパンパンしてる。
こんな若頭を見たら、舎弟たちは涙ぐむのかなあ……。
でもわりと、幸せそうに干してるぞ。洗濯前にニオイをかごうとする癖はなんとかしてほしいが。
「来週あたりは、外には干せませんよ」
「なんで?」
「あの桜の花びらが飛んでくるんです」
そうなのか。
それもまた、風情がある。
「来るんだなあ」
俺は呟いた。
裏表の靴下を正しく返しながら、兵頭が「なにが」と聞く。
「春だよ。……春は、ちゃんと来るなあ」
暖かい風に前髪を乱されながら言うと、兵頭は少し黙ったあと「そうですね」と答える。
「これ干したら、食いに行きますか」
「回る寿司?」
「そう」
「おお、行こう行こう。で、帰りに桜見に行こうぜ。川沿いの」
俺は洗濯籠を覗きこむ。あと少しで干し終わりそうだ。
寿司かあ。なに食おうかなあ。
最初は光りモノ、みたいなツウな食べ方できないんだよなあ、俺。どうしても好物からいっちゃう。
中トロかなー、やっぱ。
赤身のいいのがあったら、それでもいいな。
ウニはなあ。好物なんだけど、すごく豪華な絵皿に乗ってくるから、勇気が必要なんだよな。しかし不思議だよな。ウニを最初に食べた人って、どうしてあれを食おうと思ったんだろう。あんなトゲトゲの中に入ってるもんが美味しいなんて、どうやって気がついたんだろう。つくづく不思議だ。
「なー、兵頭、ウニを最初に食べた人ってさあ」
「……先輩」
「なんであんなトゲトゲを……」
「先輩。これはなんです?」
「へ」
そんじょそこらのウニに負けないほどトゲトゲしい声を出し、兵頭が俺を睨んでいた。
紫色の小さなパンツを持って。
「なにって。パンツだろ」
「あんたいつから、こんなやらしいパンツはくようになったんだ」
「やらしいって……まあ、多少セクシー系か」
言っておくが、穴が空いてたり、レースがついていたりする、変なパンツではない。
ええと、こういうの、なんつーの?
Tバック? タンガ?
俺はあんまり詳しくないのだが、ようはズボンの上から下着のラインが出ないためのものだ。紫って言っても、そんな派手派手しいカラーじゃなくて、落ち着いたプラム色って感じ。
「こんなパンツ、俺は知りません」
兵頭が怖い顔で言う。
「いや、それはさ」
「俺はこんなパンツを脱がしたことはない」
「え、問題そこ?」
「すっとぼけないでください。大問題でしょうが。いいですか先輩、あんたは自分でこんなパンツを買うような男じゃない」
「そりゃ、まあ……」
「人からもらったんだとしたら、あんたにこんな卑猥なパンツを選んだ奴を、俺は半殺しにしなきゃなんねえ」
「それだけで半殺し?!」
「当然でしょうが。男が下着を贈るってのは、それを脱がすためなんですよ!」
兵頭が仁王像みたいな形相で言い切った。
「いやいやいやいや、待て。落ち着けって!」
パンツを握りしめたまま怒る兵頭を宥めながら、俺はとりあえず室内に引っ張り込む。ベランダで言い争っていたら、ご近所にまる聞こえだ。パンツパンツって……。
リビングに入り、はき出し窓をしっかり閉め、
「まずは落ち着け」
ともう一度言った。
兵頭は疑惑の眼差しで「ならちゃんと説明してください」と返す。
「するよ。根本から勘違いしてるぞ、おまえ。それは俺のパンツじゃない」
「じゃ、誰のなんです」
「七五三野だよ」
「…………」
兵頭がやっと黙った。
よかった、理解してくれたか――と安心した俺は、無言のままピクピクと動く、兵頭のこめかみを見つける。
え、なに。
どうしてますます怖い顔になってんの?
