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榎田ユウリ/尤利 作家業20周年ご挨拶

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※作品数の修正を5/30に行っています。 

今、この記事を書くために2000年に刊行された「夏の塩」と 、つい先月、つまり2021年4月に発売になった「武士とジェントルマン」を並べて写真に撮り、改めて時の流れをしみじみと感じています。
 クリスタル文庫版の「夏の塩」は、もうレーベル自体がありませんので古本でしか入手できず、私の手元の本もだいぶ古ぼけていますね……。約20年前、初めての自分の本が書店さんに並んでいるところを、私は信じられない気持ちで眺めていました。店頭で自分の本を手に取り、なぜかそわそわとその場にいられない気持ちになって、一冊買って帰った記憶があります。

 月日が経ち、おかげさまで私は現在も小説家であり、この間に150冊をか刊行することができ……と数日前まで思っていたのですが、リストアップ漏れがありまして、どうやら162冊になるようです。近著「武士とジェントルマン」では最も尊敬する漫画家の一人である萩尾望都先生に装画をお願いでき、小躍りした次第です。きれいな四六判の本にしていただきました。

 作者としては拙著すべてをそれぞれご紹介したいところですが、そんなことをしてると、それが本1冊分になってしまいそうです。下記のページにリストアップしておりますのでよろしければご参照ください。

 榎田ユウリ作品 https://note.com/edayuuri/n/nede7a6dbec1e
 榎田尤利作品(BL)https://note.com/edayuuri/n/n644db8f1dd04
 
 さて、自分がなぜ20年間小説を書き続けられていたのか、ちょっと考えてみたのですが、 もはや物語を作るということは私の生活の一部であり、 おそらく、そうしていない方が難しいのかもしれません。もちろん締め切り明けは疲れますし、たまにし「休みたぁぁぁい」みたいなことも口走りますが、その「休みたい」はおそらく数日程度のことであり、長くは休んでいられないタイプな気もしています。実のところ、そんなに長く休んだことがないのでわからないんですよね……たぶん、会社員だった頃の方が、休日が多かったような気が……。でも睡眠時間は小説家になってからの方が増えました! ちゃんと寝ないと仕事にならないことは、自分が一番わかっております。

 多くの方がご存知かと思うのですが私は BL(ボーイズラブ)小説と呼ばれるジャンルでデビューしました。 BL小説というのは、作家も読者もほとんど女性で成り立っている業界でして、現在は男性読者、男性作家もいらっしゃると思うのですが、少なくとも20年前は稀だったと思います。また、BL作品にはとても熱心な読者さんが多く、お手紙やメールをたくさんいただき、それがとても励みになっていました。皆様の感想を拝読できるのもありますし、自分の作品が本当に届いているのだなと、実感できて嬉しかったのです。BLの世界は、作家と読者の距離が近いという特色があったように思います。
 榎田ユウリ名義でBL以外の作品を書くようになったとき、読者さんの反響がものすごく少ないので不安になったほどです(笑)
 そうそう、しばしば「もうBL書かないんですか」と聞かれますが、そんなことはないですよ~。書く心づもりはあります。お待たせしてしまってすみません。

  現在も Twitter などで感想やメッセージをいただけると「あ、読んでくださってる……」と喜び、安堵もします。20年150冊本を出していても、そのへんはほとんど変わらないのです。普段はたった一人で妄想の海を泳ぎ、それを言語化するという孤独な作業をしているので、その結果として生まれた作品が皆様に楽しんでいただけているかは、いつもいつも気になってしまうのです。作家にとって、読者さんはなかなか目にすることができないレアキャラみたいなものですからね……。過日のオンライントークイベントでは、そんなレアキャラ様と画面越しにたくさんお会いできて、楽しかったです!!

 私はもちろん物語を書くのが好きなのですが、それを読んでいただくのも同じぐらい好きでして、自分だけのために文章を書こうとはあまり思いません。日記に挑戦したことは何度かありますが、ほとんど続きませんでした。だって誰も読んでくれないし……いや、日記だから読まれたら困るけど……。手紙のほうがずっと楽しく書けたのは、読者がひとりはいたからじゃないかなあ……。

 ときどき小説家を目指している若い読者さんから「どうやったら小説家になれますか」というようなご質問をいただくのですが、その答えはおそらく「読者がついてくれたら、なれます」なのかなと。もちろん質問者さんの主旨は、投稿をするとか、ネットで発表するとか、もっと実際的なことをお聞きになってるんだと思うのですが、仮にそういった方法で本を一冊出せたとしても、それが続かなければ小説家にはなれないわけでして……だとしたら、やはり読者あっての小説家なんだよなあ、と思うわけです。

 つまるところ、私が20年間小説家でいられた理由は、今、この記事を読んでくださっている、あなたなのだと思います。

 私の作品を一冊でも読んでくださったあなた、もっとたくさん読んでくださっているあなた、なんと20年前から読んでくださっているあなた。友人に、家族に、勧めてくださったあなた。ひとりでこっそり読んでくださるあなた。
 あなたがたが私を小説家にしてくれました。
 心から、ありがとうございます。
 この感謝をもっと具体的な言葉にしたいのですが、フィクションでも妄想でもないとなると、私には非常に難しいのです。ゆえに、今後の作品にこめていきたいと思っております。

 どうぞこれからも、よろしくお願いいたします!


2021年5月下旬
榎田尤利/榎田ユウリ