岩本薫先生に聞こう(1)
今回は、なんと豪華ゲストをお招きしてのプロット談義です。
BL小説家の岩本薫先生にご協力をお願いいたしました。岩本先生、ありがとうございます! 都内某所で対談させていただき、私が自前のICレコーダーで録音し、せっせとテキスト化いたしました(笑)
BL小説を読まれる皆様ならば、もちろんご存じであろう岩本薫先生ですが、まずは簡単にプロフィールをご紹介。
岩本薫
小説家。1997年、ビブロスのボーイズラブ小説誌「小説b-Boy」主催の小説新人賞、第7回ビブロス小説新人大賞で期待賞を受賞しデビュー。代表作は「YEBISUセレブリティーズ」「発情」(リブレ出版)「ロッセリーニ家の息子」(KADOKAWA)「プリティ・ベイビィズ」(新書館)「Prince of Silva」(大洋図書)他、多数。
岩本先生は、美男子満載の華麗なBL小説を得意とされています。もちろん、落ち着きのあるしっとりとした作品も多く書かれていますが、私がとくに好きなのは「ザ・BL!!」という、エンタメ性の高い作品群です。キラキラしたキャラたちが、きちんと作り込まれたプロットの中で、乙女心をキュンとさせる男同士のラブを繰り広げてくれるのです。
日頃からお話の端々に、とてもプロフェッショナルな精神を感じていたので、これを機会に「どうやって物語を考えているの??」ということを、根掘り葉掘り(笑)お聞きいたしました。なんとなんと、『ロッセリーニ家の息子』シリーズのプロットまで公開してくださいますよ! もうこれは、BL小説を書きたい方、書いている方は必見です。対談は長くなったので、分割して順次記事にしていく予定です。第一回目は、プロット以前の、シリーズのコンセプトシートを見せていただきました。とても参考になるので、じっくりご覧下さい~!
※ちなみに『ロッセリーニ家の息子』シリーズは
『略奪者』『守護者』『捕獲者』『共犯者』『継承者(上・下)』
となっています。タイトルのかっこよさも見習いたいところです。
榎田 えー、本日は、岩本薫先生に『ロッセリーニ家の息子』シリーズのプロットをお持ちいただきました。
岩本 はい、ここにあるのはかなり初期段階のものですね。今回、ファイルの日付を見たら、2005年になっていました。ちょうど10年前です。ロッセリーニの場合、出版社から三冊組の単行本の依頼をいただきました。はじめから三冊書くことが決まっていたので、今までやってなかったこともあり、三兄弟ものはどうかなと思いました。三兄弟の恋愛を一冊ずつ書いていき、それぞれがリンクしていく形式です。
榎田 うんうん。
岩本 まずはシリーズ全体の構成を考えるわけですが、念頭に置いたのが単行本だということ。四六版なので。
榎田 ノベルスよりも大きなサイズですね。
岩本 そう、その分価格も高くなるので、重厚感とか、華やかさ、ドラマチックさなどを意識して書きたいなと。地に足がついた日常的な話ではなくて。
榎田 単行本高いからね(笑)読みごたえのあるものにしないと。
岩本 そうそう。イラストレーターさんの絵柄的にも、そういった非日常的なキラキラした世界感があってるのではないかと思いまして。
榎田 華やかな絵柄の方ですからね。
岩本 それでいろいろ考えて、舞台を日本国内ではなく、海外に持っていったほうがよりドラマチックになるんじゃないかなと思ったんです。でもまだこの段階では、どこの国にするかまでは決めてませんでした。三兄弟にしようということだけは決まっていたので、そこから見えてくるテーマみたいなものをランダムに書き出したものがこれです。三兄弟……一族ものにして、その一族の抱える枷とか秘密とか言い伝えとか……書いてありますね。
榎田 あのー。マフィアというモチーフはここで決まってたの?