「……あの野郎、ぶっ殺してやる」
「は?」
「前々から気に食わねえ奴だったが、先輩のダチと思って我慢してきたんだ……くそう……こんなことになるなら、もっと早く東京湾に沈めておくべきだったぜ……」
「えっ、ちょっ」
ここまできてやっと、俺は兵頭の誤解に気がついた。
七五三野のパンツが俺の洗濯物に混ざっている……つまり、七五三野が俺の部屋でパンツを脱いだ……脱いで、なにやらけしからんことをした、と。
「おいっ、おまえ激しく誤解してるぞ!」
「あんたの仕置きはあとです。俺はこれからあの弁護士野郎をとっ捕まえて、東京湾だ」
「と、東京湾にそんなもの捨てちゃいけませんっ」
「じゃあ河口湖あたりまで遠征します」
「いやいや、どこでも捨てちゃだめ!」
兵頭が携帯電話を手にした。
舎弟たちに召集をかけるつもりなのだろう。俺はあわあわしながら、早口に言う。「し、七五三野はなにもしてない。あいつはゲイじゃないし!」
「ゲイじゃないくせに、パンツを脱ぐんですか」
「脱いだけど、いや、だから!」
俺は懸命に説明した。
先週、七五三野が事務所に顔を出した。珍しく、スーツ姿ではなかった。オフだったらしい。すらりとしたコットンパンツにジャケットという軽装で、それでも清潔感があるのが七五三野らしいところだ。
さゆりさんの好きなロールケーキを買ってきてくれて、みんなで食べた。
みんなってのは、俺と七五三野のとさゆりさんとキヨな。
で。途中、智紀がやってきた。奴が来たとたん、大型わんこがうれしさのあまり立ち上がった。
その拍子に、机の端にあったコーヒーが零れたんだ。
それが七五三野にかかってしまった。主に、股間のあたりに。
「いやー、焦ったぜ。そこそこ冷めてたからよかったけど、もう少しで七五三野のご子息に火傷を負わせるところだった」
「……焼け落ちればよかったのに」
「なんてこと言うんだよ、おまえ。で、七五三野は急遽、着替えたわけ。俺のパンツとチノパン貸したんだよ。ちょっと小さかったけど」
「……先輩のパンツ?」
「いや、買い置きな」
「なら許します」
「なんでおまえの許可がいるんだよ」
はあ、と俺はソファに座り込む。
なんとか誤解は解けたようだ。
「ふん。あの弁護士が、あんなパンツをはくとはね」
「七五三野はお洒落だし、完璧主義なんだよ。細身のズボンの時は下着のラインが気になるって」
「気取りやがって」
「おまえだって下着うるさいだろ。シルクがいいだとか」
「先輩が無頓着すぎるんですよ。前から言おうと思ってたんですが、ウエストのゴムがゆるゆるに伸びたやつは処分したらどうですかね」
「えー、まだはけるし。もったいないじゃん」
「……なるほど。脱がせやすい下着で、俺を誘っているわけですね。今日のはどうかな?」
「うわ、なにす……っ」
どすん、とソファに押しつけられたかと思うと、たちまち兵頭がのし掛かってくる。狭い座面で抗っても、乗られてしまえば分が悪い。
それはもう鮮やかな、イリュージョンかよという素早さで、ジーンズのボタンを外された。
ファスナーがジャッという音とともに下ろされ、スケベ男が中をひょいと覗きこみ――固まる。
「みみみみ、見るなっ」
「先輩……」
「言うな! コメントはいらん!」
「先輩……なんで、はいてないんですか」
真顔で聞かれて、俺は赤くなる。
「今はいてないってことは、ここに来る時きからはいてないわけですよね」
「そ、それは」
「ノーパンで、直接ジーンズ……ファスナーに毛が挟まったりしませんか」
「……一回挟まった。痛かった」
兵頭が一度俺から少し離れ、カリカリと頭をかいた。
なにか考えている。
「……わかりました。先輩の新しい趣味は理解しました。俺にはよくわかりませんが、ノーパンにはノーパンの気持ちよさがあるんでしょう」
「いや、べつに気持ちよくないって」
「隠さなくていいですよ。ただ、そうだな……やっぱり毛はなんとかしたほうがいい。どうしても挟みやすい」
「兵頭、おまえまた勘違いしてる」
「恥ずかしがらなくていいんです。ノーパンな自分に興奮するというのは、なんとなくわかる気がします」
「わかるのかよっ。っていうか、違うんだって!」
「俺は自分のノーパンには興奮しませんが、先輩のノーパンならたしかに……うん……」
ずいっ、とまた兵頭が顔を寄せてくる。
その目にやばい色を見つけ、俺はソファの上で反射的に体を引いた。
「いい」
「な、なにが」
「先輩のノーパン。興奮します」
しなくていい。
おまえを興奮させるためにノーパンなわけじゃない。
これはやむをえないノーパンなんだ。不可抗力のノーパンなんだ。
……という俺の主張は、途中で途絶えた。
スイッチオンしてしまった兵頭のキスに飲み込まれ、オオカミと化した奴にジーンズをひん剥かれ、あれやこれやののちに、ちょっと説明したくない体位になって、あげくのはて、まあ、その……ウン。
そしてますます説明したくないことに、俺のほうも途中からはノーパンの件なんかどうでもよくなっちまって……。
だって、久しぶりだったんだ。
兵頭に触れられて、あいつの匂いを直接かいだら……そんなのもう、だめに決まってる。
「……痛ぇ……」
ソファの上でブランケットにくるまり、兵頭に背中から抱えられたまま呟く。
「痛い? ちゃんと濡らしたつもりだったんですが、足りませんでしたか」
「そっちじゃない。股関節……」
「ああ」
兵頭が、いくらか申し訳なさそうな声を出した。
「あの角度は無理がありましたかね。でも先輩、深いの、好きでしょう」
「……ノーコメント」
「次から気をつけます。股関節に優しくて、でも一番奥まで届く体位を研究しておきます」
「……ノーコメント」
ぐったりしている俺の背後で、兵頭が小さく笑い、耳にキスしてきた。
このやろう、ご機嫌だな。狭いソファでの交歓はいろいろと無理があり、それゆえの新鮮味もあったりしてまずい。俺は身体の芯にまだ甘い痺れが残っていて、ひどく気怠かった。
「あのな兵頭」
「はい」
「ノーパンは、趣味じゃない」
「はい。実用ですか」
……最近、こいつのボケに磨きがかかっている気がするのは俺だけなんだろうか。
「そうじゃなくて。要するに、もうなかったんだ」
「なにが」
「だから、パンツが。洗濯済みの」
昨日は深夜まで、書類仕事に没頭していた。
細々したものを溜めまくって、さゆりさんに叱られてしまったのだ。概ねすませ、もう限界だとベッドに倒れ込んだのが二時半くらいだろうか。
朝が来て、のろのろ起きて、シャワーを浴びて……気がついた。
ない。
ないぞ。
まったくない。はけるパンツが一枚もない。
溜めまくっていたのは書類仕事だけではなく、洗濯物もだったのだ。
俺はとりわけ潔癖なほうではないが、使用済みのパンツをもう一度はくのは、どうにも抵抗があった。裏返して使うことも考えたが、やっぱりだめだ。
なんでだろう、自分がはいていたパンツなのに、一度体温がなくなってしまうと、もう他人みたいだ。他人ていうか、パンツだけど。
とにかく、アゲインパンツは受け入れられない。
まあ、いいかと思った。どうせ今日は洗濯デーで、兵頭のマンションに行く。途中のコンビニでパンツ買えばいいじゃないか。ほんのしばらく、直接ジーパンを我慢すればいいのだ。そう考えた。
ところが、である。
人間というのはすごい順応性を持っている。この順応性がホモサピエンスを進化させたんだと俺は思う。
俺もまた順応した。ノーパンに慣れてしまい、コンビニに寄るのをすっかり忘れてしまったのだ。
「……その結果のノーパンだ。趣味じゃない」
「なんだ。そんなばからしい理由なら、すぐ言えばいいじゃないですか」
「……なんか、一瞬恥ずかしいと思ったんだよ。そこまで洗濯溜めるなんて」
「先輩がだらしないは知ってますよ」
「……だよな」
「じゃ、ノーパンプレイは今日だけですか」
「そんなプレイしてない」
「剃毛プレイもセットで楽しめると思ったのに」
「はあ?」
俺の語尾が跳ね上がる。ホントに、この変態野郎ときたら……。