岩本 この段階ではまだ、マフィアは決まってないね。それ以前の叩き台。ただ、由緒ある一族だっていうのはもう出てますね。由緒ある一族の物語で、長男編、次男編、三男編と三つの物語で一つのシリーズにする。
※画像だと読みにくいので、テキスト化しました↓
三兄弟一族モノ・キャラクター設定
★一族モノの「重み」、もしくは一族が抱える「枷」とか「秘密」とか「言い伝え」が三冊を通しての主軸になる。(本当に愛するひととは結ばれないなど。実際にパパはバツ3)。
★長男編は「愛憎」を絡める。
★次男編で「陰謀」を絡める(一族の財産を狙っての「陰謀」、もしくは企業の中の「陰謀」でも可。いずれにせよ、そういった事件性をお話のバックグラウンドに置く)
★兄弟間では、長兄と次男の確執がある。次男はどっちかというとパパ似の奔放&天才肌で、一族を背負う(どっちかっていうと真面目な)兄とは反りが合わない。
★長男は、父に対して、超えられない壁(コンプレックス)を感じている。
★三男に関しては、父・兄×2ともに溺愛しすぎて、それがトラブルの元になるとか。
★そもそも全員がホモだと、跡継ぎの問題が……。これは特に長男が悩みそう。
【長男編】(仕様:単行本ソフトカバー)
キーワード/年下攻め。敬語攻め。すれ違い。ジレジレ。華やかな業界もの。舞台は東京⇔ミラノ。
●長男(攻め)
☆生粋のイタリア人(父・イタリア人×母・イタリア人)ミラノ在住。東京にも住居あり。三男の母親が日本人だった関係で日本語も堪能。
☆29歳。黒髪・黒目。
☆現在、一族の持つ様々な事業の中でも、コンツェルンの現総帥であるパパの片腕として働く、若き実業家。
☆ルックス・頭脳・リーダーシップ・女性あしらいなど、すべてに秀でた男前。最終的に異母兄弟を束ね、一族の総帥という立場を担う自分の立場を意識している。長男気質。三男を溺愛(ブラコン)。
☆完璧男のただひとつのウィークポイント→惚れた相手にだけはヘタレ。
☆長年、ひとりの相手をひそかに思い続けているが、長兄としての立場や、感情の行き違いから、どうしても気持ちを素直に告げることができない。彼に対してだけは、どうしようもなく不器用。
☆流暢な敬語を使うが、それが受けには慇懃に写る。(子供の頃は兄弟のように過ごしたのに、と)
●クールビューティ(受け)
☆31〜32歳。日本人とイタリア人のハーフ(ほとんど日本人寄りの外見)。攻めとは幼い頃に知り合いだった経緯があり、数年ぶりに仕事がらみで再会。
☆ぱっと見、近寄りがたいような冷たいオーラを放つ美人。すらりと細身の長身。
☆芸術家肌。才気溢れる服飾デザイナー。トップクリエイターとして業界の注目を浴びている。ただ、経営手腕はなく、自分のブランドを潰してしまう。そんな折り、コンツェルンのチーフデザイナーとして迎え入れられるが。
☆プライドが高く、なかなか素直になれない。意地っ張り。女王様っぽいが、実は臆病な部分も。自分が同性しか愛せない性癖であることに、密かにコンプレックスを抱いている。
長男とクールビューティの根本的な誤解として、クールビューティは長男を「血の繋がった弟」だと思い込んでいる。クールビューティの母親(日本人)が、以前、お屋敷に住み込みで家庭教師をしていて、父親のいない子供(クールビューティ)を産んだ。で、彼は自分の父親を「パパ」なんじゃないかとずっと疑っている。(母は真実を告げずに他界)実際パパが、母親亡きあとも学費を面倒みてくれたりしたので、いよいよ信じ込んでしまう。幼なじみである、長兄に惹かれるが、これは禁断の愛だと思い、感情的に長兄を傷つけるようなやり方で逃げる。→十年の月日を経て、仕事絡みで再会。→お互いに、やっぱりどうしようもなく惹かれ合う。→しかし、長兄は自分が嫌われていると思い込んでいるし、クールビューティは「一線だけは越えてはいけない」と……すれ違うふたり。
【次男編】(仕様:単行本ソフトカバー)
キーワード/ワーキングもの。若干事件ものの要素もあり。舞台は東京。
●次男(攻め)
☆イタリア人とフランス人のハーフ(父・イタリア人×母・フランス人)パリ在住。三男の母親が日本人だった関係で日本語も堪能。
☆28歳。金髪・グリーンアイズ。
☆現在、一族の持つ様々な事業の中でも、アパレル部門を統括するヘッド。
☆軽くて押しが強く、明るいラテン系気質。気に入った相手なら、女でも男でも性別は厭わない快楽主義者。いい加減に見えるが、仕事に関しては案外骨太。意外や曲がったことが嫌いで、正義感が強いところもある。頭の回転が速い。
☆初恋は、兄の思い人であるクールビューティだが、兄の想いを知って断念。やはり三男には甘い。
☆新規事業展開に絡んで日本ブランチ視察のため来日。
●眼鏡(受け)
☆27歳。眼鏡着用のお堅いマネージャー。日本ブランチ所属。
☆コンツェルンの総帥であるパパから依頼を受け、日本にやってくる次男の来日中のお目付役を任じるが。
☆一本気で曲がったことが大嫌い。仕事ができる切れ者。真面目すぎて、やや周囲から浮いている。とても気が強い。
☆密かにパパのことが好き。(尊敬の念を抱いている)
☆この世で一番嫌いなタイプの次男に振り回され、激しい嫌悪と反感を抱くが……。次男はやはりクールビューティに惚れていて、遊び回ってはいたが、根本的に初恋の人が忘れられない。が、ついに、兄とクールビューティが出来上がってしまい、失恋の傷心を癒すことも兼ねて日本へ→次男編
(※最初の2ページを公開しています)
榎田 イタリアが舞台というのは、どこの段階で決まったんですか?