「ファスナーに挟まないように、きれいに剃る気まんまんだったんですよ。俺のやる気をどうしてくれるんですか」
「知らねえよそんなやる気!」
呆れて言うと、抱きしめる腕が強まった。
「剃ってみませんか先輩」
「剃るかっ。銭湯行けないだろうが」
「似合うと思います」
「そんなに剃りたきゃてめーのを剃れ! あーもう、くそ……おい、夕方んなってきたぞ……ひもじいぞ……」
窓から見える空が、翳りを帯びている。
風に揺れる洗濯物……そういえぱ、まだ何枚か干していないパンツがあったはずだ。回る寿司にも行きそびれた。
「寿司……」
俺は朦朧と呟いて、ソファから立ち上がろうとした。
途端に膝が崩れる。
「うぁ……」
「先輩。まだ無理ですよ」
再び兵頭に抱えられ、ソファの上だ。
今度は胸を併せる形で、俺が上に乗っている。重くないかなという懸念はあるが、なにしろ力が入らないので、ぐったりと兵頭に体重を預けるしかない。
「おとなしく休んでてください。あんた中だけでイったあと、しばらく腰に力入らないんだから」
「う、うるさい」
俺はデコを兵頭の胸にくっつけて、顔を見ないようにした。
そういう恥ずかしい真実は言っちゃいかんだろ。
「あれってどういう感じなんですか」
「……」
「すごい動きするんですよ、中が」
「……」
「普通にイク時と違う表情するし。蕩けてる顔って言うのは、たぶんああいう……ぶふっ……!」
しつこいので、鼻の穴に指を突っ込んでやった。
「先輩、ひでぇな」
「黙れ」
「せっかく、寿司をご馳走しようと思ってたのに」
「……」
「股関節を無理させたお詫びに、高いけど美味いとこから、出前を取ろうかと」
「…………」
俺はじわじわと顔を上げる。
にやつく兵頭と目が合った。
「……苦しゅうない。寿司を取れ」
そんなふうに言って見せると、眼鏡をかけたままセックスしたがるスケベが「はいはい」と笑い、携帯電話に手を伸ばす。
俺を見つめる瞳は、とても優しい色をしている。ふたりきりの時にだけ、兵頭が見せる目だ。
あーあ。くそ。
いい男だよ、実際。
ヤのつく仕事だけど。独占欲強すぎるけど。たまに変なプレイしたがるけど。
……根っこは優しくて、いい男だ。
次の週末はちゃんと休もう。
兵頭と桜を見に行くんだ。
若い頃は、桜なんか毎年咲くって思ってた。
でも最近は違う。俺はもう30代も後半戦で、70まで生きたとしても折り返しをすぎた。桜は毎年咲くけど、俺が見られる桜は限られているんだ。
何年か前、死んでしまいたいと思っていた時期があった。
その数年間の桜を俺はまったく覚えていない。俺の視界はやたらと狭く、寒さ暑さにすら鈍感で、世界に色はなかった。
ただ息を吸って、吐いて、時々ふとそれを止めてみたりして……かろうじて、生きていた。
あの頃の桜に悪いことをしたなと思う。
きっと綺麗に咲いていただろうに、ごめんな。
ちゃんと見てなくてごめんな。
俺の古い友達は……今はもういない親友は、桜が咲くたびにはしゃいでた。
大学の並木道、花吹雪の中で笑ってた。
思い出すと、泣けてくる。
でも今は、泣けることがいやじゃない。
桜を見て親友を思い出すのもいやじゃない。
悲しいけど、そんなにいやじゃないんだ。不思議だな。季節は巡って。時代は回って。桜は咲いて、散って、また咲くんだ。
俺はたくさん桜を見たい。長生きしたい。
今年の桜は二度とないって、誰かが言ってた。
兵頭と一緒に見られる桜はあと何回だろう。一緒に寿司が食えるのはあと何回だろう。
抱き合えるのは?
キスできるのは?
「先輩?」
甘く呼びかけられて、頬が火照る。
俺は顔を伏せて赤い目を隠し、少し嗄れた声で
「特上ウニでよろしく」
と返したのだった。
-END-
お読みいただきありがとうございました(^^)
私も久しぶりにこのふたりに会った気分です。
今何歳になったんだろう……(笑)でもきっと相変わらず仲良くやってるんじゃないでしょうか。
ご感想など、お気軽にコメントしてくださいませ。