岩本 ええとね……(思い出している)うーんと……あ、これにもう書いてあるね。
榎田 決まってたんだね。
岩本 イタリア人であることは決まってたけど、マフィアっていうところまでは煮詰まってなかったんだね。華やかな業界モノとか書いてある……(笑)
榎田 つまり、マフィアだからイタリアにしたわけじゃなくて、イタリアだからマフィアになった、と。
岩本 うーん、どうだったかなあああ(覚えていないらしい)
榎田 イタリアならマフィアだけどイギリスなら貴族だしね?
岩本 そうだね。そうだったかもしれないね。……あ、そうだ。なんでイタリア人にしたかというと、ぶっちゃけ、イタリア男がかっこいいから。
榎田 あー、はい(笑)
岩本 三兄弟いるわけだけど、とりあえず斬り込み隊長の長男は黒髪に黒い瞳の伊達男にして、二番目、三番目は多少の変化球もアリかなと……。
榎田 一冊目は王道で?
岩本 そう。一冊目はがっちり王道で、シリーズの基盤をしっかり固めたいと。一冊目がある程度数字を取れないと、三冊組みとはいえ、後ろがつらくなっていくので。逆に一冊目で上手く軌道に乗れば、二冊目、三冊目はある程度自由に書ける。シリーズものの場合、一冊目は本当に大事です。
榎田 受は日本人男性っていうのは、最初から決まってた?
岩本 当時はまだそれほど外国が舞台だったり、外国人が主人公のお話は多くなかったので、読みやすさを考慮して片方は必ず日本人でというリクエストがあったから。
榎田 まあ BL 業界的なお約束ですよね。
岩本 基本的に受視点を求められるし。
榎田 あ、求められるんだ。
岩本 うん。……求められない?
榎田 んー、あんまり言われないかな。
岩本 私もケースバイケースだけど、この時は求められたんだよね(笑)視点が受になった場合、それはもう、日本人になるよね。
榎田 読者さんにとって、一番読みやすい形なんですよね。
岩本 とくに海外が舞台の場合、そもそもその場所に馴染みがない。そのうえ出てくるキャラが全員外国人だと、読者さんがとっても物語に入り込みにくい。なので物語の語り部(進行役)に日本人を据えることで、その取っつきにくさを緩和したいという狙いがあった。
榎田 攻が日本人っていうのはあんまりないよね。だいたい受が日本人。
岩本 そうだね。その方が王道 BL 的に据わりがいいんだろうね。……それで、こんなふうにまとめた最初のコンセプトシートを編集さんに見せてます。
榎田 三兄弟の中に、受がひとりいるじゃないですか。それもこの段階で決まってるの?
岩本 んー……(調べている)。なってますね。この段階で受になっている。
榎田 (見ながら)岩本さんの最初のコンセプトシートが、 A4用紙で4枚あります。わりと詳しいキャラクター設定が書かれてます。
岩本 今見るといろいろ違ってますが、叩き台なので。それで、この段階ですでに三兄弟全員がゲイだと、跡継の問題があるっていうのが……。
榎田 うはははは(笑)
岩本 (笑)。そこが、このシリーズを通しての非常に大きな……。
榎田 ツッコミどころだよね(笑)
岩本 そうそうそう(笑)だからこの段階からすでに、その問題がシリーズ全体に関わってくるという点も書いてある。あとはたとえば、三男に関しては、父と長男が溺愛していて、それがトラブルの元になる……なんていうことも書いてありますね。ほぼ骨子はできてるかんじ。
榎田 家で言うと、もう棟上げが終わってるね。餅が撒ける。
岩本 でもキャラはお話を作りながらどんどん変わっていくんだけどね。特に相手はかなり本番とは違ってますね。……で、こっちが編集さんの意見なども取り入れた二回目のコンセプトシート。
榎田 もう一回作ってるんだ?
岩本 作り直してますね。ここにきて、マフィアが出てきている。
こちらもテキスト化しました↓
三兄弟一族モノ・キャラクター設定(改訂版)
★長い歴史を誇るイタリアンマフィアの一族。祖先はシチリアの民を貧しさから解放した伝説のドン。現在は、裏稼業は陰にひそめ、表立っては各企業分野に会社を持ちコンツェルンを形成。実業家一族として上流階級に君臨している。だが一方で血族の繋がりは強く、ヨーロッパを中心に世界全土に分家が点在している。
★全編を通して、一族の財産(ドンの立場)を狙っての「陰謀」(もしくは企業の中の「陰謀」でも可)いずれにせよ、そういった事件性をお話のバックグラウンドに置く。
★兄弟間では、長兄と次男の確執がある。(一族の裏の部分を否定したがる次男と、何より血族を重んじる長男)
★長男は、伝説の『ドン』であった父に対して、超えられない壁を感じている。
★三男に関しては、父・兄×2ともに溺愛しすぎて、それがトラブルの元になる。
【長男編】(仕様:単行本ソフトカバー)
キーワード/強引年下攻。攻が受を浚う。略奪・監禁。(花嫁もの?)舞台は東京⇔シチリア
●長男(攻)
☆生粋のイタリア人(父・イタリア人×母・イタリア人)母親はイタリア貴族の血を引く社交界の華。(仮面夫婦だったため、長男が生まれてほどなく離婚)
☆フィレンツェに屋敷を構える。伊・仏・英語を操るが、三男の母親(元家庭教師)が日本人だった関係で日本語も堪能。
☆29歳。ウェーブのかかった長めの黒髪・漆黒の瞳。誰もが息を呑む優美さと獣のようなフェロモンを兼ね備えた超美形。
☆いずれパパの跡を継ぎ、一族の総領(ドン)となることが決まっている。幼少時からそのための帝王学を身につけてきた、若き『帝王』。誇り高く、美しき暴君。傲慢で強引。裏切りに関しては容赦をしない、冷酷な部分もある。
☆初恋は三男の母親。(その母親似の三男を溺愛)彼女を失った衝撃を、まだ少し引きずっている。
☆そのせいか日本びいきで、特に日本のヤクザが好き(マニア)。任侠映画などはすべて網羅。(妙に古い言葉を知っている。『一宿一飯の恩義』とか)。憧れである伝説の博徒と同じ入れ墨を、自身も肩に入れている。
☆マフィアと貴族の両方の血を併せ持つ、生まれながらの支配者。最終的に異母兄弟を束ね、血族のトップに立つ自分の立場を意識している。常に立場逆転を狙うクセモノの分家との攻防など、気が休まることはない。
●ヤクザの跡継ぎ(受)
☆老舗ヤクザの跡継ぎだったが、自身は組を継ぐつもりはなく、(稼業を嫌って)実家とは縁を切り、現在は一介のサラリーマンとして平凡に暮らしている。
☆一般社会に馴染むために普段は抑えているが、博徒であった先祖由来の激しい本性を隠している。頑固。強情で負けず嫌い。
☆30歳。すっきりと顔立ちの整った男前の美人。
☆母親が幼い頃に家を出て行ってしまったことがヤクザ嫌いのトラウマに。来日に際して、以前から憧れていた伝説の博徒の子孫と「義兄弟の杯」を交わすことを楽しみにしていた攻。ところが肝心の跡継ぎは跡目を放棄して、他の幹部に組を譲り、平凡なサラリーマンになっていた。なぜ『任侠の誇り』を捨てるのか納得がいかない攻は受を探し出し、「義兄弟の杯」を迫るが、きつい言葉で拒絶される。見た目と違ってなかなか屈しない受にカッとなり、つい無体を働いた上にフィレンツェの屋敷へ連れ去ってしまうが……。
【次男編】(仕様:単行本ソフトカバー)
キーワード/ワーキングもの。プレイボーイ攻×クールビューティ眼鏡受。若干事件もの(企業絡みの陰謀)の要素もあり。舞台は東京。
●次男(攻)
☆イタリア人とフランス人のハーフ(父・イタリア人×母・フランス人)母親はフランスを代表する超有名な女優。(次男が生まれてすぐに離婚。母親としての記憶はほとんどない)
☆パリ在住。三男の母親が日本人だった関係で日本語も堪能。
☆28歳。プラチナブロンド・クールなアイスブルーの瞳。エグゼクティブ系で華やかな美貌。
☆初恋は、やはり三男の母親。(その母親似の三男を溺愛)兄弟揃って日本びいきなのは、彼女の影響が大きい。
☆表向きの事業の顔を担う。一族の持つ様々な業態の中でも、アパレル部門を統括するヘッド。
☆軽くて押しが強く、明るいラテン系気質。気に入った相手なら、女でも男でも性別は厭わない快楽主義者。いい加減に見えるが、仕事に関しては案外骨太。意外や曲がったことが嫌いで、正義感が強いところもある。頭の回転が速い。
☆新規事業展開に絡んで日本ブランチ視察のため来日。
☆個人的には、自分がマフィアの一員であることを恥じている。血族の結束(血の誓い)など時代遅れでナンセンスだと。できればそっちからは足を洗い、堅気としてまっとうな事業を展開していきたいと思っているが、マフィアの血筋に誇りを持つ長男とぶつかる。
●マネージャー(眼鏡受)
☆27歳。クールビューティ。眼鏡着用のお堅いマネージャー。日本ブランチ所属。
☆コンツェルンの総帥であるパパから依頼を受け、日本にやってくる次男の来日中のお目付役を任せられるが。
☆デキるキレ者。正義感が強く、曲がったことが大嫌い。生真面目すぎて、やや周囲から浮いている。とても気が強い。神経質。毒舌家。
☆密かにパパのことが好き。(尊敬の念を抱いている)
☆この世で一番嫌いなタイプの次男に振り回され、なおさらベッドの相手まで強要され、当初は激しい嫌悪と反感を抱くが……。
榎田 意外だね。マフィアありきの話なのかと思ってた。
岩本 違うんだよね。なんか……『一族感』が出したかったんだと思うの。一族の結束の強さみたいな。イギリスだったら、ダウントン・アビーとかの貴族の一族ものがあるわけだけど……。
榎田 結局、一族に歴史があるのって、上流階級か、マフィアみたいな裏社会になっちゃう……。
岩本 そうそう。で、イタリアでもシチリアは、ギリシア・ローマ帝国・アラブなどの支配を受けた影響が残る独特な文化があって、そういった背景も書きたくてシチリアにしました。……このへんで、相当固まってるね。
榎田 シリーズ全体の肝になるポイントをまず固めて、そのあと、それぞれ長男編、次男編、三男編……と、詳細な設定が決まっていくんですね。
岩本 うん。キャラはほぼここで固まってるね。
榎田 名前とかはまだ決まってない?
岩本 まだ決まってないね。三兄弟のキャラを考えてる時に、全員が攻だと面白くないので、ひとりは受にしたかった。長男は王道の俺様攻で、次男は洗練された孔雀攻。この二人のキャラはやはり対比をはっきりさせたくて……
榎田 すいません。ちょっと孔雀攻の説明入れましょう(笑)。わからない人いるかもしれないので。
岩本 孔雀攻っていうのは……なんていうか立ち居振る舞いがエレガントで見た目も麗しく……。
榎田 ゴージャスで家柄もよくて?
岩本 「俺」でも「僕」でもない自称「私」系(笑)。
榎田 そういう攻様に使われる用語なんですが……コレは岩本用語ですか?(笑)
岩本 すみません、勝手に(笑)。で、その二人はほぼ決まっていたんですが、三男は……これはさっきも言ったように、受を日本人にしなければならないという縛りがあるわけで。でも三兄弟はイタリア人なのにどうするの?……となった時、じゃあ母親を変えようと。三兄弟は同父異母兄弟で、母親がみんな違う国籍を持っているという設定にしようと。
榎田 うんうん。
岩本 シチリア貴族のお母さん、フランス人女優のお母さん、日本人のお母さん……こういった要素が入ってくると、兄弟だけど、かなりバラバラの容姿や性格でも違和感がない。異母兄弟という設定によって、それぞれの母親のストーリーもバックボーンに匂わせることができる。ただの仲良し兄弟じゃない奥行きが出てくるんじゃないかというのもあって、結局、三男を日本人とイタリア人のハーフで受キャラにしました。この日本人のお母さんが、もう亡くなってる過去の人なんだけれど、シリーズを通してのキーパーソンとなって、三兄弟それぞれのエピソードに大きく関わってくるという構成になってます。
(つづく)
うーん、なんとよく練られたキャラ設定なのでしょう……。まだまだ興味深いお話は続きます。が、またテープ起こしからしなきゃいけないので(笑)、続きはちょっとお待ちくださいね。
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また、岩本先生のnoteはこちらです。